尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領による「12・3戒厳内乱」(ハンギョレ新聞)をめぐる韓国情勢は予断を許しませんが、「戒厳内乱」を阻止する大きな要素となったのが軍(兵士)の「不服従」でした(写真は議会へ突入した軍隊とそれを阻止した韓国市民)。
これをめぐって、注目される論稿がハンギョレ新聞(4日付日本語デジタル版)に掲載されました。「不当な命令を拒否する権利」を法律に明記すべきだという主張です。寄稿したのは弁護士で社会学者のイム・ジェソン氏です。
「今回のクーデターが失敗した重要な原因の一つは、軍人の躊躇と不服従だった。この不服従がいかに重要なのか、軍隊が怪物になることを防ぐ防波堤なのかを誰もが実感した。「(不服従でも)処罰を受けない」ではなく「(不当な命令を)拒否する権利がある」という立法を行う必要がある」
イム氏によれば、「軍人の基本権を保障する基本法」として2015年に制定された「軍人服務基本法」は、第25条で「上官の職務上の命令に服従しなければならない」と規定しています。イム氏はこれを「上官の正当かつ職務上の範囲に属する命令にのみ従う」に改正すべきだと提唱しています。「正当な命令」とは、「国際人道法や戦争法などの国際法に違反しない命令」としています。
翻って、日本はどうでしょうか。
自衛隊法は第52条〜65条までが「服務」規定でが、すべて「義務」であり、隊員の権利に関する規定はありません。
たとえば、第56条では「隊員は…職務上の危険若しくは責任を回避し、又は上官の許可を受けないで職務を離れてはならない」とし、第57条では「隊員は…上官の職務上の命令に忠実に従わなければならない」と絶対服従を規定しています。
その一方、第64条で「隊員は、勤務条件等に関し使用者たる国の利益を代表する者と交渉するための組合その他の団体を結成し、又はこれに加入してはならない。隊員は、同盟罷業、怠業その他の争議行為をしてはならない」として国家公務員でありながら労働基本権を奪われています。
自衛隊は正真正銘の軍隊であり、憲法9条に反する違法な存在です。直ちに廃止(災害対策組織に改組)すべきです。
それがすぐにできない場合は、少なくとも隊員の基本的権利を保障すべきです。その際、イム氏が主張するように、国際法に反する「不当な命令を拒否する権利」を明記することは重要です。
クーデターにおいて「軍隊が怪物になる」のは、昨年日本で公開された韓国映画「ソウルの春」(1979年12月12日のクーデターを描いた。首謀者は光州事件と同じ全斗煥)でもリアルに描かれていました。
さらに、軍隊が「怪物になる」のはクーデターだけではありません。国家権力が市民の反政府行動を弾圧する時(治安出動)も軍隊は「怪物」になります。
「自衛隊が怪物になる」ことはけっして杞憂ではありません。それをどう防ぐか。今回の韓国の事態から学ぶべき教訓の1つではないでしょうか。