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LNJ Logo 高井弘之:「コロナ特措法」ー罰則化の問題をめぐって
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みなさんへ

愛媛の高井です。

「感染者(陽性者)が入院拒否した際/行動歴などの聞き取りを拒否する場合/
軽症・無症状者の宿泊・自宅療養者が療養中に抜け出した場合」に刑事罰を科す
ことができる感染症法「改正」検討など、「コロナ」をめぐって空恐ろしいことが
次々と起こっています。

以下は、「コロナ特措法」の「改正」における「命令ー罰則化」の問題について
考えてみたものです。一読していただけると幸いです。

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【政府に「命令―禁止する」主体から、
政府によって「命令―禁止される」客体・従属体への転換・転倒】

「コロナ特措法」の「改正」作業が進行中であることはご存知かと思います。それは、
休業や営業時間短縮に応じない飲食店(営業者)に対して罰則を科す内容です。

主権者であり権利主体である人民・市民に行政機関が禁止―命令をし、従わなければ
「罰を与える」というのです。それは、主権者の権利侵害をしておきながら、
それを行った側でなく、その生存権(「生活の安全」)を侵害された権利主体の側―
権利保持者としての法的地位を持つ者が罰せられることを意味します。
(ちなみに、各飲食店はウイルス入りの飲食物を提供しているわけではありません。)

まるで、やむを得ない、当たり前の「自然な」移行でもあるかのように報じられ論じら
れるこの、「要請―自粛」から「命令―罰則」への移行措置ですが、この二つの間には、
原理レベルの断絶があると、私は思います。近代(人民主権)立憲主義――現憲法の
「法―権利」体系・原理が、それ以前の状態に戻されるほどの断絶―転倒が、そこには
存在しています。

周知のように、近代立憲主義(憲法―法)における命令主体は主権者たる人民であり、
そのあて先は、国家権力を行使する者―為政者です。法というものが王による人民への
命令(―法度)であったそれ以前とは、180度の転換がそこにはあります。

自発的服従システムとして、それはそれで問題のある「要請―自粛」ですが、
そこには、権利主体が人民・市民であるという前提が存在していたと思います。
しかし「命令―罰則」システムでは、その当然の前提が放擲され、市民は、権力に
命令され、それに応じなければ罰せられる存在―「法的地位」に転換・転倒された
ことを意味します。

コロナからの「安全」ということも私たちの権利の一つでしょうが、その権利は、
このような、一部の人――営業者だけでなく、そこで働いて生計を立てている人やそこへ
の仕入れ業者・関連業者、その店を必要としている人たちを含めて――に多大の犠牲を
負わせ、その人たちの権利を侵害する形で実現させてもよい性格の「それ以上の権利」
でしょうか。

アメリカ独立宣言が「権利を保障するものとして、政府が人びとのあいだに打ち立てられ
」
とし、フランス人権宣言が「すべての政治的結合の目的は、人の、時効によって消滅する
ことのない自然的な諸権利の保全にある。」と謳ったように、近代民主主義政府は、私た
ち
人民・市民の権利を保障するためにこそ存在する―存在させているものです。

このことを踏まえれば、政府や代議員らは、「コロナからの安全」を政策として実現させ
ようとする場合でも、人民の諸権利を保障したまま、権利の侵害によらない方法をその
極限まで追求する責務があります。医学的なことはよくわかりませんが、ハイリスクがあ
る
人への予防・対応体制の充実など、このウイルスの性格に基づいた合理的医療システムの
構築・改善等々によって現在の状況を克服していく方法はあるはずです。

しかし中央・地方政府は、それら公共機関として為し得ることの徹底追求よりも、市民の
生活を管理・統制し、自由や自己決定権を奪い、犠牲を負わせ、諸権利を安易に侵害する
方法に、憲法や権利を無効化する―「例外状態」化する「緊急事態宣言」的なものに、
「対策」を集中させようとしているように見えます。

そのような状況の中でいま起こされようとしているのが、

【政府に「命令―禁止する」主体から、政府によって「命令―禁止される」客体・従属体
への
「私たち」の転換・転倒】です。

コロナへの不安や恐怖心の中で、「安全対策」上しかたないと思ってしまう―思わされて
しまう状況のなかで、このような重大かつ深刻な「根底的転換」が起こされようとしてい
る
ことに、私たちは気づき、自覚的であらねばならないと思います。

(転送・転載、歓迎します。)

Created by staff01. Last modified on 2021-01-11 17:37:26 Copyright: Default

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