紀行文「坂東俘虜収容所」見学記 | |||||||
Menu
おしらせ
・2024総会(報告) ・レイバーネットTV(4/24) ・あるくラジオ(4/20) ・川柳班(投句「風」) ・ブッククラブ(6/8) ・シネクラブ(6/15) ・ねりまの会(4/17) ・フィールドワーク(5/31) ・三多摩レイバー映画祭(6/2) ・レイバーネット動画 ●「太田昌国のコラム」第89回(2024/4/10) ●〔週刊 本の発見〕第343回(2024/4/25) ●「根津公子の都教委傍聴記」(2024/4/24) ●川柳「笑い茸」NO.152(2024/3/27) ●フランス発・グローバルニュース第8回(2024/4/20) ●「飛幡祐規 パリの窓から」89回(2023/12/31) ★カンパのお願い ■メディア系サイト 原子力資料情報室・たんぽぽ舎・岩上チャンネル(IWJ)・福島事故緊急会議・OurPlanet-TV・経産省前テントひろば・フクロウFoEチャンネル・田中龍作ジャーナル・UPLAN動画・NO HATE TV・なにぬねノンちゃんねる・市民メディア放送局・ニュース打破配信プロジェクト・デモクラシータイムス・The Interschool Journal・湯本雅典HP・アリの一言・デモリサTV・ボトムアップCH・共同テーブル・反貧困ネットワーク・JAL青空チャンネル・川島進ch・独立言論フォーラム・ポリタスTV・choose life project・一月万冊・ArcTimes・ちきゅう座・総がかり行動・市民連合
|
*レイバーネットMLから収容所跡が観光地になるというのは世界で珍しくなく、有名どころでは、かのアウシュ ヴィッツがありますが、この「坂東俘虜収容所」は日本ではいちばん名の知られる収容所 史跡といわれています。第二次世界大戦前には、日本にもリベラルな気風を受け入れる 懐の深さがあったことが、この地を訪れるとわかります。 ここに収容されたドイツ兵はそれぞれが楽器職人、パン職人、鍛冶屋、土木建築技師、電 気通信技師、印刷工、大工など、ヨーロッパの進んだ技術を身につけた専門職人だったの で、収容所にいながら、自身の技量で事業をしていました。収容所内外にはヨーロッパ的 な農業や酪農園、さらにはウイスキー蒸留施設、パン焼炉などが作られます。ドイツ人の 進んだ技術は地域を活性化させ、公共事業にも貢献し、彼らが鳴門市に建設したドイツの 石橋は、今も跡地に移設され残っています 彼らがオーケストラをつくり、アジアではじめてベートーヴェンの第九を演奏したエピソ ードは『バルトの楽園』という映画にもなりました。ただし、この映画には人気俳優、松 平健や阿部寛らが出演しましたが、盗作問題が起こるなど制作にトラブルが生じ、大作の 割には興業が振るわなかったと評価されています。 収容所内には自由の気風があふれ、所内新聞も発行されていました。他の収容所で苦しい 生活をしている仲間の兵士のために祈る時間や、憩いの時間にビールを飲むことも許され ていました。 こうした美しく活気ある逸話が残る史跡ですが、実際に行ってみると、アップダウンのあ る山陰で夕日が落ちるのが早く、兵舎は外国人には天井が低く狭い印象は否めません。天 然池からの風には湿気がこもり、晴れていても地面はしっとりして、日本的な風土に閉じ 込められる閉塞感はあります。 囚人の処遇としてはやはり並外れて良心的で、捕虜はよく、運動リクリエーションとして 海水浴にも行ったそうです。中には見えなくなるほど沖まで泳いでいく捕虜もいましたが 、海水浴は続けられました。しかしその海は瀬戸内海で、捕虜たちの故郷につながる海で はなく、本当の意味で、彼らの望郷の念を癒やすことはなかったと思います。 比較的自由はあったとはいえ、囚われの人々の鬱々とした気持ちは、遺構を通じて伝わっ てくるものがありました。9年間の捕虜生活のあと、解放されてもこの地に残る元兵士が 何人かいたことも、処遇が人道的であった証左として伝えられています。しかしむしろ、 職業軍人ではない人々が約10年職場を離れてしまえば、技術の進歩もあり、もとの仕事で 食べていかれるかどうかの不安もあっての、日本永住の決断もあったのではないかとおも われます。抑留中に病気などで亡くなり、ふたたび祖国の地を踏むことのできなかった元 兵士80数名は、戦士した日本中の兵士とともに、この地に無念のまま供養されました。 この「坂東俘虜収容所」は、鳴門市の有名な渦潮見学ができる観光名所から車で30分。道 の駅第九の里に駐車して徒歩で行かれます。 最近、この遺跡に対する注目が高まっていて、すでに終了していますが、今年1月には東 京Bunkamuraで「坂東俘虜収容所世界展」が開かれました。3月には京都で、同展覧会開催 が予定されています。 ただし、この遺跡を軽々しく賛美することは、戦争を軽率に美化することにつながる恐れ もあります。 なのでブームの動向を慎重に正視しつつ、現在、世界中の戦乱や価値観の相違から囚われ の身となっている、すべての非拘束者の適切な処遇と解放と求めるために、わたしたちが 今何をすべきか、その指針を得るうえで学習すべき大切な歴史史跡であることを、あらた めて認識した旅の一日でした。 ※関連イベント 3月26〜31日 京都市の京都文化博物館別館ホール 入場無料。場所が広いので、東京開催より資料が追加されるそうです。 3月30日 100年前の1919年3月26日に収容所で開かれた演奏会「室内楽の夕べ」を京都の学生ら6人 が再現。 Created by staff01. Last modified on 2019-02-11 12:12:23 Copyright: Default |