韓国政府が23日、GSOMIA(軍事情報包括保護協定)の破棄を正式に伝えたのに対し、安倍政権は「現下の地域の安全保障環境を完全に見誤った対応と言わざるをえない」(長嶺安政駐韓大使)と抗議しました。
安倍政権だけでなく、日本のメディアも、「これまでの安保協力の積み重ねを崩してしまうのは誤りだ」(23日付毎日新聞社説)などと韓国政府を批判しています。
「現下の地域の安全保障環境」を「見誤っている」のはいったいどちらでしょうか。
同協定は、「日米韓3カ国が北朝鮮問題で連携する姿勢を内外に示す象徴的な枠組み」(同「毎日」社説)です。すなわち、日米軍事同盟(日米安保体制)と韓米軍事同盟というアメリカを頂点とする2つの軍事同盟の底辺(日本と韓国)を結んで、実質的に米日韓の3カ国軍事同盟とするのがGSOMIAです。それが破棄されるのですから、安倍政権が狼狽し、アメリカが批判のコメントを発表するはず。
日米両政府は「安保環境を見誤っている」と韓国を批判して軍事同盟を維持することに懸命ですが、見誤っているのは彼ら、軍事同盟固執勢力の方です。
朝鮮半島をめぐる「安保環境」は、昨年の韓国と朝鮮民主主義人民共和国の「南北会談」(2018年4月27日、板門店)と、朝鮮とアメリカの「朝米会談」(同6月12日、シンガポール)で劇的に変わりました。そのことを改めて想起する必要があります。
「板門店宣言」はこううたっています。
「南と北は、南北関係の全面的で画期的な改善と発展を実現することで、途絶えた民族の血脈をつなぎ、共同繁栄と自主統一の未来を早めていくだろう」
「南と北は、朝鮮半島で先鋭化した軍事的緊張状態を緩和し、戦争の危険を実質的に解消するため共同で努力していくだろう」(韓国側の発表による。2018年4月28日付共同配信記事)
そして「シンガポール共同声明」でも、「2018年4月27日の『板門店宣言』を再確認」(2018年6月13日付共同配信記事)したのです。
「板門店宣言」は、韓米軍事同盟体制ではなく韓国と朝鮮の民族の共同こそが朝鮮半島・東アジアに平和と繁栄をもたらすことを確認し、そのための努力を約束し合ったのです。これこそが「現下の地域の安全保障環境」にほかなりません。GSOMIAの破棄は「見誤っている」どころか、まさにこの新たな「安保環境」に合致するものです。
安倍政権は、なんとしても朝鮮半島をめぐる「安保情勢はきびしさを増している」(岩屋防衛相)と描きたいため、またぞろ朝鮮の「ミサイル発射」を挙げていますが、先の朝鮮の「飛行体発射」は「板門店宣言」「シンガポール共同声明」に反して米韓が合同軍事演習を強行したことに対する対抗措置にほかなりません。非がアメリカ・韓国側にあることは明白です。それをあたかも朝鮮が「挑発」しているかのように言うのは、原因と結果、加害者と被害者を逆転させるものと言わねばなりません。
文寅在政権がどこまで「板門店宣言」を意識してGSOMIA破棄を決定したかはともかく、結果としてそれが「板門店宣言」「シンガポール共同声明」に沿い、朝鮮半島・東アジアの平和へ向かうものであることは明らかです。
私たち日本人は、日米両政府やメディアの反韓国・朝鮮キャンペーンに惑わされることなく、韓国のGSOMIA破棄を支持し、さらに軍事同盟のない東アジアをめざして、日米軍事同盟(安保条約体制)廃棄という私たち自身の責任を果たすべきです。それこそが歴史の進歩的変化に沿う道ではないでしょうか。