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LNJ Logo 被ばく問題に朗報!原発関連労働者ユニオンが「竹中工務店」に勝利命令
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 福島第一原発の収束作業に従事して白血病の労災認定を受けたあらかぶさん(仮名/50歳・写真上)が、元請業者の竹中工務店に求めた団交要求に関して、1月29日東京都労働委員会は団交に応じるように命令を出した。命令文には「就労時における被ばく労働管理などの作業環境に係る事項について、誠実に応じなければならない」としている。原発労働で下請労働者が元請に求めた団交が、正当と認められたのは初めてのことで画期的な命令だった。

 2月4日午後、この問題で記者会見が厚労省で開かれた(写真上)。出席したのは、原発関連労働者ユニオンの川本副委員長、池田書記長、そして当該組合員のあらかぶさんだった。川本さんは「私たちの要求は,実際に浴びた放射線量の資料を出してほしい、元請として協力してくれというものだが、その一歩が進んだことは大きい」。あらかぶさんは「難しいと思っていたが、いい命令が出たので感謝している。今後もつづく廃炉作業のなかで被ばくが原因で、自分のように病気になる人が出たときに、話し合いのハードルが下げられればいいと思う」と短いことばで喜びを語った。

 実際に原発作業員として働いた経験のある池田実さん(写真上)は、「何重もの下請構造のなかで、二次三次の末端の労働者はドレイ状態だ。かれらが一番被ばくをさせられているが、いっさいものが言えない。いまのデブリ取り出し作業では、12.2ミリシーベルトという大量被ばくもあった。今回の命令は、下請労働者が元請会社と話し合う道を開いたもので、とても意義がある」と述べた。

 福島第一原発には、平均一日あたり5000人が働いているが、元請10数社が仕事を請け負い、その下に下請会社がつらなる形になっている。あらかぶさんは、竹中工務店の下請会社で働き、2012年10月から2013年3月まで福島第一4号機のカバーリング工事に従事した。そして被ばくが原因で急性骨髄性白血病を発症し、いまも闘病生活を余儀なくされている。(M)

<原発関連労働者ユニオンの見解>

2025年2月4日

 福島第一原発で働いて放射線に被ばくしたことが原因で白血病にり患した組合員の、元請企業に対する団体交渉権をめぐり、下記の通り、東京都労働委員会が団体交渉に応じなければならないという救済命令を出しました。ユニオンとしての見解を発表します。

東京都発表資料 竹中工務店事件(令和5年不第25号事件)令和7年1月29日
会社が組合の申し入れた団体交渉に応じなかったことは不当労働行為に当たるとして、一部救済された例。

https://www.toroui.metro.tokyo.lg.jp/meirei2025.html

1.事件の経過

 福岡県北九州市のあらかぶさんは、福島第一原発事故の収束・廃炉作業などの被ばく労働が原因で、急性骨髄性白血病で闘病中です。国が労災職業病として労災認定したにもかかわらず、東京電力はそれを否定しています。被ばく線量は、病気を発症するほどのものではないと言う理由です。現在、損害賠償請求訴訟が東京地方裁判所で係争中です。

 一方であらかぶさんは、原発関連労働者ユニオンに加入して、元請会社の一つである竹中工務店に団体交渉を要求しました。ところが竹中工務店は、雇用主ではない、過去のことである、賠償責任は東京電力にある、などの理由で交渉を拒みました。原発の廃炉作業現場においては、東電や竹中工務店のような元請事業者は、下請け業者以上に被ばくをはじめとする安全管理責任を担っています。また、東電が割増して支払っているはずの危険手当は、各社バラバラで、全くもらっていない労働者もいました。実はあらかぶさんは、そのことで東電や請負業者らへの信頼感をなくして退職したのです。

 2023年4月、ユニオンは、竹中工務店の団交拒否は、労働組合法で禁止された不当労働行為であるとして、東京都労働委員会(都労委)に救済命令を申し立てました。都労委は調査の過程で、和解も勧められました。ユニオンは、きちんと団体交渉が開かれるのであればもちろん和解しますが、竹中工務店は一貫して和解を拒否しました。

 2024年2月には、審査(証人尋問)が開かれ、会社からは現場の事務長が、ユニオン側からはあらかぶさんと当時の同僚が証言しました。会社の事務長は、普段は駅の近くにある事務所で仕事をしており、原発の現場にはほとんど行ったことがないことがわかりました。事務的なことに携わるだけですから当たり前かもしれません。あらかぶさんや同僚は、現場での実際の竹中工務店の責任者らとの関わりについて詳しく説明しました。

 そして2025年1月29日、都労委は竹中工務店の団交拒否は不当労働行為に当たるとして救済命令を出したのです。

2.救済命令の意義

 元請企業は、下請け労働者との関係において、「部分的とはいえ現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合」は、労働組合法上の使用者に該当します。都労委は、さまざまな証拠などから、竹中工務店が「放射線管理業務は、下請事業者に任せることなく竹中工務店が一手に担っていたということができる」と判断しました。したがって、要求書の1〜5項などについて、竹中工務店が団体交渉で回答する義務があります。職場における被ばく線量については、放射線管理手帳での記録がありますが、それが実際の被ばく線量と異なることが少なくありません。実際に管理している元請事業者が作業の実態や管理の詳細について明らかにするべきです。

 一方で危険手当については、竹中工務店が「何らかの事実上の力を背景に影響を及ぼしたり、関与した事実は具体的な証拠によって何ら立証されていない」という理由で、竹中工務店は労働組合法上の使用者に該当するとは言えないという判断でした。逆に言えば、そうした影響力や関与を及ぼした事実が立証できれば、やはり使用者として団体交渉に応じる義務が生じます。竹中工務店が資料2で回答したような、雇用主ではない、10年も前のこと、裁判でやるべきこと、などといった団交拒否理由は一切認められなかったのです。

 このことは全ての下請け労働者が、労働組合に加入すれば、実質上使用者としての役割を果たしている、果たしていた元請企業と団体交渉で解決する道を切り開く、極めて画期的な命令です。少なくとも、原発内の下請け労働者が加入する労働組合が、直接雇用主ではない元請企業との団体交渉権が認められた初めての事例ではないかと考えます。

3.ユニオンとしての今後の対応

 経過にあります通り、ユニオンは一日も早く竹中工務店が団体交渉に応じて、要求している事柄について誠実に回答することを求めます。2月4日付で、竹中工務店に対して、都労委命令に従って、ただちに団体交渉に応じるよう要求しました。

 あわせて今回の命令について、福島第一原発で働く多くの下請け労働者はもちろんのこと、建設業等で数次の下請け企業に従事する労働者の皆さんに対して、実質上何ら権限のない直接雇用主、いわば「名ばかり使用者」ではなくて、「実質上の使用者」である元請企業などと交渉を行って、労働条件の改善を勝ち取るためにユニオンに加入することを強く勧める所存です。相談は無料、相談内容は厳守します(実際に団体交渉する場合には組合に加入する、組合費を納める必要があります)。

原発関連労働者ユニオン
東京都千代田区外神田6丁目15番14号
連絡先 090-4382-1264(書記長 池田実)・045-575-1948(副委員長 川本)


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