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キステムは非正規にも賞与を払え!〜東北女性たった一人で立ち上がる


*写真=キステムが入るビル前でプラカードを掲げる

 NTT関連の警備業をしている「キステム」は、1100人規模の中堅の警備会社だ。しかし正社員は150人程度で、8割以上が契約社員などの非正規である。その格差は大きい。正社員には年間5.5か月の賞与が出るが、非正規社員はゼロ。そんななか東北支店管轄の営業所のAさん(58歳 女性)がついに立ち上がった。Aさんは警備日報の処理などの事務担当の仕事をフルタイムでやっている。もう10年勤めたベテランだ。東北支店管轄には、他の4つの営業所にもまったく同じ仕事をしている事務担当者がいる。しかし他の4人の身分はいずれも正社員。Aさんだけが「契約社員」ということで、基本給でも5万円低く、賞与もゼロである。

 不合理な非正規差別を禁止した「労働契約法20条」は、2020年4月に重みを増して「パート有期雇用労働法」に引き継がれている。Aさんはこれで何とかなると思い、一人会社に掛け合ったが「業務内容がちがうから」と拒否された。職場の労組(連合系)も取り上げてもらえなかった。そんなとき最高裁までたたかったメトロコマース事件のグループ「女闘労倶楽部(めとろくらぶ)/写真上」をホームページで知り、交流がはじまった。


*宮城合同労組・星野委員長

 女闘労倶楽部の助言もあって、2021年9月に宮城合同労組に加入し、会社と団体交渉をもつことができた。しかし会社は「就業規則に賞与を払えと書いてない」と繰り返すだけだった。1月14日、Aさんはついに「パート有期雇用労働法」を根拠に格差是正を求める裁判を盛岡地裁に起こした。賃金・賞与の未払い請求額は、過去に遡り469万円である。

 1月17日には上京し、東京・御徒町のキステム本社に直接、申し入れを行った。初めての行動だったが、支援の輪は首都圏にも広がっていて、50人以上の組合の仲間がやってきた。

 社前集会で、Aさんがマイクを握った。小柄で細身の方だが、堂々としたアピールだった。「コロナ禍で非正規女性の自殺が増えています。やはりきちんと人が生活できる賃金を保障することが必要です。パート有期雇用労働法の意義はそこにあると思います。これをきちんと実践してもらうために、私はあきらめずにたたかうことを決意しました」。大きな拍手が起きた。

 社会人になったばかりの娘と大学生の息子をもつ母親でもあるAさん。午後の厚労省記者会見では「賞与があれば子どもたちの授業料にあてられた。若いこれからの人たちのためにも頑張りたい」と述べた。記者の「たった一人で裁判を起こしたが、大変な苦労があったのではないか?」の質問に対しては、「平気です。正しいことをしていると思っている。訴えるのはあたりまえで、まちがっていることを正したい」ときっぱりと答えた。

 いまや日本の非正規労働者は全体の4割をしめている。しかも圧倒的に女性が多い。その不安定な雇用と低賃金は、貧困問題にもつながっている。Aさんの「格差是正」を求めるたたかいは、「郵政」「メトロコマース」「大阪医科大学」を引き継ぐもので、とてつもなく大きなものになるに違いない。(M)


Created by staff01. Last modified on 2022-01-19 12:29:50 Copyright: Default

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