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バングラデシュ労働活動家殺人事件

[闘争する世界の労働者](4)衣類資本とバングラデシュ政府の野蛮な労働弾圧

労働者運動研究所 2012.04.19 10:43

▲アミヌル・イスラム

4月5日、バングラデシュの警察は、バングラデシュの首都ダッカの郊外で、 殺害された死体を発見した。死体には深刻な拷問の痕跡が見られた。警察は 身元を確認できず、写真を撮っただけで土に埋めた。二日後の土曜に故人の 遺族が新聞に掲載された写真を見て身元を確認した。殺人の被害者は労働者 支援団体のバングラデシュ労働者連帯センター(BCWS)の活動家、アミヌル・ イスラム(Aminul Islam)だった。

弾圧下の暮らし

イスラムは一昨年から政府、警察と資本の弾圧の下に置かれていた。2010年6月 に労働部の要請で出頭した時、共に来た労働者3人とバングラデシュ国家情報院 に拉致され拷問された。同年8月にはBCWS代表者のカルポナ・アクター (Kalpona Akhter)とバブル・アクター(Babul Akhter)と共にいわれのない暴力 デモの扇動などで起訴され、拘禁された。その後、イスラムは査察と監視を受 け続けた。殺害される前の日には、BCSWの事務室前で監視している警察の車が 目撃され、事務室を早く閉じていた。イスラムの殺害は、BCWSへの弾圧の一環 だと推定されている。

バングラデシュ労働者連帯センター(BCWS)紹介

イスラムが所属するBCWSは、不正・腐敗で有名なバングラデシュの労働運動で 一番尊重されている労働運動組織の一つだ。2001年に衣類労働者3人が設立した BCWSは、ダッカ本部を含み、5つの事務室を運営しており、31人の常勤活動家が いる。主な活動は、衣類労働者を対象とする労働権教育、活動家訓練プログラ ムと、労働権の違反に対する是正を支援することだ。戦闘的とも急進的とも言 えない、NGOの日常的な活動だ。しかしバングラデシュの衣類産業では、非常に 大胆で危険なことだ。

衣類資本との戦い

BCWSの2年間の経験でわかるように、衣類資本に挑戦したことで、さらに危険に なった。2010年の初め、BCWSはバングラデシュの巨大衣類業者であるEnvoy Group(売上額1.2億ドル)とNassa Group(売上額2.1億ドル)と正面から対立する ことになった。ほとんどのバングラデシュの衣類業者と同じように、Envoyと Nassaは世界の有名衣類ブランドのためにOEM(注文者商標による製品生産)方式 で衣類を生産し、納品する。Envoyの購買者はウォルマート、JC Penny、Sears、 Kohl'sだ。Nassaは主にウォルマートのために生産しているが、Tesco JC Penny、 H&Mなどのブランドも購買者だ。

EnvoyとNassaの労働者は、13時間から14時間の強制的な長時間労働、暴言と暴 力行為、残業手当て不払い、必要な応急治療の不提供、火災安全装置の不在と 劣悪な労働環境など、非常に劣悪な労働条件に苦しんでいた。労働者が不満を 表明したり改善を要求すれば、使用者側はすぐに刑事告発で威嚇した。

EnvoyとNassaの労働者は、使用者側の報復を恐れていたが、沈黙して搾取され るよりも、正当な労働権を要求するほうが良いと判断した。それでBCWSに教育 と労組建設の支援を要請した。BCWSが要請に応じ、二つの工場で何回の教育を 行い、Envoyでの労働条件の調査を実施した。Envoyの労働者はBCSWが主催した 3・8国際女性デー大会に参加し、彼らの経験を語った。2010年6月に衣類労働者 数万人が参加した最低賃金引き上げ闘争には、EnvoyとNassaの労働者も参加し、 同僚と共に最低賃金の大幅引き上げを要求した。

NassaとEnvoy資本はこうした労働者の正当な活動にアレルギー反応を示した。 Nassaの使用者は事件を捏造し、アミヌル・イスラムとバブル・アクターを告発 した。Nassaの管理者は二人の活動家が工場に入り、管理者に暴行して90万タカ (バングラデシュ貨幣単位)相当の資産を破壊し、コンピュータを盗んだと嘘を ついた。7月にはEnvoyは似たような偽りの容疑でイスラムを告発した。

二つの会社はまた、BCWSへの悪宣伝と労働者への圧迫を続けた。Nassaはすべて の労働者が聞ける工場放送システムを通じ、「まず、BCWSの訓練プログラムに 参加した労働者は、国家の敵(enemies of the nation)であり、解雇される。 次に、このような労働者はこの地域で暮らせないようになる。最後に、BCWSは 骨身にしみた教訓を味わうだろう」と発表した。

非営利団体の資格取り消しと続く弾圧

バングラデシュ政府当局はBCWSを弾圧するところにNassaとEnvoy資本と協力し た。6月にイスラムに対する拉致と拷問をしたし、8月には活動家3人に対する起 訴および拘禁だけでなくBCWS組織自体が活動をできないようにさまざまな措置 を取った。2010年6月に政府はBCWSに対してバングラデシュで活動しようとする なら必須の非営利団体資格を取り消した。何の判決もなく、バングラデシュの 非営利団体管理局(NGO Affairs Bureau)は、非営利資格を取り消す根拠として BCWSが衣類労働者の暴動を扇動したなど「さまざまな誤った行為にかかわって いることを確信し、この事実が証明された」と提示した。また主に言論により、 労働者の正当なデモをBCWSのような『外部勢力』や『テロ勢力』に操作された と悪宣伝を続けた。

EnvoyとNassaの告発は根拠不足で棄却されたが、BCWSの活動家は政府による 刑事告発でまだ裁判を受けており、有罪宣告を受ければ死刑の可能性もある。 こうした状況で2012年4月4日、アミヌル・イスラムが殺害された。

バングラデシュ政府の反労働的な態度

非営利資格の取り消し、告訴告発、連行、拘禁、顧問、殺人まで... 弾圧の深刻 さをどう説明できるだろうか?

この事態は、バングラデシュ政府機関の不正腐敗と反労働的態度が重要な原因だ。 国家情報院が労働運動の活動家を脅迫して恣意的に連行した事例は1、2件でない。 一般的に彼らはスパイを雇い、活動家と一般市民も監視している。

いわゆる社会秩序の維持を担う準軍事的な即時機動隊(Rapid Action Battalion、RAB)もある。国際人権団体の『ヒューマンライツウォッチ(Human Rights Watch)』によれば、RABが2004年にできた後に、『拘禁殺害(custody killing)』の割合が急増した。RABは『十字砲火殺害』(crossfire killing)、 つまり連行者を殺した後、RABと犯罪集団の間の銃撃戦にまきこまれて死んだと 理由を言い始めた。今、RABばかりか一般警察も十字砲火殺害をよく使っている。

また、2010年にできた特殊労務警察部隊(industrial police)がある。労務警察 は、衣類工場の密集地域を監視して、労働争議を防止する業務を担当している。 さまざまな政府機関のうち、はっきりとどの組織がイスラムの殺人に直接の 責任があるのかは、まだ把握されていないが、すべてBCWSをはじめ多くの 労働運動団体と活動家を弾圧する役割を果たしている。

衣類産業の構造的搾取

しかし、BCWSへの弾圧と、イスラムの殺害は、単に政府機関の野蛮と反労働的 態度ばかりとは言えない。政府機関の後ろには強力な衣類産業とバングラデシュ 衣類産業の製品を輸入する超国籍ブランドが隠れているからだ。こうした衣類 資本は、バングラデシュの低賃金で巨大な利益をあげるために、衣類労働者の 組織化と闘争に強い威嚇を感じている。

バングラデシュの衣類産業は、中国に次ぐ世界2位の衣類輸出産業だ。昨年、 OEM衣類輸出額は180億ドルに達し、バングラデシュの全輸出額の80%を占める。 バングラデシュの運輸産業は衣類産業に関して年7000万ドルの収益を稼ぐ。 衣類工場が密集するチッタゴン地域の港湾の全業務の80%は衣類輸出に関する ものだ。

約340万の労働者が4千以上の衣類工場に雇われており、ほとんど輸出加工地域 (EPZ)で働いている。EPZで労働者の労働三権は厳格に制限されるが、投資した 資本は税金恩恵、資本財輸入での免税、外国人所得税の免除、地域で生産する 製品の輸出に対する免税など、多様な恩恵を受ける。

バングラデシュ経済の核心である衣類産業で働く労働者の賃金は、世界の衣類 労働者の中で一番低い。最低賃金を適用されるこれらの労働者の賃金は月3000 タカ、つまり36ドルだ。カンボジアの衣類労働者の賃金(66ドル)の半分を少し 越える水準だ。ベトナム(90ドル)、インド(130ドル)、中国(166ドル)の衣類 労働者の賃金と較べれば、話にならないほど低い。

低賃金に加え、バングラデシュの衣類産業は劣悪な労働安全条件で有名だ。 不十分な労働安全規制、勤労監督と労働安全教育の不備で危険な労働環境は 一般的だ。2010年の上半期だけでも衣類労働者の356人が労災で死亡した。 大部分の労災は、火災、感電、爆発など、老朽施設による事故で発生する。 管理者の暴行で死亡したり怪我をする労働者も少なくない。

低賃金、投資家への恩恵と、緩い労働基準などの理由で、バングラデシュの衣類 産業は、海外進出企業にとっては一次的な目的地だ。韓国だけでも100余りの会社が 投資をしている。代表的な韓国の衣類業者であるヨンウォン貿易(ノースフェイス 生産)の売上は4億ドルを超え、バングラデシュの衣類産業に投資する最大の企業だ。

低単価によりウォルマート、トミーヒルフィガー、H&Mなどの有名な超国籍 ブランドも、バングラデシュの衣類産業に魅力を感じている。これらのブランド が、納品業者に費用の引き下げの要求を続けるので、衣類企業等は施設の改善、 賃上げなど、労働者の要求を強く拒否する。正当な権利を要求する労働活動家に 対する反感も深まる。そのために、衣類業者とブランドもイスラム殺害のような 深刻な弾圧に責任があると言える。

こうした状況で、衣類労働者の賃金は地を這っている。2010年の最低賃金は 2006年と同じ1662.5タカだった。2006年より前は、12年間930タカから抜け出す ことができなかった。

ダッカ大学栄養研究所(Institute of Food and Nutrition)の研究によれば一日 10時間働く衣類労働者は、一日に3400カロリーを取らなければならないという。 2010年には、3400カロリーの食糧を買うためには2351タカが必要だった。すな わち、1666.5タカの最低賃金では家族を扶養しなくても、飢餓賃金水準でしか なかった。

2010年末に月3000タカに上がった最低賃金も、物価上昇を考慮すれば、最低の 生計も保障できない水準だ。この数年間の食糧価格上昇を考慮し、バングラデ シュ政府は2008年に農業の最低賃金を月4500タカに決めた。公企業の最低賃金は 月6000タカだ。

▲BCWS会員の最低賃金集会

最低賃金闘争

みじめな賃金と劣悪な労働条件は、衣類労働者の怒りと闘争を誘発する。事業 場単位の闘争だけでなく、衣類労働者全般の最低賃金引き上げ闘争がたびたび 発生する。

最低賃金の基準は5年ごとに労使政最低賃金委員会により決定される。2010年の 初めに最賃委が予定通りに議論に入ったが、使用者団体のバングラデシュ衣類 製造輸出業者連合(BGMEA)が参加を拒否した。これが労働者の糾弾とデモを触発 した。BGMEAは結局、4月になって委員会に参加したが、わずか200タカの値上げ を提示した。そのため衣類労働者数万人が路上に出て、5000タカの最低賃金を 要求した。衣類労組も5000タカを支持して全面ストライキで威嚇した。

7月29日に最賃委は、11日1日から施行される最低賃金を3000タカと発表した。 ほとんどの衣類労組はこれを受け入れたが、衣類労働者は拒否し、また路上に 出て6日間連続デモを繰り広げた。労働者が警察と衝突し、デモ労働者40余人が 負傷した。8月にも数千人の労働者が最低賃金引き上げと即時施行、未払い賃金 支給、9時間労働などを要求し、デモ行進をして高速道路封鎖闘争を繰り広げた。

11月には新しい最低賃金が施行された後で、また大規模デモが発生した。この 集会は、韓国企業であるヨンウォン貿易のチッタゴン工場で始まった。新しい 最低賃金基準が適用され、非熟練工の賃上げ幅よりも長く会社にいた熟練工の 値上げ幅が低く、非現実的な賃金で働いていた熟練工の不満が強まった。また、 それまで賃金とは別にインフレ手当てとして支給された金を最低賃金を合わせ るために支給しないことになったが、これも労働者の不満を高めた。12月11日 のデモ現場では、バングラデシュ政府は実弾まで使ってデモを鎮圧する過程で、 少なくとも3人が死亡し、250人以上が負傷した。その余波で30000人の労働者と 活動家が起訴されるという事件が発生した。

屈することのない労働者の闘争

バングラデシュの衣類労働者が正当な賃金と人間らしい労働条件を要求して、 デモをしていた時、政府と資本の態度は全く同じだ。BCWSのような労働者支援 団体は、外部勢力という烙印を押し、デモを扇動して暴力を主導したと言う。 ところがデモのたびに、よく知られている通り、労働者の闘争は外部勢力から 操作されたどころか、労働者の正当な不満と怒りに触発されたのだ。

イスラムの死の正確な原因はまだ把握されていない。しかし多くの労働運動と 人権団体は、労働者活動を怖がらせ、労働者の闘争を防ぐ行為だと見ている。 しかし彼らはバングラデシュの労働運動は揺らがないと言う。ニューヨーク・ タイムズとのインタビューで、バブル・アクターはイスラムの死の責任者は、 逮捕されて裁判を受けなければ、労働運動が闘争すると伝えた。

バングラデシュ労働者は重要な指導者1人を失った。しかし彼らの闘争は終わっ ていない。正当な賃金と労働基本権を勝ち取るために戦い続けるだろう。韓国 資本が彼らの搾取と弾圧にかかわっているだけに、韓国労働運動の連帯が重要だ。

  • 国際労働団体のInternational Labor Rights Forumがバングラデシュ政府へ の抗議書簡を組織している。バングラデシュ政府にイスラム殺人を糾弾し、 調査と真相究明を要求する書簡を送るには、次のサイトに接続すれば良い。

http://action.laborrights.org/p/dia/action/public/?action_KEY=4160

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2012-04-20 08:19:33 / Last modified on 2012-04-20 08:19:43 Copyright: Default

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