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むちゃくちゃ面白い韓国ドラマ「錐」〜労働組合を正面から取りあげる

     安田幸弘

韓国で今、「錐」というテレビドラマが話題になっています。 韓国のドラマは見たことがないという人も多いかもしれませんが、韓国で今、労 働組合を正面から題材にしたテレビドラマとして話題になっています。

「錐」は最初、インターネットでコミックとして公開されましたが、コミックと しては異色の労働組合や労働問題を扱った作品として、韓国の労組関係者には ちょっとした話題になっていました。コミックとはいえ内容は本格的で、「労働 組合とはどのようなものか」、「団体交渉とは何か」、「労働法について」、 「就業規則について」、「労働者の権利について」など、毎回、基本的かつ重要 な概念を紹介し、「マンガで労働運動を学ぶ時代になった」と注目されていました。 このコミックをケーブル局のJTBCがドラマ化したのが「錐」です。JTBCと言えば 「無労組経営」で有名なサムスン資本のテレビ局、正直、最初はあまり期待して いませんでした。 しかし先日、韓国の活動家から「結構面白い」と言われてインターネットでみつ けて見てみたところ、完全に最初の期待(?)は裏切られました。むちゃくちゃ面 白いです。話題になっているとはいえケーブル局ということもあって、視聴率的 には1%台だそうですが、労働運動にかかわる人たちにもかなり見られているとか。

舞台は外資系大規模スーパーで、ドラマの中では「プルミ」という名前がつけら れていますが韓国のカルフ/ホームエバーがモデルだと言われています。ホーム エバーといえば、「外泊」や「明日へ!」のモデルにもなった例の大規模ディス カウントストアです。この会社で起きた2003年の小さなリストラから話は始まり ます。

会社の人事に疑問を持つ管理職の主人公と、筋金入りの労働活動家で現在は労働 相談所の所長をしているもう一人の主人公が出会い、ストーリーが展開されてい くのですが、ドラマを見ていると労働者にはどんな権利があるのか、なぜ会社は 勝手に解雇できないのか、会社はどんな方法で不当労働行為を正当化しようとす るか、それに対して労働組合をどのようにして組織し、運営していくか、困難な 部分は何か、会社はどのようにして組合活動を妨害するかといった具体的なエピ ソードを通じて自然に労働者の権利について、組合としての戦い方の基本的な知 識も身につくという仕掛けです。 もちろん会社側と労働者側の対立やかけひき、勝利と挫折、それにからむさまざ まな人間模様など、社会派ドラマとしても楽しめます。

韓国の放送局は、李明博政権の時期に右派に掌握され、特に地上波TVは惨憺たる ありさまですが、李明博政権が資本の利益のために創設したケーブル総合局、そ れもサムスン系列の局がこんなハードな内容の労組の広報ドラマのような番組を 作るとは思いませんでした。 映画の「明日へ!」もなかなか感動的でしたが、労働組合活動のリアルな日常と いう側面では物足りない部分もありました。もちろん、「錐」もTVドラマですか らカッコいい部分が強調されるのは当然、しかし労働運動に少しでもかかわって いる人にとっては痛快でもあります。 日本のドラマにも労基署の監督官を主人公にした作品がありましたが、主人公が 監督官ではなく労組のオルグというあたりが楽しい。

ドラマの日本語版も、おそらくいずれ出るでしょう。果たして日本の若い人たち はこのドラマをどう見るのか、興味があるところです。

*「ハンギョレ新聞」日本語版記事


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