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LNJ Logo 報告 : 高鶴礼子さんのワープア川柳講座
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News Item 0717senryu
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正木@コンチキチンです。

 2010年7月8日、ワープア川柳講座の報告です。
 講師は川柳作家の高鶴礼子さん(写真)。密度の濃い、そして自らの「表現」に対する厳しさを教えられた講座でした。内容の要点をかいつまんで報告します。
 
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「高鶴礼子の川柳辻説法」

1.川柳ってなあに
 17音字の人間諷詠である。17とは文字の数ではなく音韻の数=モーラ(拍)。
 人間を歌うもの、人間がいるものが川柳。その人間とは「私」。「私」がいな
いと川柳ではない。
 では「自分のことばかり描かないといけないのか」−−> そうではない。自分の目で見、心で感じ、自分の頭で考えること。
 「私」という立ち位置で考えることが大切。

 社会詠−−新聞やテレビの後追いになってはいけない。

 川柳は「吐く」。吐くためには飲み込まなければならない。飲み込みが浅けれ
ば浅い句しかできない。深く飲み込むこと。生のままで吐かない。

 心がほどけないと席題のときいい句がこぼれない。

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2.読みながら学ぶ川柳 にんげん描けてますか?
 例句11句を読みながら鑑賞。以下はその一部。

・この子抱く抱かれたかったように抱く    古俣麻子
 少女時代のこと、母への思いも含めて表現している。深く飲んだ句。17音字以
上に膨らむ。

・母だけが泣けない母のお葬式        小林節子
 「みんな泣きました」だけでは17音字から広がらない。「母だけが泣けない」
という視点の採り方が秀逸。

・その人の子どもにあげるカブト虫      近藤ゆかり
 万人に祝福されない類いの恋の句。ドラマのような感情が息づいていて切な
い。「山田さんの子どもにあげるカブト虫」だったらどうか。ドラマがない。そ
んな川柳を「そうですか川柳」と呼ぶ。

・骨拾う約束でしたさっきまで        佐々木 藍
 予定調和を崩す意外性。「下五ではねる」という。

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3.社会を描く、にんげんを描く
 社会詠のポイントは「わがこととして描く」。出来事のうわっつらだけでな
く、本質まで掘り進んで書いてほしい。

・銭にさえなれば人にはならずとも      井上剣花坊
 今日にも通じる句。本質まで掘り下げている。

・先頭を行くなと自衛隊の母         大石鶴子
 母の本質を描いて普遍的。

・ざん壕で読む妹を売る手紙         鶴 彬
 どこで読んでもつらい手紙。「ざん壕で」とすることによって訴求力がさらに
強まった。

・平成七年一月十七日 裂ける        時実新子
 震災が遠い過去になった時点で読んだ人はこの句がわかるだろうか。「辞書を
引かないとわからないような句はダメ」という人がいる。しかし文芸である以
上、辞書を引かないとわからない言葉を使いたいことも出てくる。むしろ読んだ
人に辞書を引かせるくらいの力を持った句を書け。この句にはそういった力がある。

・冬の蝿ここより行き場ないものを      中山秋夫
 「ここより行き場ない」。句想の中心はここにある。それを託しているのが
「冬の蝿」。理屈だけではなく思いを託す具象を見つける。「具象に託す」。

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4.川柳の三つの大事
 吐く−−材料をしっかり飲み込む。よく咀嚼して吐き戻す。
 脱ぐ−−自分をさらけ出す。川柳は本音の文芸。かみしもを着ては人に届かない。
 こぼれる−−心の中の器。その器に溜まったものがあるきっかけでこぼれ始め
る。それが川柳。

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5.気分は川柳作家 本日の宿題
 「父」という題で各自2句投句。
 (投句後休憩)

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6.宿題・席題 披講・講評
◆事前投句の披講
 「私」がいるかどうかをポイントに披講。

・公約を大風呂敷に包み終え         笑い茸
 もっとずばっと言えばいい。 → 公約ってなに 大風呂敷のことですよ

・菓子袋小さく開けるダイエット       斗周
 「そうですか川柳」で終わっている。玄関口で書いている。もっとヅカヅカっ
と入ってほしい。

・タクアンを超えてキムチのうれし泣き    わかち愛
 タクアンで日本を、キムチで韓国を表す「換喩」。練度(完成度)を高めるテ
クニック。
 「何かを超えてうれし泣き」は自分が自分を超えるときにのみ許される表現。
誤解を生じやすい。

・サッカーの日の丸痛しオモニらは      ユニオニスト
 立ち位置間違っていないが、「サッカーの」で軽くなってしまった。 → 強
占百年日の丸痛しオモニらは

・年金がほしいときには資格なし       真公
 お説ごもっとも。「ごもっとも川柳」という。理屈は粋に。「具象に託す」を
試みてほしい。

《準入選》
☆うつ気分抱えてニュースさらにうつ     白眞弓
☆オレの金借りて銀行頭が高い        斗周
《特選》
★悪友が逝って失う飲み相手         やせ蛙
 空間、時間が込められたよい句。

    *   *   *
◆席題の披講
・息子よりアルバムの中の父若く       陶酔
 中八を改善したい。「アルバム」は「写真」としてもよいはず。
 → 息子より若い写真の中の父  リズムがピシッと入ると句が締まる。

・亡き母は人を愛せぬ父愛しきる       冷深酒
 「脱ぐ」ができる人。川柳に向いている。「を」を取ってリズムを整える。中
八だがこの内容の濃さで蹴飛ばせる。
 → 亡き母は人愛せぬ父愛しきる

・ライオンのように威厳もなくおれり     笑い茸
 「父」を入れて、倒置法で情感を出す。
 → ライオンのように威厳もなく父は

・父の背に唐芋の重さ載せて引く       わかち愛
 中八を修正。「芋の重さを載せ」という発想が良い。
 → 父の背に芋の重さを載せて引く

・何ごとも言わずに逝った父の謎       やせ蛙
 「謎」と答えを出しているところが惜しい。具象に託すとよくなる。例、「何
ごとも言わずに逝った父の靴」など。

・ホームにて父娘の会話遠く聞き       陶酔
 連用形より終止形にした方が余韻が立つ。
 → ホームにて父娘の会話遠く聞く

・父もそうだったとまたも聞かされる     斗周
 もうちょっと情感を立てたい。逆にして、 → そうだった父もとまたも聞か
される
 これで情感がぐっと増す。

・あまりにも重すぎた父に一家苦しむ     冷深酒
 「一家苦しむ」と説明で書かないで、具象に託すとよい → 「*****あ
まりにも父重すぎた」 「*****」に入る具象を見つけてほしい。

・もうひとつの明治もあったDNA       乱鬼龍
 父の題と受け取ってもらえないのが惜しい。「題に寄りかかる」ことなく、
「父」を入れたい。句意は変わるが、例えば「もうひとつの明治を乗せて父の
息」など。

・もう一度母と会いたいと泣く父の思い出   蛙子
 「思い出」まで言ったため「一句一訴」にならなかった。
 → もう一度母と会いたい父が泣く

以下添削なし
・父の夢ならずに済んだ星飛雄馬       花奴
 固有名詞が上手に使ってある。
・男だろそれで決まった父の声        笛P助
 「男だろ」がよかった。
・気遣ったたまの電話で「ちゃんとせぇ!」  花奴
 「ちゃんとせぇ!」がよかった。
・電話取る自分の声に父を聞く        斗周
 作者の匂いがする。発見あり。
・父なのに負けられないぞ腕相撲       笛P助
 自然体がいい。
・思い出の耳奥に残るのんき節        乱鬼龍
 「のんき節」がいい味わい。
・順番で父と呼ばれる歳になり        やせ蛙
 「順番だなぁ」というところが味わい。
・全能の父の国にて血の絶えぬ        白眞弓
・晩年の父には見えぬもの見えて       ユニオニスト
 とても情感あり。叙情が伝わる。いい雅号をつけましょう。
・似てきたと言われて父の思い知り      一志
 心の動きがよく描けている。

《特選》
★子の鏡追っては破れ父の像         真公
 言葉がよく、センスを感じる。
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 その他、高鶴さんの忠告・警句
・定型を捨てることはリズムを捨てること。リズムは大きな武器になる。リズム
を捨てるときにはそれに代わる「内在律」が必要。
・「一句一訴」。ひとつの句にひとつのテーマ。ごった煮厳禁。
・説明書きありは「負け」。投句の際に、言葉の説明などは不要。

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《報告者感想》
 川柳とは何かというところから始まって、しっかりとした「私」の立ち位置で
考えるという高鶴さんの講座は、安穏川柳しか吐いていなかった私など、バシッ
と横つらをひっぱたかれたように感じる、キビシいものでした。
 どうやら他の人も似たような感想を抱いたらしく、休憩中の雑談(先生のいな
いところ)で、「オレはもう川柳ヤメだよ〜」などと、川柳ではなく弱音を吐く
人もいました。
 しかし、一連の川柳のポイントを学び、「父」という席題の句を吐く段になる
と、事前投句とはガラッと変わって、秀句続出。教え方もうまかったが生徒の吸
収力もすごいなぁと感じさせられました。
 私自身は、果たして今後「そうですか川柳」から脱することができるだろうか
と、また迷いが生じてきました。

 この報告はずいぶんとはしょっていますので、わかりにくいところがあるかも
しれません。
 ぜひいろいろなご意見をお寄せください。ディスカッションしていきましょ
う。また、自分でも川柳をやってみようという気になってみてください。面白
く、厳しく、楽しく、「心がほどけ」ます。

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 正木斗周

Created by staff01. Last modified on 2010-07-17 12:35:36 Copyright: Default

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