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LNJ Logo 根津公子の都教委傍聴記(7.23) : 中学校歴史・公民ともに育鵬社版を採択
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●根津公子の都教委傍聴記(7月23日)

中学校歴史・公民ともに育鵬社版を採択

 議案は都立中学校(中学校・中等教育学校10校、特別支援学校21校)の教科書採択について、報告が都立高校における規範意識の育成について。非公開議案は教員の懲戒処分について。

 教科書採択が議案だったので、傍聴希望者は38名。18名が傍聴できなかった。「モニターをつけて、別室で見られるようにしてほしい」と何人かが訴えたが、難しいことではないだろうに、担当者は無視をした。

今回もまた、前回の定例会の終わりに予告した「10時開始」をホームページ上で突如、「9時15分開始」に変更しての開始だった。傍聴者を歓迎しない、そして何と無責任な仕事ぶりか。

定刻を過ぎたというのに、私たちは入室できずに廊下で待たされた。と、920分、木村委員があわてて部屋に入って行った。木村委員が席に着くや、私たちに入室指示が出された。いつもながら、木村委員は遅刻を詫びず、司会役の中井教育長も開始を5分遅らせたことについての詫びや説明をしなかった。この人たち、身内にはなんと甘いことか。

≪教科書採択について≫

「検定済み教科書発行者一覧の中から無記名投票により、学校ごと、教科ごとに教科書を採択するということでお願いしたい」と、指導部長より採択の方法について提案がされた。都教委が各学校の教育目標に照らして作成し、選定審議会が承認した「教科書採択資料」(学校ごと、教科ごと。以下、「資料」という)が事前に配布され、それを参考にして各教育委員は投票をしたようだ。

無記名投票については、「都教委の考え、判断によるのであって、それを定める法令はない」とのこと(乙武委員の質問への回答)。

「資料」には、記述内容についての調査項目ごとに、その教科書が取り上げた箇所数を数え、数を記すとともに、数の最も多い発行者には☆印を4つ、数が少なくなるにしたがって☆を少なくし4段階で表示している(下欄は立川国際中等学校の歴史の調査結果の一部。箇所数は、2段目から略した)。「☆印の表記は、教科書の優劣を判断したものではなく」とただし書きがあるが、投票結果を見ると、教育委員が☆印を見て投票したことは歴然としている(教育委員が膨大な時間を使って、全ての教科書を読んだとも考えにくい)。

 

 

東書

教出

清水

帝国

日文

自由社

育鵬社

学び舎

日本の文化・伝統を扱っている箇所数

422

425

☆☆☆

427

☆☆☆

482

☆☆☆☆

517

419

☆☆☆

467

398

歴史上の人物を取り上げている箇所数

☆☆

☆☆

☆☆

☆☆☆☆

☆☆☆☆

国際関係・文化交流を取り上げている箇所数

☆☆☆

☆☆☆☆

☆☆☆

☆☆☆☆

☆☆☆

☆☆☆☆

神話や伝承を知り、…資料数

☆☆

☆☆

☆☆☆☆

 

立川国際中等教育学校の歴史の☆の数は、1位が育鵬社の27個、2位が東書の21個。そして、投票結果は、「育鵬社4:東書2」。歴史、公民についてはすべての学校で、☆の数が一番多かったのが育鵬社、そして、投票結果はすべての中学校で「育鵬社4」だった。

「資料」をつくって投票で決める、というと、公平・公正性が担保されているように錯覚しそうだが、とんでもない。見てわかるように、「資料」は都教委の価値観からつくったもの。従って、歴史、公民では育鵬社版に☆印が多くなるのは必然だ。

 高校の教科書採択の場合、各学校(実質は教科担当者)が選定したものが都教委に上がり、それを参考にして教育委員が採択をする(一方で、都教委は実教出版日本史を各学校に選定させない介入をしているが)。しかし、中学校については、都教委は各学校の意向を聞くことをしない。ここが一番の問題だ。授業を担当する教科担当者よりも教育委員の方がより良い採択ができるはずはないだろう。

 さらに、投票前に、教育委員が各教科書の記述内容について議論や質問をしないことも大いに問題だ。市教委段階では、議論や質問がなされるのに、都教委ではどうしてそれができないのか。

 こうした採択方法の弊害について、教育委員はどうして声をあげないのか。責任と誇りを持って仕事を遂行する意思があるならば、声をあげるだろうと思う。権力的な教育委員も、見えない何かによって制御され、保身に走っている。

 その結果が、来年度から4年間、都立中学校の生徒たちが歴史の事実や憲法が保障する権利をまともに学べないことになる。都教委は2001年に扶桑社の歴史教科書を採択し、その後も「つくる会」系の教科書を採択し続けてきた。現在は、中学校・中等教育学校では歴史・公民ともに育鵬社版を、特別支援学校では歴史が育鵬社版、公民は自由社版を使わされている。 

 補足:4年前の採択では、育鵬社に投票した委員が5人、他の発行者への投票が1人だった。

≪都立高校における規範意識の育成について≫

 生活指導上の課題を解決するため、都立高校改革推進計画(第1次)の中で、「道徳教育の推進」「規範意識の育成」を策定(2012年)し、来年度より全都立高で道徳では新教科「人間と社会」を開設、規範意識では都教委が「生活指導統一基準」を今年度中に周知させ、各学校は「身に付けさせる規律・規範の全体計画」と「特別指導の指導計画」を作成し、来年度より組織的な生活指導を実施するというもの。「指導の範ちゅうを超えた場合は学校教育法施行規則第26条による懲戒処分を検討する」という。神戸の校門圧死事件が思い浮かぶ。

 この経過についてはこれまでも何度も報告がされてきたが、こんなことで生活指導上の課題が解決できるわけがない。管理・処分で人が育たないのは、大人も子どもも同じこと。この人たちに教育を語る資格はない。

 


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