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●木下昌明の映画の部屋 249回

大逆事件の「深層」を描く〜イ・ジュンイク監督『金子文子と朴烈』

 イ・ジュンイク監督の韓国映画『金子文子と朴烈(パクヨル)』を観て、彼らの激しい生き方を知ることができた。2人は大逆事件の被告で、死刑まで宣告されていたことも知った。

 東京が舞台だが、撮影は韓国のセットで、日本人が多く登場するのに韓国の俳優がそれを演じている。なかでも主役の金子を韓国女優チェ・ヒソが見事にこなしている。

 金子と朴が出会った1922(大正11)年から、この映画は幕を開ける。金子が朴の「私は犬ころである」という詩に共鳴し、彼と会い、共同生活を始める。

 金子は極貧の中で育った。両親に捨てられ、「無籍者」(無戸籍者)だからと学校にもいけず、祖母と朝鮮に渡り、女中のように働かされる。その時代に、日本統治に抵抗した1919年の「3・1独立運動」が起こる。

 単独上京した金子は20歳の頃、アナキストで人力車夫だった朴らと「不逞社(ふていしゃ)」を結成し、2人で『太い鮮人』という冊子も作ったりする。

 そこに関東大震災が起こり、2人は警察に検束される。ここから俄然(がぜん)面白くなる。それは2人が獄中で直接、時の権力とわたり合うからだ。

 内務大臣の水野錬太郎は朝鮮総督府で政務総監をしていたから、3・1運動の脅威を肌で感じていた。そこで朝鮮人の虐殺を煽(あお)った。そればかりか皇太子暗殺未遂事件を捏造(ねつぞう)し、その首謀者に朴を仕立てた。血気盛んな2人は逆にそれを利用し、日本の植民地主義の非道を訴えようとする。

 2人が獄中や法廷で役人と応酬し合うシーンが興味深い。彼らはその対決の中で自らの思想を培っていく。『何が私をこうさせたか』という彼女の自伝も獄中で生まれた。

 見どころは、2人が被告なのに朝鮮の礼服を着て、傍聴人を驚かせたり、天皇制を批判するシーンでは、ギョとする発言も。これは日本人には描けない狷本″の映画だ。
(『サンデー毎日』2019年2月10日号)

※2月16日より東京・渋谷のシアター・イメージフォーラム。大阪では、シネマート心斎橋、京都は京都シネマで同時公開

〔追記〕イ・ジュンイクは、昨年日本で公開された『空と風と星の詩人〜尹東柱(ユンドンジュ)の生涯』の監督です。戦時下、治安維持法でとらわれたこの詩人が、福岡刑務所で獄死した。ひそかにかいた詩を、友人が日本からもち出し、戦後発表され国民詩人となった。この『金子文子と朴烈』では、当時の天皇を朴が「寄生虫」と発言しています。そういう見方もあるのかと、目からウロコでした。


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