本文の先頭へ
LNJ Logo 最も重要な問題は富の不公平な分配〜バーニー・サンダースから学ぶこと
Home 検索
 




User Guest
ログイン
情報提供
News Item 0508isikawa
Status: published
View


最も重要な問題は富の不公平な分配〜バーニー・サンダースから学ぶこと


*By Max Goldberg from USA - Bernie @ ISU, CC BY 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=46845708

 ジャパンユニオン組合ニュース2017年5月号コラム<Focus of News>に下記をアッ プしました。(東部労組・石川源嗣)

■バーニー・サンダースについて■

 バーニー・サンダースは、昨年のアメリカ大統領民主党選挙候補者で、初戦のアイオワ州 の民主党党員集会において、17〜29歳の84%がサンダースを選んだことをきっかけに、「 サンダース旋風」を巻き起こしたことは記憶に新しい。
 おくればせながら、『バーニー・サンダース自伝』(大月書店2016.6)を読んだ。
 いや〜、おもしろかった。
 私はサンダースについても、アメリカについても、ましてやサンダースの地元であるバー モント州や市長をしていたバーリントンについてもよく知らない。知っているのは、リンゴ と蜂蜜の「バーモントカレー」だけだ。

 バーニー・サンダースの略歴は、
1941年ニューヨーク市ブルックリン生まれ
1964年シカゴ大学卒業
1981年から89年まで、バーモント州バーリントン市長
1991年から2007年まで合衆国下院議員
2007年から合衆国上院議員
1979年から2015年まで、政党に属さず無所属。
2015年から民主党員。
2016年アメリカ合衆国大統領選挙候補者
ということになるが、自伝を読むと、ずっと下層労働者のために闘い続けてきたことがよく 分かる。バーリントン市長選以来の熱情的な、地を這う活動は人に感動を与えずにおかない。

 サンダースの立場と主張は昔から一貫していて、明快だ。
 現状認識を次のように繰り返している。
 「この地球上で最も裕福な62人が、世界の人口の半分の下層の人たちである約36億人 の合計と同じくらいの富を所有している。上位1%の所有する富は、ほかの99%の人たち の合計よりも多い。大金持ちは想像を絶するぜいたくを味わっているが、何十億にものぼる 人々は、悲惨な貧困や失業、そして不十分な医療、教育、住宅、飲み水に耐えている。・・・ 実に4700万人近い米国人が、貧困に陥っている。医療保険に入っていない人 は推定で2800万人にのぼり、入っていても不十分な人は数多い。何百万もの 人々が、法外な額の学費ローンに苦しんでいる。たぶん近代史で初めて、いまの 若者世代は親世代よりも低い水準の生活を送るだろう。恐ろしいことに、教育水 準の低い何百万もの米国人が、絶望や麻薬やアルコールに屈して前の世代より寿 命が短くなるだろう」

 なんと今の日本と共通する問題が多いことか。
 そして、「この国が直面している最も重要な問題は、富の不公平な分配。まともな給料が 出る仕事の減少。民主主義の衰退。企業メディアの野放しの権力。医療制度の機能不全。教 育の不備」にあると主張する。

 なぜそうなったのか。サンダースは、「20年前、アメリカの労働者が給与と手当の点で世 界をリードしていたのは、強力な労働組合があったからだ」と総括して、労働者 が立ち上がることがカギだと主張する。
 また、「私は議員生活のほとんど初日から、最低賃金の引き上げに取り組んできた。国民 医療保険制度を提案しつづけてきた」と述べ、「この国の医療をめぐる論争は、治療方法や 予防方法についての論争ではない。経済と階級政治についての論争なのだ。特定の個人や組 織を豊かにすることを主な役割とする、営利主導の医療制度を維持するのか、それとも、す べての人に市民の権利として質の高い医療を提供する、非営利かつ費用対効果の高い制度を つくりだすのか。アメリカの医療制度は、根本的な政治改革と、強力な進歩的運動の成長な しには、実現しないだろう」と闘いの展望を示す。

 さらに、サンダースは学生時代から、人種差別反対運動やベトナム反戦運動、労働運動に 取り組んだし、湾岸戦争、イラク戦争、グレナダ侵攻、パナマ侵攻にも反対をつらぬいた。
 選挙活動において、「私に投票してくれ、何でも解決してあげるから」というものではな い。「私が選ばれたら、あなたのために働くだけでなく、あなたと共に働くつもりだ」と言 う。これは私たちの「労働者自身が立ち上がる」考え方と同じようだ。

 その結果、バーリントン市長だったとき、投票率が2倍近くになり、二大政党に反旗をひ るがえして当選した、全国でただ一人の市長となった。そしてサンダースは、州規模の選挙 のすべてに60%以上の得票率で勝利、最終的に得票率は70%を上回った。
 アメリカの哲学者、言語学者であるノーム・チョムスキーは、サンダースは決して急進派 ではなく、「ニューディール的民主党員」なのだと、的確、妥当な評価を行っている。とい うのは、ルーズベルトが提案したほとんどが「社会主義的」と呼ばれたし、「最低賃金」と いう考え方は、市場への過激な介入とみなされ、「社会主義的」と言われたことなどによる と考えられる。本人は「民主的社会主義者」と自称している。

 私たちがサンダースから学ぶことは多い。
 労働組合でも、選挙でも固有の運動法則があり、勝利するためにはそれに精通し、自在に 活用できるようにしなければならない。サンダースの運動は私たちの活動のあり方に見直し を迫るとともに、叱咤激励を与えるものとなるだろう。
 また、運動を持続することの大事さ、「時間」の要素を戦略に組み込むことを教える。

 この本をまだ読んでない方、とくに地域での労働者運動に関心のある方にとっては、この 本はきわめて有用ではなかろうか。
 サンダースが「私のヒーロー」というアメリカ労働組合運動・社会運動の巨人、ユージン・ デブスに注目する。彼については稿を改めたい。

『バーニー・サンダース自伝』(大月書店・2300円+税) *写真は同ホームページより


Created by staff01. Last modified on 2017-05-08 22:03:03 Copyright: Default

このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について