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LNJ Logo 現地レポート : 大阪・関西万博 救護体制の脆弱さ
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「命より金」という万博の本質

かわすみかずみ

 大阪・関西万博で立て続けに事故が起こっている。開幕日には消防車が8台出動。その後もブラジル館でのボヤ騒ぎや異臭騒動、ユスリカの大量発生やレジオネラ菌の検出もあった。

 万博会場から搬送され、亡くなった来場者もいた。危機管理センターの機能を疑問視する声もあがっている。会場内の救護体制がどのようになっているのかを調べた。

救護体制はどうなっているのか

 大阪市保健局から、万博会場内の救護体制の資料(写真)を出してもらった。危機管理センターには統括医療責任者(医師)が1人、救護隊指令担当員が1人常駐する。診療所は3カ所ある。拠点となる西ゲート診療所は9時から22時まで開所している。医師2人、看護師4人、救護員、救護サポーターが1人づつ、クラークマネージャー、クラークリーダー、各1人、クラーク(医療事務)3人が勤務する。

 東ゲートにあるリング北診療所は9時から16時半まで開所。医師1人、看護師2人、救護員、救護サポーター、クラーク、クラークリーダー各1人が早番のみで勤務。

 応急手当所が5カ所あり、看護師、救護員、救護サポーター、クラークが各1人づつという状態で、9時から22時まで勤務。

 大阪市消防局救護課に確認したところ、救護員や救護サポーターは大阪市消防局からの出向ではないという。ではどういう人たちなのかと尋ねたが、「分かりません」とのことだった。市消防局の資料には「その他ボランティア」の記述があり、看護師、救護員の補助を行う(資格があっても治療等は行わないこと)と書かれていた。

判断・連絡に時間がかかる

 来場者が事故や体調不良などで危機管理センターに連絡を取りたいとき、近くにいるスタッフや警備員に伝え、そこから危機管理センターへ連絡される。来場者は直接連絡できない。これでは連絡している間に被害が拡大する恐れがないだろうか。

 夢洲カジノをとめる大阪府民の会の消防局交渉に同行した際、局員にその旨を伝え、万博協会に指導してもらえないかと尋ねた。消防局は「万博協会が『自分たちでちゃんとやるから大丈夫』と言っていました」と答えた。

 応急手当所には看護師しかいないため、医師の治療のためには、診療所まで患者を移動させないといけない。医師の治療が必要かどうかの判断についても危機管理センターの判断が必要となる。16時半以後は医師がいる診療所が西ゲート診療所1カ所になるため、西ゲートから遠い応急手当所では往復に時間がかかり、その間は人手不足になる。

救急出動が多すぎる

 大阪市消防局から提供された資料がある。大阪・関西万博の開幕日(4月13日)から5月16日までの、万博会場内への救急車の出動台数だ。4月13日から5月13日までの1カ月間で150台が出動していた。開幕日は8回の出動があり、3台が同時に出動した事例もあった。フリージャーナリスト西谷文和氏の調査では、USJにおける同期間の救急車の出動台数は33台だったという。救護所に来た患者の症状は、めまい、意識障害、下痢、胸痛、倦怠感・脱力感、呼吸困難・呼吸不全、腰痛、創傷、頭痛、背部痛、発熱、腰痛、嘔吐・吐き気、けいれんだった。

 万博に行った人たちは、救護所の案内板がなく、外からは分からなかったと言う。

収益だけを追う万博協会

 万博協会はBIE(博覧会国際事務局)との話し合いで、夜の来場者を増やすために飲食店や物販の時間延長を検討している。だが、スタッフが帰れなくなることや各店舗でコストが増えることなど、課題が指摘されている。夜の来場者にとってのメインイベントであるウォーターショーはレジオネラ菌の検出によって当面中止となった。

 夜の入場者を増やす想定があるにも関わらず、16時半以後の救護体制を拡充することは検討されていないとみられる。「命より金」という万博の本質が透けて見えるようだ。


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