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「尊厳を取り戻すために闘います」〜スリーエスの非正規労働者が提訴

松原明

動画(8分50秒)

 「尊厳を取り戻したい」。不当解雇され提訴した非正規労働者のAさんが、何度も口にしたのがこの言葉だった。8月20日午後1時、Aさんはスリーエスコーポレーションを相手に解雇撤回を求めて、東京地裁に提訴した。当該・弁護団の「提訴入場行進」では「スリーエスの非正規労働者 不当解雇を許さない!」の大きな文字が掲げられていた。提訴後には、当該・弁護団は厚労省で会見を開いて事件の概要を説明した。

 Aさんが所属するのは「日本労働評議会スリーエス分会」(9人)である。これはスリーエスコーポレーション(建設業・全国80人)で働く非正規労働者がつくった組合である。かれらは内装仕上の技術をもつベテラン労働者だが、フルタイムなのに雇用形態を「アルバイト」とされ、不安定な立場に置かれてきた。この非正規差別に耐えかねて組合を立ち上げたのは2016年。以来、正社員化など待遇改善を求めてたたかってきた。その結果、全員が「無期転換」を勝ち取っている。

 しかし、会社はものいう組合が気に入らず、ことあるごとに組合に嫌がらせをしてきた。そんななか今回の事件が起きた。会社は昨年10月に突然宇都宮営業所(当時3人勤務)を閉鎖し、勤務していた労働者に対して東京支社へ異動させると言い出した。組合は団体交渉で「不合理な閉鎖理由」など追及してきたが、会社は事情説明もなく一方的に閉鎖を強行して、異動拒否を理由にAさん(41歳)を5月末づけで解雇した。

 厚労省会見で主任の指宿昭一弁護士はこう語った。「非正規の解雇事件というと“雇い止め”のケースが多いが、スリーエスの場合は“無期転換”を勝ち取っており、正社員と同じ立場だ。だから普通解雇の形になった。今回のケースは、合理的根拠のない一方的事業所閉鎖であり、問題が多すぎる。十分闘える。これは全国の非正規労働者の共通する不満や怒りを代表する闘いでもある」と語った。とくに「Aさんは組合の中心的人物であり、本件解雇は組合つぶしを狙った不当労働行為である。その点からも解雇は無効である」と強調した。

 解雇されたAさん(写真左)は「フローリング塗装業」で12年働いている。三世帯家族の大黒柱だ。Aさんが提訴の思いを淡々と決意を込めて語った。

「解雇は収入だけでなく尊厳を奪います。いまも悔しくて眠れない夜があります。それでも私は泣き寝入りはしません。沈黙は賛同になってしまうと思うからです。ここで声を上げることが、私が正しいと思うことを裏切らない唯一の道だと思っています。私はこの解雇を不当解雇として争います。家族を守り胸を張って働き続けたい。それはどの労働者にも共通するささやかで切実な願いです。私の言葉が同じように悩むだれかの小さな灯火になれば、それ以上の喜びはありません。裁判所にはこのような不当解雇を認めない明確な判断を示していただきたい。私はあきらめません。尊厳を取り戻すためたたかいます」と。

<関連記事>

●「不当解雇に悔しさがいっぱい」スリーエス非正規労働者がストライキで立ち上がる(2025.5.29)
http://www.labornetjp.org/news/2025/0529hokoku
●声を上げなければ変わらない!スリーエス非正規労働者が「正社員化求め」ストライキ(2022.9.30)
http://www.labornetjp.org/news/2022/0930hokoku
●日本労働評議会サイト
https://www.rouhyo.org/


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