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宮古島へ陸自派遣(要請)の本末転倒と異常報道

2021年02月01日 | コロナ禍と政治・社会

    

 陸上自衛隊は1月29日、コロナ感染が広がっている沖縄・宮古島へ看護官ら5人の「医療チーム」を派遣しました(写真左)。玉城デニー知事の要請に基づくものです。陸自ミサイル基地建設が問題になっている宮古島への自衛隊派遣は、きわめて政治的な行為であり、同時に、コロナ対策の面からは本末転倒と言わざるをえません。

 玉城知事が派遣を要請した同じ29日、県の専門家会議が開かれ、「収束に向かっている」(30日付琉球新報)との見方が示されました。玉城氏はこうした状況にもかかわらず、自衛隊派遣を要請しました。その必要性がどこにあったのでしょうか。

 重症患者を本島に運ぶ必要があるなら、県・医療機関のヘリを使えばいいのです。派遣された看護官は、介護施設で「薬を提供したり、入浴・食事の介助、健康観察」を行うと言っています(31日のニュースインタビュー、写真中)。こうした作業になぜ自衛官を派遣する必要があるのでしょうか。

 自衛隊の派遣は、コロナ対策の面からは本末転倒です。

 そもそも自衛隊は、典型的な「3密」の軍隊組織であり、それは感染防止どころか逆に感染拡大の温床・拠点になる恐れが大です。
 防衛省は日本全体で防衛省・自衛隊関係者のコロナ感染者は951人(1月30日現在)と発表していますが、立ち入り調査は行われておらず、とても正確な数とは思えません。現に、公表されているだけでも、自衛隊内の感染・クラスターが相次いでいます。1月28日には宮崎氏霧島演習場でクラスターが発生し、派遣されていた那覇駐屯地の隊員5人が感染しています。

 5人の自衛隊「医療チーム」は、毎日(2月13日まで)感染の温床になりやすい(あるいはすでになっている)駐屯地から介護施設などへ出向くことになります。彼らが逆に感染源となる危険性はけっして小さくありません。

 宮古島には現在約700人の自衛隊員が配備さています。宮古島の人口は約5万5000人ですから自衛隊員はその約1・3%。たいへんな比率です。宮古島で感染が拡大した原因は、「飲食・会食を通じて感染した人が、家庭や職場で感染を広げている」(27日付琉球新報)とみられています。「飲食・会食」の場に自衛隊員が関係している可能性がないと言えるでしょうか。

 宮古島の自衛隊駐屯地では昨年3月、隊員の感染が明らかになりました。感染者の実態、感染経路などを文書で説明するよう求めた住民団体に対し、防衛省はこれを無視しました。
 そればかりか、感染拡大が懸念された式典を、住民の中止要求を踏みにじって強行しました(20年4月5日)。事前に地元医師会が、「宮古島は医療資源に乏しく、新型コロナ感染の不安が島内に広がっている。万が一、感染者が出たら大変なことになる」(宮古地区医師会・岸本邦弘副会長、20年4月4日付琉球新報)と強く中止を要求していたにもかかわらずです。

 そんな自衛隊を感染の現場に送り込むなど本末転倒も甚だしいと言わねばなりません。自衛隊は感染防止に逆行する軍隊組織であり、基地(駐屯地)の撤去こそがコロナ対策に沿うものです。

 こうした危険性のある自衛隊派遣(要請)を、まるでコロナ対策の英断であるかのように報じる日本のメディアはまさに異常で、政府追随をあらためて見せつけるものです。

 31日昼のニュース(私が見た限り)では、NHK(写真右)のほか、TBS系、テレ朝系のニュースがいずれもトップで報じました。NHKなどは前日(30日)の準備段階から大きく報じました。

 「薬を提供したり、入浴・食事の介助、健康観察」を行う者5人が支援に入ったことにそれほどのニュース価値があるでしょうか。それが一般市民・医療関係者ならこのような扱いをするでしょうか。自衛隊だからこその誇大報道です。それこそが、憲法違反の軍隊である自衛隊を“市民社会”に浸透させようとする政府・防衛省の思うつぼであることを、メディアは肝に銘じるべきです。


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