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LNJ Logo 憲法を変えて「戦争のボタン」を押しますか?/行動する学者・清水雅彦さん学習会
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<戦争協力にNO! 葛飾ネットワーク学習会 報告と感想>

憲法を変えて「戦争のボタン」を押しますか?


 8月19日(金)、戦争協力にNO!葛飾ネットワーク主催で「憲法を変えて『戦争のボタン』を押しますか?」と題する、清水雅彦さん(日本体育大学教授・憲法学)の講演学習会がありました。

 先の参議院選挙でも保守派が勢力を保ち、改憲が可能となっていますが、清水さんは「世論をつくっていけば、強引なことはできないと思う」と話し始めました。12ページに及ぶきっちりとしたレジュメに沿って約1時間半講演してくれました。

 講演の内容は「一、緊急事態条項論の内容と問題点、二、実質改憲としての「敵基地攻撃論」の内容と問題点、三、ロシアによるウクライナ侵略の問題点と日本における9条改憲論との関係、四、9条改憲論の内容と問題点、五、その他4項目改憲案の内容と問題点、六、この間の運動を振り返り、今後の運動を考える、七、この間の選挙を振り返り、今後の課題を考える」で、それぞれ条文や経緯、問題点の整理、選挙結果などをていねいに記し、課題を書きだしてくれました。

 たとえば、緊急事態条項論の問題点として、「コロナ対応のために改憲」の暴論がありますが、日本には憲法25条(生存権の保障、社会保障・公衆衛生の向上・増進責務)があるのに全国保健所数を1992年852から2021年470に減らしてしまったなどの問題があります。憲法の理念により対応していれば救えたはずの命が、特に大阪では、保健所が対応できずに自宅待機で多くの人を死なせてしまったことなどを例にあげて話しました。

 また「敵基地攻撃論」について、1956年2月の衆議院内閣委員会での船田中防衛庁長官答弁「たとえば誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であるというべきものと思います」を紹介しました。そして2002年5月には衆議院武力攻撃事態への対処に関する特別委員会で福田康夫内閣官房長官が、先制攻撃論を答弁するなど、攻撃の範囲も広げてきているとのこと。清水さんは「自衛隊は違憲なので『敵基地攻撃論』も違憲だ。日本国憲法9条1項は『武力の威嚇又は武力の行使は、永久にこれを放棄する』とある。日本は27か国目の『軍隊のない国家』を目指すべきだ」と話しました。

 自衛隊の保持を憲法9条に加える「加憲」という自民党の改憲案については、「『自衛隊違憲』が言えなくなる」と注意を促しました。「多くの国民は『自衛隊合憲』と考えていますが、憲法研究者の多数派は『自衛隊違憲』と考えています。裁判所もこれまで『合憲』の判決を出したことはありません。『合憲』ということになれば、いままでの歯止めははずされ、9条2項は『空文化』します」と。

 司会者が清水さんを「行動する学者」と紹介していましたが、「総がかり行動実行委員会」結成に至る話や、「労組と市民と野党の共闘」が必要だという話はとても興味深く、また具体的でよくわかりました。連合は、組合員の中に自民党の支持者が多くなっていることで自民党と対峙できなくなっているようだとのこと。また「対立・分裂を繰り返してきた左翼・リベラルは、自分たちがマイノリティだという自覚が足りない。批判勢力でも存在価値はあるが、自分たちの政策を実行していくためには、まとまって多数派を形成し、政権交代していくことを目指すべきだ」との厳しい指摘にも納得しました。

 今後の課題として、改憲を発議させない運動・世論づくりが重要だということや、全国各地で「労組と市民と野党の共闘」を作っていかなければならないことなどよくわかりました。

 会場からの質問にもていねいに応えてくれました。興味深かったのは「こういう集会の場にひとりで来ないで下さい。ひとりで来ると自己満足で終わってしまう。家族や友人を誘ってほしい」と話していたこと。また若い人に声を掛けてほしいと話していました。「駅でチラシをまいても若い人はとってくれないし、直接声を掛けるしかない。懇親会にも誘い、おごってあげるといいですね。でも、上から目線で話すことや、長く、一方的なでかい声での話はやめてほしい」と言ってました。納得です。(尾澤邦子)


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