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ドキュメンタリー映画『非常戒厳令前夜』:韓国の市民とジャーナリストたちの勇気ある行動

長井 暁
 韓国のドキュメンタリー映画『非常戒厳令前夜』を観た。映画の作り(構成・編集)には不満な点がいっぱいあるが、国家権力による言論弾圧と、それに抗うジャーナリストたちの闘いを記録した貴重な作品だった。この映画を観て、2024年12月3日にユン・ソンニョル大統領が無謀とも思える「非常戒厳令」を宣言するにいったのか、その背景と理由がようやく理解できたように思う。

 韓国の「ニュース打破」は、イ・ミョンパク政権のメディア介入によって公共放送を不当解雇されたり、辞職したりしたジャーナリストらが立ち上げた調査報道専門の独立メディアである。ユン・ソンニョルが検察総長候補者となった2019年から彼の不正を追及してきた。その結果、ユン・ソンニョルが大統領となると、政権の格好の攻撃対象となった。

 ソウル中央地検は、「ニュース打破」が2022年の大統領選挙でユン・ソンニョル候補を不利にするフェイクニュースを流したとして、「大統領選挙介入世論戦操作特別調査チーム」を編成し、2023年9月14日に「ニュース打破」の本部と二人の記者の自宅への家宅捜索を行なった。「ニュース打破」は家宅捜索の一部始終を映像に記録していく。検察という国家権力によるメディアへの露骨な弾圧と、それに抵抗するジャーナリストたちの不屈の闘いの映像は本当に凄まじい。

 ユン大統領を特に追い詰めたのは、キム・ゴンヒ夫人の「株価操作疑惑」であったことは、日本のメディアはほとんど報道しなかったと思う。ユン大統領は事態を打開するために、ついに「非常戒厳令」を宣言する。しかし、立ち上がった市民たちに後押しされた国会議員によって「非常戒厳令」は取り消され、やがてユン大統領は弾劾・解任・逮捕されることになる。

 韓国の市民とジャーナリストたちの勇気ある行動には本当に舌を巻く。やはり闘いとった民主主義は強靭だと実感する。日本でも鹿児島県警によるネットメディアへの家宅捜索が行われており、権力による言論弾圧は決して他人事ではない。日本のメディア関係者も韓国のジャーナリストを見習って、勇気を持って権力に対峙してほしい!

『非常戒厳令前夜』サイト(ポレポレ東中野ほか全国順次公開)


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