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韓国オプティカルハイテック闘争に終わらない光州民主化闘争を見る

安田幸弘(7月24日、FBより)

 焼け崩れた社屋。炎天下に一人の労組員が高空籠城を続ける正面玄関の屋根が見える亀尾の韓国オプティカルハイテック工場の旧休憩所。

 ここに一人の女性がシンセサイザーとアンプ、そして茶器のセットを持ち込んで一日中、社屋を眺めている。

 光州で生まれ、中学生の時に5.18を経験したという彼女は、その後、インドに渡り、平和を求める人々のコミュニティで暮らしていたという。今、彼女は韓国各地で平和を求めて闘っている人々の現場を訪れ、毎日祈りを捧げ、時には歌を歌う。

 ぼくがその休憩所を訪問したのは、集中豪雨で韓国各地に被害が出た数日後、気温は少なくとも30度以上の猛暑の日だった。前日に到着して夕食を取った後、彼女は日本から来た訪問客のためにギターを片手にいくつか歌を歌ってくれた。静かに、情感をこめて。

 翌日、ぼくが起きて窓の外を見ると、高空籠城が続く屋根に向かって彼女が五体投地の礼をしているのが見えた。労組事務室に常駐しているペ局長に聞いてみると「毎日、ああして祈ってるんだ」とのこと。「何を祈ってるの?」と聞くと「知らない」という。ゆっくりと、丁寧に、手を合わせ、五体を地面につけ、起き上がり、礼をする。ヨガのようでもあり、舞踊のようにも見える。流れるような美しい所作。

 その日は昼過ぎに亀尾を発つまで、特に用事もない。彼女が陣取っている休憩所で彼女が淹れてくれるコーヒーを飲みながら世間話をしていた。「どうしてここに来たの?」「韓国オプティカルハイテックの闘いをどう思う?」「出身地はどこ?」...

 彼女が光州で育ち、中学生の時に5.18を経験したことを聞いた。韓国の人々にとって、5.18は今の韓国につながる民主化闘争の起点でもある。光州の話を聞いているうちに、突然、彼女は「このオプティカルハイテックの工場は、終わらない民主化闘争の象徴なんだ」と言う。

 今、焼け崩れた工場の社屋と、それでも焼け残った屋根の上で苦しい抵抗を続けているパクチョンヘ労組員の姿が、当時、軍隊に取り囲まれ、道庁に立てこもり激しく抵抗した市民軍の姿とオーバーラップして見えるのだと言いながら、彼女は一筋の涙を流す。

 破壊と創造の神、シヴァ。善の神、デーヴァ。悪の神、アスラ。今、この現場では、裏手の管理棟にいるアスラと、屋上にいるデーヴァが戦っているのだという。シヴァが破壊した工場は、いつか息を吹き返し、人々が忙しく働くようになる... 彼女がインドに滞在していた時に学んだヒンズーの神々の話を聞きながら、今まさに虚空で激しく闘っているデーヴァとアスラの姿が見えるような気がした。

 「今も道庁の市民軍の闘いは終わっていない。韓国社会の数々の不条理は、518を終わらせられないことによって起こる。セウォル号も、梨泰院の惨事も... だから私はここにいる。ここで祈り続けるのだ」

 今日も彼女は一日中、あの休憩所でデーヴァとアスラの闘いを固唾をのんで見守り、全身全霊で祈り続けている。


Created by staff01. Last modified on 2025-07-25 09:27:40 Copyright: Default

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