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〔週刊 本の発見〕『農と食の戦後史一敗戦からポスト・コロナまで』 | ||||||
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風前の灯火にされた日本の農業『農と食の戦後史—敗戦からポスト・コロナまで』(大野和興×天笠啓祐、緑風出版)評者:根岸恵子
いま私たちはいとも簡単にお金と引き換えに食べ物を購入することができる。でも、それがどこから来るのか、だれが作っているのかをあんまり考えることはない。
私が各地の農家を訪ねて聞くのは、「国は農家なんていなくなってほしいと思っている」「米は作るほど赤字になる」という、悲痛な言葉ばかりだ。どこも高齢化し、後継者はいない。年老いた夫婦が腰を曲げて農作業をするのが当たり前となってしまった。 数年前まで援農に行っていた長野県の高山村にある巨峰果樹園は、主の静ばあちゃんが亡くなって継ぐ人もなく、どこぞの果樹農園会社に貸し出され、働いているのは外国人技能実習生になった。だけど、まだ巨峰を作っているだけいいかもしれない。なぜなら、長野では年老いた農家が農地を貸して、それがレタス畑になってしまっているのをよく見かけるからだ。これは国策だと言ってもいいかもしれない。こうした国の政策が、農村を壊し、農村が培ってきた文化を壊し、農業そのものを壊しているのだ。私が愛する農村風景は、先人が書き残した歳時記の中や、民映研の古い映像の中にしか、もはや残っていない。観光化された大きな祭り以外、祭事を司る後継者もなく、多くの人々の記憶から農村はなくなっていく。
この本を読んで、おやと思ったのは、オリンピックや万博が私たちの食生活を変える契機になっていることだ。ファストフードが輸入され食生活が変化し、減反政策が同じ時期に行われたのも偶然ではない。 またオリンピックによって、日本の農村にあった肥溜めがみっともないという理由で無くなったこと。それによって化学肥料が農村にいきわたっていったこと。その後農薬の使用量が増え、手間のかからない農業は余剰の労働力を生み、高度成長期の労働力となって都会に流れ、日雇い労働者になったこと。山谷にはそうやって地方から出てきて、オイルショック以降仕事がなくなり、路上に追い出され、野宿になった人がたくさんいた。簡単に述べてしまったが、その経緯をこの本は丁寧に述べているので、読んでほしい。それから世界的な流れの中で、ガット・ウルグアイラウンドからWTO、TPP、FTAがいかに日本の農家に破壊的な力を持っていたのか。日本政府の立場についても詳しい。 そして恐ろしいのは、バイオ―テクノロジーに支配された農作物がどんどん市場に出回っていることだ。ゲノム編集作物の世界的な競争は、自然への冒涜であり、神は信じていないが、神への挑戦である。私たちが口にする野菜も穀物も肉も魚も、利潤を追い求めるわずかな資本によって作り替えられているということは実に恐ろしいことである。 よって、未来のことを考えると恐ろしい限りが、闘う術はある。抵抗である。ビア・カンペシーナは小農家の国際的な組織だが、抵抗運動を続けている。また、連帯経済の運動が世界的に広がり、自給自足と物々交換を基本とする食への挑戦も始まっている。 敵はとてつもなく大きく、人々を恐怖に陥れることで更に巨大化し、食と医と薬によって人心を操り、世界を支配しようとする。こちらは小さく小さくやって繋がっていくことだ、その闘いをずっと続けていくべきだと、この本は述べている。すべてを支配される前に私たちは種を蒔かないといけない。 *「週刊 本の発見」は毎週木曜日に掲載します。筆者は、大西赤人・志水博子・志真秀弘・菊池恵介・佐々木有美・根岸恵子、黒鉄好、加藤直樹、ほかです。 Created by staff01. Last modified on 2022-02-11 08:18:33 Copyright: Default |