パレスチナでの虐殺に加担する「サイバーテック東京2025」
〜市民団体が後援の撤回など求め、政府と交渉〜
竪場勝司

サイバーセキュリティ関連の大規模イベント「サイバーテック東京2025」が9月4日、東京都内のホテルを会場に開かれる。登壇者の3分の1以上がイスラエルからの登壇者で、海外での暗殺作戦などを指揮した元モサド長官をはじめ、元軍人、元諜報機関幹部、関連企業幹部などが多く含まれている。イスラエルのサイバーセキュリティ企業は、パレスチナでの虐殺、民族浄化を支える基幹産業でもあり、日本の市民団体が9月1日、イベントを後援する日本政府の経産省と内閣官房の担当者と、後援の撤回などを求める交渉を衆議院第二議員会館で行なった。市民団体が事前に出していた質問に対して、政府の担当者は文書で回答をせず、口頭で「答える立場にない」などの回答を何度も繰り返した。
政府側は文書回答せず、「答える立場にない」繰り返す
「サイバーテック」は元々イスラエルで毎年開催されていたもので、2017年に初めて東京での開催が始まり、コロナ禍による中止をはさんで、今回が6年ぶりの東京での開催となった。
政府との交渉は、「武器取引反対ネットワーク(NAJAT)」、「ジェノサイドに抗する防衛大学校卒業生の会」、「BDS Japan Bulletin」の3団体が呼びかけて実施した。約40人が参加し、司会進行はNAJAT代表の杉原浩司さん(写真左)が務めた。
市民団体は事前に10項目にわたる質問書を経産省と内閣官房に送り、文書による回答を求めていた。政府側からの文書回答はなく、交渉会場で政府側が配布したのはイベントのプログラムを印刷した資料だった。「なぜ文書による回答ではないのか」と杉原さんが問いただしたのに対し、経産省の担当者は「本行事はサイバーセキュリティに関連した技術的課題に焦点を当てた、世界中の当局や企業の間で最新の動向や、共通的課題に対するグッドプラクティスを勉強し合うためのイベント、すなわちカンファレンスと展示会だ。お配りした文書で、回答が完結すると考えている」と述べた。
また経産省の担当者は「本行事は、みなさんが言うような、ガザ地区のおけるイスラエルの軍事的行為に関係するとは思っていない」、「イスラエルの軍事的行為に関するに(日本)政府の見解について、私たちはお答えする立場にない」などとも発言した。これに対し杉原さんは「あなた方が後援を出して登壇をさせ、お墨付きを与えている。『立場にない』ではなく、あなた方は当事者だ。あなたの説明は、文書回答をしない理由にはなっていない」と厳しく指摘した。
イベントはイスラエルによる虐殺とは「無関係」と強弁
ここから交渉は、各質問項目に政府側が口頭で回答し、回答内容をめぐる議論になった。「1年以内の占領終結をイスラエルに求め、各国政府にそのための行動を求めた24年9月18日の国連総会決議には日本政府も賛成票を投じている。この決議について、内容を把握し、サイバーセキュリティ政策に反映させる必要を認めているのか?」の質問に対して、経産省の担当者は「国連総会決議に関する政府の対応・見解については、私どもとして答える立場にない」と回答。杉原さんがさらに「日本政府がこの決議に賛成したということを持って、経産省がこの1年近くで何か具体的措置を講じたはあるのか」と問いただし、担当者は「決議の内容を反映させるような政策はなかった」と答えた。杉原さんは「反映させる政策はなく、やっているのはサイバーテックに後援を出したこと。私たちからみると、全く逆行することをやっている」と批判した。
後援を決定した理由について経産省の担当者は「このイベントに後援名義を発出することは我が国産業界におけるサイバーセキュリティ対策の向上・促進につながると考えた。後援名義を発出することが、イスラエルの軍事的行為に与するものだとは考えていない。配布した資料にあるように各国の当局が登壇することが、その証左だ」と発言した。
この後も、質問項目ごとのやり取りがあったが、経産省と内閣官房の担当者は「答える立場にない」の回答を頻発。「イベントは最先端のサイバーセキュリティ技術を学ぶ勉強会」とし、イスラエルによる虐殺行為とは「関係ない」との主張を繰り返した。
交渉の最後に、市民団体側はイベントに対する後援撤回を強く求め、杉原さんは「そうしないと、日本政府はイスラエルのジェノサイドの共犯だということになる。フランスやイギリスでさえ、国際的非難を浴びて、武器見本市のイスラエル企業の出展を、一部であれ制限している。日本政府は何をやっているのか。幕張の見本市でも堂々と人を殺しているドローンの模型を展示させて、後援して。今度はサイバーセキュリティ。同じように虐殺に由来するような技術をPRさせて後援を出して、登壇させて。どこまで日本政府は堕ちるのか」と批判の声を強めた。
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Last modified on 2025-09-03 13:23:27
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