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きらきらした子供の目、冬を粘る力

[コラム]オ・スヨン、キム・ジンチャン学習誌教師夫婦の話

オ・ドヨプ(口述記録作家)/ 2008年12月11日15時31分

地下鉄の駅に救世軍の鍋が立った。12月だ。風が鋭く、襟をあわせる。今日は 学習誌先生の話を聞きに上岩洞に行く。

行く間、ずっと公文学習教師だったイ・ジョンヨン氏が思い出された。学習誌 会員を増やせという会社の強要に苦しみ、1500万ウォンの借金を残して死んだ イ・ジョンヨン氏。2004年の事だった。イ・ジョンヨン氏は国語、英語,数学 など7科目を担当し、204回の授業をして1か月250万ウォンを稼いだ。イ・ジョ ンヨン氏が亡くなった後、引継ぎを受けた教師の授業は47回に過ぎなかったと いう。150を越える授業はどこに行ったのだろうか? 134回の授業はイ・ジョン ヨン氏が直接金を出した、幽霊会員であることが明らかになった。学習誌会社 の無理な実績強要でイ・ジョンヨン氏は毎月自分の金を200万ウォン近く会社に 捧げていた。

▲終始公文学習教師だったイ・ジョンヨン氏が思い出された。/チャムセサン資料写真

初め、現金サービスを毎月100万ウォンずつ受け取りながら、実績を維持した。 現金サービスが苦しくなると、後でサラ金から借り、結局死に追い込んだ。愚 鈍になぜ借金までして、幽霊会員を維持したのか? 「会員が減れば面談と督促 電話で圧迫し、その上人身攻撃をしながら侮蔑感を与えたり、家庭の事情まで あげて実績を強要したのでどうにもできなかった現実だ」と、当時のイ・ジョ ンヨン氏の同僚は打ち明けた。イ・ジョンヨン氏の死は世の中に大きな波紋を まき起こした。そして4年が過ぎた。2008年、学習誌の先生はどうだろうか? ど れほど変わったのだろうか?

つねに微笑みを絶やさないキム・ジンチャン氏と上岩洞ハンソル教育の前で会っ た。まず学習誌教師の一日を聞いた。

キム・ジンチャン氏は2006年3月にハンソル教育の京西プラトン支店に入社した。 京西プラトン支店は小学生に読書討論と論述指導の授業をする。一週間に3日は 午前9時30分までに出勤し、月別実績、評価ブリーフィングをしたり『伝授教育』 をする。伝授教育とは、学生を指導する内容を教師どうしが集まって、模擬授 業をするものだ。

昼食を食べると自分たちが担当する地域に授業に行く。普通、1時から授業を始 める。夕食の時間もなく家を回り、授業をすると夕方9時を越えるのは常だ。普 通は40分ずつ授業して、移動の時間は20分ほどだ。時間が出ると父兄と直接会っ たり電話で相談をする。家に帰るのは10時30分。遅い夕食を食べて、またコン ピュータにむかい会社のシステムに接続してその日の授業内容を作成し、報告 する。翌日の授業の準備をして寝床につけば、午前1時だ。事務室に出勤する日 は12時間以上働く。これで稼ぐ金は1か月で150万ウォン前後。200万ウォンを稼 ぐ同僚もいる。それだけ授業をしなければならないので、そんな同僚は夜11時 まで授業をする。

▲学習誌労働者キム・ジンチャン氏[出処:ハンソル教育支部]

一日の日課を見れば、どこかの会社員と変らない。だがキム・ジンチャン氏は 労働者ではない。遅刻をすれば始末書を書かなければならず、病気で欠勤をす れば病院診断書提出を強要されるが、労働者ではないという。年次月次休暇や 生理休暇もない。国民年金や医療保険の恩恵も受けられない。もちろん授業に 行く道で怪我をしても労災保険を受け取ることはできない。絶えず会社から実 績を強要され、業務を報告し、指揮統制されて働いても、労働者になれない。 残業手当てや休日手当てはまったく夢にも見られない。キム・ジンチャン氏が 会社から受け取る金は『月給』ではなく授業をする回数で支払われる『手数料』 でしかない。

学習誌教師として働く人は全国に15万人に達する。ほとんどが正規職ではない。 特に学習誌市場の中心となるテギョ、公文、ウンジン、才能、ハンソルで正規 職教師は見つけるのは難しいという。3兆ウォンにのぼる学習誌市場は『黄金の 卵を産むガチョウ』と呼ばれる。教師が足をすりへらして歩き回りながら、金 を稼ぐが、教師に戻る恩恵は教材に混じって売れる授業費の手数料がすべてだ。 だが今年もやはり韓国の100大富豪には大型学習誌の会長たちがぞろぞろと入っ ている。財産の金額が7千億だ8千億だという声は聞きたくもない。

公文教育のイ・ジョンヨン氏を死に追いやった不当営業の慣行はもう消えたの だろうか? 全国学習誌産業労組才能支部のオ・スヨン氏に聞いた。不幸にもオ・ スヨン氏は首を横に振る。

学習誌で顧客が中断する『休会』や実績のために作られた『幽霊会員』が現場 は、まだ変っていないとオ・スヨン氏は力説する。

「労働組合の組合員がいる地域などでは改善したが、組合員がいなければ休会 や幽霊会員を持つ教師はがまだ多いです。会社で実績を統制して強要するので 教師は仕方なく自分の金で埋めて会員を維持するしかありません。」

とても物価が上昇したのに教師が受け取る手数料は上がったかと聞くと、オ・ スヨン氏はフフッと笑う。

「数年前も今も全く同じです。今でも平均収入は1か月に150万ウォンほどです。 韓国の富豪100位中には公文やウンジン、教員会長がいても、学習誌教師の実際 の収入は、物価と較べればますます下がっています。学習誌教師は長く働かず 離職する理由が分かりますか? 仕事はつらく収入は少なく...... 本当に頑 張るのは難しいです。」

「週5日勤務、在宅勤務、出退勤自由、高所得保障」の学習誌の教師募集広告の 内容だ。学習誌教師1年を終え、広告の4つの内容のうちどれか一つでもみたさ れることを望むどころか『重い病気と借金、ストレス』が残っていなければ幸 運と思わなければならない。

▲いつも会社から実績を強要され、業務を報告し、指揮統制されて働いても労働者になれない。/チャムセサン資料写真

学習誌教師たちは訪問授業をするので、氷で滑ったり階段で怪我をすることが 多い。よく話をするので声帯結節ができたりもする。車両で移動して交通事故 に遭うこともある。もちろん授業時間に追われ、時間通りに食事をすることが できないので胃腸病は授業教材のようににいらだって暮さなければならない。

今年の7月から学習誌教師にも労災保険が適用され、恩恵が受けるようになった のではないかと尋ねた。オ・スヨン氏の喉がひどく震えた。

「労災保険? 実施されましたよ。でも任意脱退が可能です。費用も会社と教師 が半々で負担しなければなりません。会社は障害保険に加入する方が良い、労 災保険は教師も費用を負担するから収入が減るではないか、そう言って自主的 に脱退を強要します。ある地域ではまったく強制的に一括で脱退をさせました。 今加入している人は10%になるかどうかです。甘言の政策だけではなく学習誌 教師を労働者と認めることが先です。労働者と認められない以上、学習誌教師 の権利は得られません。」

事務室に出勤をするから労働者だと学習誌教師が言えば、会社は出勤を強制し た内規や指針の書類をなくす。もちろん指針がなくても学習誌教師は出勤しな ければならない。会社が出す販促物を受け取って働くから労働者だと言えば、 会社は販促物を教師に僅かな100ウォンで売るふりをして、学習誌教師は労働者 ではないと言う。こんな形で会社は法の枠から抜け出そうと必死にあがくが、 教師の当然の権利からは目をそらそうとする。学習誌教師が労働者になるには 遠い。

キム・ジンチャン氏は、学習誌教師に会社が正当に手数料を支払わないという 話を教師懇談会の時にしたという理由で会社に『やられ』、全国学習誌産業労 働組合に加入して代議員に立候補をすると、会社から2007年2月26日に解約通知 を受けた。再契約まで1週間も残っていなかった。キム・ジンチャン氏は自分が 解雇された理由は「不当な手数料問題を提起し、他の同僚から呼応を受けたこ とと、労働組合活動をしたこと以外にはない」と言う。不当に解雇されたキム・ ジンチャン氏は学習誌教師の権利を取り戻すため、406日間の孤独だが正当な 戦いを始めた。

2008年4月、『6か月間、別途の業務を付与し、資質を確認した後、再契約を締 結する』と会社と合意して、キム・ジンチャン氏はハンソル教育の子会社であ るエデュベイスに6か月間勤めた。そして約束の6か月が経ち、原職復帰を要求 したが、ハンソル教育はキム・ジンチャン氏がまた学習誌教師になることを拒 否した。キム・ジンチャン氏は教育事業をする、それも良心的な企業だと宣伝 するハンソル教育のビョン・ジェヨン代表の真っ赤な嘘に怒りを抑えられない。

今36か月の息子を見ると、またハンソル教育本社前で1人デモをするのは胸が裂 けるように痛くていやだ。だがキム・ジンチャン氏は当分何も考えないように した。学習誌教師として堂々と立ちあがるのが子供に恥じない父になることだ と考えたためだ。

キム・ジンチャン氏の夫人は才能教育のオ・スヨン氏だ。組合の事務局長をし ているオ・スヨン氏は、会社が団体協約を破棄して組合を認めないので今は常 勤費を支払われない。オ・スヨン氏も学習誌教師の人間らしい生のために前だ けを見て走る。腹がへるのは後まわしにしたまま。

オ・スヨン、キム・ジンチャン夫婦がこの冬寒く過ごす部屋が思い浮ぶ。チェ ウンのきらきらする目も描かれる。だが家族が世の中でする美しい実践を考え ると胸が暖かくなる。インタビューを終えた帰り道、救世軍の鐘の音が通常で なく聞こえる。オ・スヨン、キム・ジンチャン夫婦は学習誌教師の明るい明日 のために希望の鐘を鳴らせている。誰か彼らの部屋に温かい愛を入れてほしい。 この寒い冬を頑張れるように。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳)に従います。


Created byStaff. Created on 2008-12-14 16:05:41 / Last modified on 2008-12-14 16:05:43 Copyright: Default

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