
●渡部通信(1/22) :
明けない夜はない(288)<若者を再び戦場に送るな!(38)天下は
一人の天下にあらず(その2)>
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私は、「明けない夜はない」(278、2024年11月19日)で、次のようなことを書いた。
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11月5日、アメリカ大統領選でトランプが勝利しました。
彼は「アメリカ第一」を掲げ、再び世界に君臨するアメリカを作ろうとしています。
そのため移民を排斥し、関税を一律10%にし、
特に敵対する中国に対しては60%にしようとしています。
この保護主義的経済政策が世界の経済をさらに悪化させることは目に見えています。
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そして、結びの方で次のように述べた。
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世界中で軍拡が行われ、頻繁に合同軍事演習が行われています。
いつ第三次大戦が起きるかわからないような状態です。・・・
そうした中で私は、古代中国で書かれた『六韜(りくとう)』
という本に書いてある以下の言葉を思い出しました。
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天下は一人の天下にあらず、
すなわち天下は天下の天下なり。
天下の利を同じくする者は、すなわち天下を得、
天下の利をほしいままにする者は、すなわち天下を失なう。
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これからの世界がどのような紆余曲折をたどろうとも、
結局はこういうことに帰するだろうと思います。
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2025年1月20日、そのトランプが二度目の大統領(第47代)に就任した。
就任演説で彼は、「アメリカ第一主義」を再び打ち出し、
「最強の軍隊を再び構築する」と宣言しつつも、
海外の戦争には巻き込まれないことが重要だとも述べた。
記者団に対しては、
近隣のカナダとメキシコに25%の関税を、2月1日からかけると述べ、
他国に対しても保護主義的な政策を取ることを明らかにした。
また、「アメリカ第一主義」を具体化する大量の「大統領令」に署名した。
その中には、<メキシコとの国境に国家非常事態を宣言>し移民を排斥すること、
<世界保健機構(WHO)からの脱退やパリ協定からの離脱>、
さらには、<メキシコ湾をアメリカ湾に改称>などというものまであった。
彼はすでに、グリーンランド、カナダ、パナマなどを支配下に置くことも表明している。
これらを総合して考えると、彼の「アメリカ第一主義」は、
まさに現代の「帝国主義的政策」であると言わざるを得ない。
バイデン前大統領は、1月15日の最後の演説で次のようなことを述べた。
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・「この国の大きな懸念について警告したい。
ごく少数の超富裕層に権力が集中している危険な状態だ。
彼らの権力の濫用を野放しにすれば、危険な結末が待っている」
・「権力と富が集中すれば、不信と分断を引き起こす。
人々は民主主義に幻滅し、公平に扱われていないと感じるだろう」
・「誤った情報の雪崩は権力の濫用を可能にする。報道の自由は崩壊しつつある」
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これはまさに、トランプによる「新たな帝国主義」に対する警告である。
同時にそれはデマゴギーを特徴とする「ファシズム」と結び付くことも述べている。
では、この第二次トランプ政権は、日本に対してどのような政策をとってくるか。
私は、トランプは日本を「植民地扱い」にしてくるだろうと考える。
日本の主権はさらに脅かされ、様々な要求が突き付けられてくるだろう。
もはや対等な同盟などではなく、
日本はアメリカ帝国主義を守るための植民地国として、
その最前線基地・最前線部隊にならされるだろう。
また経済的にも搾取される立場になるだろう。
経済界はたえずアメリカの眼の色を考えて行動するようになるだろう。
昨年の12月16日には、トランプ次期大統領は、ソフトバンクグループ(SBG)が
米国に1000億ドル(約15兆円)を投資し、
少なくとも10万人の雇用を生み出す方針だと明らかにした。
他にも日本企業が同じようなことをすれば、
日本での投資はなくなり、日本の雇用は減ることになるだろう。
こうして、トランプの「アメリカ第一」の「帝国主義」は、
全世界を意のままにしようとするだろう。
しかし、おそらくそうはならないだろう。なぜなら、
「天下は一人の天下にあらず、天下は天下の天下なり」だからである。
また、日本の慈円(1155〜1225)は『愚管抄』のなかで、
それまでの中国や日本の歴史を顧み、
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このようにして、世の道理というものが移り変わっていくことを
明らかにしようとするならば、
すべての存在はただ道理という二文字によってささえられていて、
そのほかには何もないことがわかってくるであろう。
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と述べている。
トランプがいくら全世界を意のままにしようとしても、
「天下」はそれを許さないだろう。また「道理」が無ければそれはいずれ滅ぶだろう。
そしてそのことは、「天下(全世界の人々)」と「時」がそれを証明するだろう。
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●渡部通信(1/26) : 明けない夜はない(289)<若者を再び戦場に送るな!(39)「楽しい日本を目指す」?>
1月24日、通常国会が召集され、石破首相の「施政方針演説」がなされた。
その冒頭、「国づくりの基本軸」として、
彼は今後の生産年齢人口が20年で2割以上が減少することが見込まれるとして、
「これからは一人一人が主導する『楽しい日本』を
目指していきたいと思います」とのべた。
しかし、少子化対策については演説を通してほとんど触れられなかった。
ということは人口減少はやむを得ないので、
それに見合った「楽しい日本」を作るということだろう。
しかし、生産力の最大の力になるのは生産活動でありそれを支えるのは人口である。
人口は物(ぶつ)の生産と比例して増減するといっても過言ではない。
都道府県別の人口を考えてみると、いまから145年前の1880年(明治13年)には、
1位石川県(183万人)、2位新潟県(154万人)、3位愛媛県(143万人)、
東京は(95万人)で17位だった。(第一回日本帝国統計年鑑1882年)
石川は江戸時代加賀100万石だった、また新潟も当時米の生産が集中しているところだっ
た。
したがって、人口を増やすためには日本国内での生産活動を発展させることが大事である
。
しかし現実は、産業の空洞化が進み、その結果石破首相も述べているように、
「日本のGDPは、1994年には世界の18%を占めていましたが、
直近の2023年では4%となっています。」、である。
これでは、生産活動を基本とした「楽しい日本」にはならないだろう。
そして、この演説では、「投資立国」とか、資産形成のためと称して
・「NISAやiDeCoの充実など資産運用立国の取り組みを強化します」、
・「投資立国の取り組みを強化します」
などと述べている。
要するに「不労所得」で儲ける国にしようとしているのである。
「不労所得」とは生産活動で得られた「剰余価値」で、
それが、株や利子、地代、債券などに転化したものである。
つまり、生産活動が無ければ成り立たないものである。
また「剰余価値」は「賃金」と反比例する。
「賃金」を低く抑えれば「剰余価値」は多くなる、ということだ。
石破首相は、「賃上げこそが成長戦略の要」などといっているが、
「賃上げ」をいうのは、他でもなく物が売れなくなり、
市場(彼らの言葉で言えば有効需要)が狭隘化し
大企業などが困るからだ。
決して労働者のためではない。
「賃上げ」をすれば当然「剰余価値」は減るので、
株や利子、地代、債券などの価値は下がることになる。
したがって、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」というのは
論理矛盾で、そうした現実にぶつかり破綻するだろう。
また、「株はバクチ」ともいわれる。
毎日、株価などを気にして生活する人々の多い国は、
果して「楽しい国」だろうか。
また、最近の円安の影響もあって増加している観光業について、
「その効果的な広報等によって地方創生につながる『観光産業』の
活性化を進めます」とも述べているが、その国が観光に力をいれるようになれば、
その国はあまり発展していかないことは、ギリシャやローマ、
さらにはイタリアやフランスなどを見ても明らかである。
また、現在世界各地で「観光公害」が発生し、人々の生活が脅かされている。
これが「楽しい国」だろうか。
更に現在、「旧統一教会問題」や「裏金問題」「企業・団体献金問題」、
さらには「少子化」や「大地震」・「原発事故」などが解決されていないのに、
それらへの言及がほとんどなく、「楽しい国」などと言われても、
多くの人々は、「首相は何をいっているんだ」と思うだろう。
次に、前回(昨年11月29日)の所信表明演説では、
<安全保障政策>が「政権運営の基本方針」のすぐ後にあったが、
今回は国内問題の後になった。
これは「アメリカ第一」のトランプ政権誕生の影響だろう。
しかし、基本的には内容は前回とほとんど同じで、
・「日米同盟を更なる高みに引き上げる、同志国との連帯を更に拡大・深化する、・・」
・「日米豪印、日米韓比を含め、地域における安全保障の重層的なネットワークを
構築し、自由で開かれたインド太平洋を強化する上では、
日米のリーダーシップは不可欠です。
その際、我が国は同盟国として責任を共有し、
応分の役割を果たさなければなりません」
などとのべている。
これは、明らかにトランプ政権に対してのべている言葉でもあると思う。
しかし「アメリカ第一」のトランプは、日本を植民地扱いにし、
彼らの都合で、どうにでもするだろう。
トランプは「中国に招待を受けた。行くだろう」(1月20日)とももべている。
また、この石破首相の演説は、
韓国で日米韓同盟の推進役である尹大統領と
その支持勢力に対する強い支持をアピールするものでもあるだろう。
いずれにしても、現在世界は、一層の動乱状態に陥っている。
トランプはメキシコ湾を一方的にアメリカ湾と改めた。
イーロン・マスクは、1月25日、ドイツの選挙集会中に
ビデオ会議で極右政党AfDの支援を表明している。
石破首相は、最後の「憲法改正等」というところで、
「国会による発議の実現に向け、
今後、・・憲法審査会において建設的な議論を行い、
国民的な議論を積極的に深めていただくことを期待します」とのべた。
そして「結語」で、
「党派を超えた合意形成を図るため、臨時国会に続き、与党、野党ともに、
責任ある立場で熟議し、国民の納得と共感を得られるよう努めることが必要です」
とのべた。
したがって、この改憲については、
野党の「国民民主党」や「維新の会」なども積極的なので、
明らかに、それらを取り入れて、
「熟議」の形をとり進めていきたいということだろう。
戦後80年、日本社会は行き詰まり、
少子化が進み身動きが取れなくなっている。
そうした中で、首相は「楽しい国」などと訳の分からないことを言っている。
そうして、戦争の惨禍を越えて作られた「平和憲法」を投げすて、
新たな悲惨な戦争に突き進もうとしている。
私たちは「草の根」から、勤労人民と連帯し、
「反戦・平和」の原則を堅持し、
運動を発展させなければならないだろう。
「戦争をさせない杉並「1000人委員会」が、
1月21日に荻窪駅北口で街宣をしたところ、
女性の方が、先週(1月14日)チラシをもらって読み感動したのでといって、
4000円のカンパをしてくれた。
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* 第21回「2・9総決起集会」のお知らせ*
スローガン:*国家の教育支配を許さない *
* 戦争と改憲に抗し平和実現に向け何をなすべきか *
日時:2025年2月9日(日)13:30開会
場所:文京区民センター3A
講師:*大内裕和さん*(武蔵大学教授)
演題:*「教育の新自由主義改革の40年と現在」*
発言:裁判闘争原告、教育現場などから
資料代:500円
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千葉高教組『日の丸・君が代』対策委員会」のホームページ
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「ひのきみ全国ネット」のウェブサイト
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