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LNJ Logo 「みんなでやり返そう!」 被逮捕者らが怒りの証言
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News Item 111105handanatu
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11月5日、東京・水道橋の「スペースたんぽぽ」で反弾圧集会が開かれ、80名を超える参加者で会場はいっぱいになった。主催は「差別・排外主義にNO! 9・23行動」救援会。

「3・11」の大震災以降、収束の見通しが立たない原発事故や、避難先で不安な生活を送る人々が声を上げ、「反原発」「脱原発」運動が、これまでにない大きな盛りあがりを見せている。 とりわけ、デモに参加するのは初めてという若者や、子供を持つ親が街頭に出て、主体的な意思表示を始めている。

こうした動きに対し、警察の規制・介入もエスカレートしている。 9月11日、新宿での反原発デモでは、12名もの参加者が「公妨」などで手当たりしだいに逮捕された。

同23日には、在日外国人らが多く働く新宿歌舞伎町周辺を歩くコースで、「差別・排外主義反対」を訴えるデモ(「9・23行動」)が行なわれたが、ここでも機動隊の暴力と公安刑事の指揮で、一名が隊列から無理やり引き離され、連行された。本集会はこのデモで逮捕されたAさんの支援者らが呼びかけた。

※上の写真と本文は関係がありません

■し烈な攻防の末に

集会ではAさんはじめ逮捕された当事者らが発言し、獄中での生活を生々しく語った。 「デモが大好き。とても楽しい」と語るBさんは、9月11日、新宿駅南口で警備陣がしかけた混乱のなかで逮捕された。

この日は警察の介入が特に激しかった。出発点である新宿中央公園を出た直後から、歩道と車道、ガードレールを挟んだ応酬が続いた。 逃げては追いかけられ、追いかけられては逃げる攻防の末に、腰のベルトをつかまれ隊列から引き離された。「人目のつかないところに連れていけ」という指示が耳元で聞こえた。

■拷問を平気でやる人たち

反貧困運動や「素人の乱」にかかわっていたCさんは、8月6日の反原発デモの中にいた。「原発を止める最後のチャンスだ」と、楽器を持って参加した。その楽器がたまたま近くにいた警官に当たり、逮捕された。黙秘権や弁護士選任については、警察から何も告げられなかったという。

Cさんはむしろ、弁解録取書に自分のしたことを正確に書かせるよう働きかけた。勾留中に38度近い高熱を出したが、救急病院内では手錠も隠さずに連れまわされたあげく、診察まで一時間近くも待たされた。

明るい留置場では眠れないために睡眠薬を投与された。押収されたメガネは、釈放時まで返されなかった。 拘束中に聞かされたのは、「デモや東京マラソンは迷惑だ」「なぜデモに参加したのか。どこかの組織に入っているのか」など、逮捕理由とは直接関係のない話ばかりだった。「取り調べの警察官は、平気で拷問をやる人たちだ」と憤る。

■たった一人の行動で

Dさんは4月6日、味の素スタジアムに被災者の慰問に訪れた皇太子夫妻の車列に、歩道から抗議をした。直後に10人ほどの制服警官に取り囲まれ、そのまま署に連行された。逃げようと思えば逃げられたが、逮捕の口実になると判断した。 取調室で初めて「公妨での現行犯逮捕」と宣告された。現地では任意同行とも何とも言われなかった。

誰にも知らせていない、たった一人の行動だった。 救援連絡センターへの通報で、自分はいくらか気が楽になった。だが、活動家ではない一般の人たちがこんな目にあったら、いったいどうなるのか。Dさんは静かに問いかけた。 「どれほどの人が不当な拘束で泣き寝入りをしているか。それを思うと……」。うつむいて目を赤くし、言葉を詰まらせた。

■警察署への抗議で逮捕

仲間の逮捕に抗議する行動で逮捕された者もいる。8月6日の「原発やめろデモ」。仲間を奪還すべく訪れた築地署の前で、Eさんは突然署内に引きずり込まれた。阻止線として置かれたコーンの上。数センチの指先が、警官の腹を突いたというのだ。

「建侵」「公妨」――敵陣では激しく暴行された。ろっ骨骨折、裂傷、擦過傷。反原発運動のベテランは、やがて保護独居房に移された。箸のない食事、紙のないトイレ。「房内はこの音だけ。想像できますか」と天井を指さすEさん。空調の作動音だけが聞こえる、100%警察の都合で造られた非人間的な空間だった。

救援連絡センターの山中幸男さんは、「自分も古い世代になったが、不当逮捕・勾留の新しい情報や経験を蓄積、共有し、今後の闘いに生かしていきたい」と語り、「司法改革」の名の下に進む規制緩和の流れの中で、弾圧対策は国選ではなく、私選弁護士で闘う意義を強調した。

大口昭彦弁護士は、このかんの警察の動きを「予防拘禁・保安処分」だと分析。徹底した微罪逮捕―隔離政策として、犯罪でないことを犯罪にするやりかたを糾弾した。 この攻撃には、ビデオや写真を意識的に活用して、客観的な証拠を保全することが大切だと語った。 そのうえで、以下の重要な問題提起をした。

■完全黙秘を貫くべきか

ひとつは、逮捕後に受ける「取り調べ」の是非についてだ。われわれは「取り調べは当然」との感覚があるが、はたしてそうなのか。捜査は任意が原則だ。刑事訴訟法での論点でもあるが、取り調べは受ける義務がない。その時々の力関係で決まっている。

もうひとつは、「黙秘」について。取り調べでは自分に有利な、無実の材料を積極的に供述し、早期保釈を実現すべきではないか。ただ黙っているだけでいいのか、という問題だ。センターでは「完全黙秘」「統一公判」の原則を維持している。それには根拠がある。

逮捕後の態度について、しっかりとした確信をつかむため、いま一度議論する必要がある。「今後も弾圧の強化が予想される。気持ちを引き締めて闘いたい」と大口さんは発言を締めくくった。

■2年前の団交理由に4名を逮捕

集会には、2年前の団交を口実に10月25日、突然逮捕された「がくろう神奈川」のFさんが釈放されて参加した。 家宅捜索中、職場への電話が許されなかった。弁護士選任では、センターかそれとも組合への連絡か迷ったという。 「小さい組合だから支援に動けるのか」。獄中から心配した。それでも大勢の人が集まった。ある全国紙は保釈後に「お詫び記事」を掲載し、「さんづけ」に変えた。

公安三課が動く不気味な逮捕劇。組合員4人全員が不起訴を勝ち取るまで予断を許さない。「みなさんと一緒に社会運動をやり続けたい。応援してください」。Fさんの訴えに、会場は大きな拍手で応えた。

作家の平井玄さん(上の写真)が発言した。 12人の大量逮捕は、自身の生活の拠点・新宿での出来事だ。「これは尋常ではない」――喧噪の東口広場。友人らと話し合い、「デモと広場の自由のための共同声明」を発した。

呼びかけ人と賛同人というこれまでの主従関係を超えた、全員参加のスタイルにこだわったという。文中の「国民」という言葉も検討した。無節操な使用を慎みながら、法的保護の側面も意識した両者のアンサンブルだと説明する。 この「国民」という表現については、参加者との質疑応答でも議論になった。最後に、関係する各方面の運動団体から、熱いアピールがあった。

運動の盛り上がりと権力の弾圧。それはけっして偶然でもなく、ましてや当然ではない。理不尽な攻撃をはね返すのは、一人ひとりの行動と圧倒的な世論だ。

不当な弾圧を許さず、仲間を守りぬこう。 原発はいらない。人類と核は共存できない。差別と排外主義もごめんだ。私たちは屈しない。「みんなでやり返そう」。(Y)


Created by Tyok. Last modified on 2011-11-13 20:35:54 Copyright: Default

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