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LNJ Logo 〔週刊 本の発見〕『五〇年目の日韓つながり直し−日韓請求権協定から考える』
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毎木曜掲載・第20回(2017/8/31)

戦後補償「解決済み論」のおかしさ

●『五〇年目の日韓つながり直し−日韓請求権協定から考える』(吉澤文寿編著、社会評論社、2016年、2400円)/評者=佐藤灯・金塚荒夫

 8月17日、韓国の文在寅大統領は日本の朝鮮植民地支配に伴う戦時期の朝鮮人強制動員の問題をめぐって、「日本の『慰安婦』問題と強制徴用問題解決済み』の主張は誤り」との立場を明らかにした。これに対して、日本政府と多くのメディアはバッシングを繰り広げている。紹介する本書は、日本の戦後補償「解決済み」論を批判的に検討し、今なお果たされていない植民地支配の罪を清算するための諸課題を1965年の日韓請求権協定を切り口に考える本だ。

 この問題を日本政府が「解決済み」とする法的根拠は、1965年に締結された「日韓請求権協定」にある。これは日韓の国交正常化とともに締結されたもので、韓国が日本の領土から分離するに伴う日韓両国の財産や請求権の処理を規定しているものだ。この協定では日本が韓国に「無償3億ドルの日本国の生産物や役務の供与」などの経済協力と引き換えに、両国の請求権に関する問題を「完全かつ最終的に解決されたこととなる」と定められており、その請求権には、戦争時に徴用された韓国人の未収金なども含まれているとされた。声をあげた強制動員そして日本軍「慰安婦」とされた被害者に対する、日本政府の「解決済み」論はこの協定を根拠としているのである。

 しかし、本当に問題が「解決」しているとすれば、なぜ植民地支配の被害者が今なお、日本に謝罪と賠償・補償を求め続けているのだろうか?

 そもそもこの協定には、日本の植民地支配と戦争による日本の加害は何一つ明記されていない。日本政府は「日本の朝鮮植民地支配は正当なものだった」という前提で、この協定を締結したからである。その前提とは ‘本の朝鮮植民地支配は国際法に則って適法、⊃¬叡六拉曚砲茲辰督鮮は「近代化」した、D鮮と日本は戦争状態ではなかったため、独立に当たって賠償問題は生じないというものであり、これらの前提をもとに締結した協定は、日本の朝鮮への植民地支配・戦争加害の責任を問い、その克服をめざすものではなかった。したがって、「国家総動員法」や「国民徴用令」によって朝鮮の人々が戦争時に強制動員されたことも「合法的」なものとされ、その「不法性」や「植民地支配責任」は問題視されることはなく、日本政府は韓国政府へ経済協力を行うことと引き換えに、日本政府の都合の良いように植民地支配に基づく強制動員の被害の問題を「解決した」として、問題の幕引きをはかろうとしたのである。(*写真=韓国の「日韓条約」反対運動

 それにもかかわらず、植民地支配の被害者と日韓市民は、裁判闘争などの地道な努力により日本政府の「解決済み」論が欺瞞であることを明らかにしてきた。2012年には日本の最高裁にあたる韓国大法院で、強制動員が日本の植民地支配にもとづく不法なものであり、日韓請求権協定における請求権の中に植民地支配による損害賠償請求権は含まれていないとして、強制動員被害者の個人の請求権が消滅していないことが宣言された。そして今なお、被害者たちがさまざまな裁判闘争を通じて、日本の「植民地支配の罪」の清算を訴えている。


 解決されなかった加害を「解決した」と言って、問題の幕引きをはかろうとする日本政府や日本メディアの姿勢は許されない。そして、この態度は村山談話などで日本政府が示した「植民地支配」への「反省」と「おわび」と真っ向から矛盾する。この矛盾は止揚されなければならない。この矛盾の止揚は「『解決済み』論を繰り返すことではなく、『解決済み』論を修正し植民地支配・戦争の責任を果たす道を模索」(本書p32)する方向でなされなければならないだろう。

 「植民地支配と戦争犯罪のような国家暴力によって犠牲となった個人の権利回復のために、国家の責任は、期限なく、全うな解決を目標に、追求されなければならない」(本書p113)と本書は訴える。そして、国家の責任を問いつづけることは日本に生きる市民一人ひとりの責任でもあるはずだ。被害者たちの声に、植民地支配責任を有する日本人はどうこたえるべきか? それを考えるために、本書を強くすすめる。

*「週刊 本の発見」は毎週木曜日に掲載します。筆者は、大西赤人・渡辺照子・志真秀弘・菊池恵介・佐々木有美ほかです。


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