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●木下昌明の映画の部屋 237回

ポーランド映画祭――古典から最新作まで30本余上映

 20世紀、ポーランドは激動の時代を送った。『灰とダイヤモンド』や『影』などが生まれ、世界の映画史を飾った。後に続く世界の若者にも生きる刺激と示唆を与えてくれた。

 今回で6回目を迎える「ポーランド映画祭」では、いまは亡き巨匠たちをはじめ、アニメや〈現代〉を問う新人監督らの長短30本余が上映されている。アンジェイ・ワイダ監督作品の追悼上映も行う。

 旧作ではカヴァレロヴィッチ監督の壮大な歴史劇『太陽の王子ファラオ』(1966年)に注目。砂漠を舞台にしたエジプトの王子と神官たちの天体を利用しての争いは、詐術にみちた今の政治そっくり。

 新作では31歳の新鋭監督の『プレイグラウンド』に魅かれた。車で送迎される少女と父の介護をする少年、先生への送別の花も買えない母子家庭の少年に焦点を当てた作品。夏休み前の学校帰りの3人に何があったか――ここからも無残な〈現代〉がうかがえる。

 次に見た33歳の監督の『最後の家族』もすごかった。これは実在した画家ベクシンスキーとその家族の後半生を描いていて、画家は社会主義リアリズムとは無縁な怪奇で幻想的な絵によって人気を博し、高層アパートで何不自由ない日々を送っている。一人息子は、ラジオDJなどに引っぱりだこの人気者。が、奇矯な言動をし、何度も自殺未遂をしている。この家族に何が起こったか――ラストが衝撃的である。ドキュメンタリーの『ベクシンスキー家の人々』も上映される。ぜひ見たい。

 女性監督の『アート・オブ・ラビング』も実話を基にしている。76年に700万部のベストセラーとなった『愛の技法』の著者の半生を描いた。彼女は産婦人科医で、大胆にも「女性も性生活を楽しむ」権利があると訴えて政府役人とわたり合う。その彼女の愛とセックスシーンが見もの。これは社会主義下の『第二の性』の誕生を描いた傑作だ。(『サンデー毎日』2017年12月10日号)

※東京都写真美術館ホール(恵比寿ガーデンプレイス内)にて12月15日まで。問い合わせは03-3280-0099


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