本文の先頭へ
LNJ Logo 報告:「逆ギレ」シンポジウムに190人
Home 検索
 


低賃金や長時間労働などの無権利状態に怒りの声をあげ、労働者として、労働組合として当然の要求をしたがゆえに、露骨な報復を受ける。こんな「逆ギレ」とも呼べる会社側の攻撃が相次いでいる。

7月5日、東京・お茶の水の中央大学駿河台記念館で開かれたシンポジウムには、非正規労働者や組合員など190人が集い、当事者たちの告発に熱心に耳を傾けた。集会名称は、「声をあげたら<逆ギレ>ばっかり—――非正規・ユニオン7・5シンポジウム」(主催・7・5シンポを呼びかける会)。雑誌「週刊金曜日」が協賛した。

非正規組合への執拗な恫喝、威嚇

KDDI国際電話センターで契約社員として働く見留洋子さん(写真)は、英語をはじめ、韓国語、中国語、スペイン語、ポルトガル語など、多彩な語学力と会話力で世界をつなぐ、ベテランのオペレーターだ。だがこうした高度な専門能力を駆使する業務への報酬は、時給1350円と驚くほど低い。年収は手取り額で160万円ほどだ。

そのうえ会社側は契約期間を短縮したり、休日手当てを半額にするなどと通告。見留さんらは2006年11月、「KDDIエボルバユニオン」を結成。右肩上がりの売り上げを続けるエボルバと交渉を開始した。

当時新任だったグループリーダーYは、委員長の見留さんら役員を喫茶店に呼び出し、「派遣ユニオン関根書記長に頼るな」などと恫喝を加え、介入を図ってきた。見留さんが衆議院院内集会で闘いの報告をすると、今度は「懲戒解雇」をちらつかせてきた。集会に会社側のスパイが潜入していたのだ。

業務時間中に別室に呼び出し、長時間拘束する。「組合に入ると恐い目に遭う」と非組合員を怯えさせる見せしめである。熟練社員としての勤務考課も、マイナス評価になった。明らかな報復だった。組合は都労委に斡旋を求めて闘っている。

同僚たちに思いをよせて

株式会社ゼンショーが経営する「すき家」で働く首都圏青年ユニオンの組合員・福岡さん(写真)が、横断幕とともに登壇した。残業代未払い問題で悪名を馳せたゼンショーは、なんと「詐欺罪」と「窃盗罪」で組合員を刑事告訴した。

前者は、勤怠報告の記載不備であり、後者は売り物にならないご飯でおにぎりを6個作り、「まかない」として3人で食べたというもの。一定時間勤務すれば、商品である牛丼を食事にすることは認められているが、従業員たちはあえて米のみを食べた。

取調べに当たった検事は、両方の事例とも「結果的にはコストの削減にあたり、利益すら出している」と苦笑し、嫌疑不十分の扱いとした。

こうした職場におけるささやかなミスや習慣の類は本来、管理監督者がその場で指摘すれば済むことである。だがそうした指導をせず、カメラで24時間労働者の動きを監視し、刑事事件として訴える。なんとも卑劣なやり方ではないか。

「私たち組合員はともかく、一般の従業員まで会社に言いくるめられて退職させられている。いったいどうすればいいのかと、その人たちは闘い方を知らないのです」――明るく元気に話し始めた福岡さんだが、やがて涙で言葉を詰まらせた。参加者は激励の大きな拍手を送った。

会社側弁護士のズサンな主張

「このたびめでたく被告の立場で発言します。本当は歌って踊りたいのですが、それはまたの機会にします」――会場に笑いを誘ったのは、「ネットワークユニオン東京」の寺尾さん。同労組は、「東京管理職ユニオン」を母体に生まれた。約130名の組合員を抱える個人加盟のユニオンだ。

寺尾さんが「逆ギレ・トンデモ裁判」と紹介したのは、組合員であるリン・チョンモさん(台湾籍)の不当解雇事件。東京・台東区の建築設計会社「(株)アルファデザインコンサルタンツ」に雇用されながら、中国で雑用や通訳として働いていたリンさんは、「経歴詐称」を理由に、一方的に解雇された。リンさんは帰国し同労組に相談、加入した。

団交によって、同社には就業規則がなく、「経歴詐称」とは、「リンさんができると言った仕事をしなかった」一件を指していることが判明。事実は、突然の設計命令に時間的余裕を求めただけのこと。会社側は都労委の斡旋や交渉を拒否するだけではなく、あろうことか組合を相手に損害賠償を求めてきた。

リンさんの行為を「広義の経歴詐称」にこじつけ、円満解決を求める組合の訴えを「金銭目的」と中傷する原告代理人の主張は、実に乱暴で、組合活動への報復としか思えない代物だ。

「小さい組合でも引くことはできない。カネの力で立場の弱い労働者を、ましてや外国人労働者を訴えるなど許されない」――寺尾さんは力を込め、「不勉強弁護士の顔を、ぜひ法廷に見にきてください」と、東京地裁第一回口頭弁論(7月14日)への結集を訴えた。

被取材者を個人攻撃

「週刊金曜日」の取材に応じ、それが記事になったことで、事実上の解雇を言い渡された塩田卓嗣さん(東京東部労組・阪急トラベルサポート支部委員長)。問題の文章は、添乗員派遣業一般について書かれたに過ぎない。そもそも会社側は、「金曜日」やライターには一切抗議をしていないのだから、明らかに塩田さんに対する個人攻撃であり、組合の弱体化をねらったものだ。

「今は失業保険を受けているが、この先どうやって生活し、闘っていくか。組合を作るなんて生意気だ、と会社ににらまれるから声をあげない人が大勢いる。だからこれからもがんばっていく」。塩田さんは淡々と決意を表明した。

「全国一般東京南部・ベグント」は、ベルリッツ・ジャパンの講師で作る労働組合。劣悪な労働条件にストライキで闘い続けてきた。会社側は「違法スト」への損倍請求訴訟を、組合役員らに対して起こした。通訳を介して発言したヘクターさん(写真)は、「これは語学業界全体の問題だ。泣き寝入りはしない。私たちは闘い続ける」とアピールした。

労働環境めぐる活発な討論

第2部はパネルディスカッション。パネリストは、堀内光子さん(元ILO駐日代表)、圷(あくつ)由美子さん(弁護士)、豊秀一さん(日本マスコミ文化情報労組会議・議長)。司会を棗(なつめ)一郎弁護士が務めた。

 堀内さんは、ILO憲章にある「結社の自由」の重要性について話し、日本の企業内組合は内向的だと批判した。女性の過半数が非正規に置かれている現状を踏まえながら、企業の枠を超えた労働者の組織化に言及。派遣村の成功のように、メディアの力を利用すること。地道な活動を続け、正規社員の意識を変えること。「非正規労働者は、今や多数派だ」と自信を持つことが大切だと語った。

豊さんは、宮古毎日新聞の非正規組合の闘いを紹介し、正社員組合の課題について提起した。「声なき声」を伝えるのがジャーナリズムの役割であり、新聞労組のあり方についても問われていると論じた。

圷さんは、前述の「すき家」の事件について法的側面から分析。詐欺罪や窃盗罪が成立する要件を確認し、その違法性について検証した。また過去の労働争議が刑事事件に発展したケースを列挙。「疑いようのない事実を主張していれば、何も萎縮する必要はない」としながらも、「組合つぶし」が目的の公安捜査については、労働者に細心の注意を促した。

「私は、『ピンチはチャンス』という言葉が好きだ。みなさんの闘いを、会社側は脅威と感じている。だからチャンスだ。今こそ結束力を強めて活動を広げていこう。弁護士をもっともっと活用してほしい」と訴えた。

発言を同時通訳でも伝えた集会は、最後まで集中力を維持し、国境を越えた一体感に包まれていた。司会を担当したジャーナリストの北健一さんは、「情報をシェアすると同時に、ファイティングスピリッツも共有していきたい」と呼びかけた。(報道部・Y)


Created by staff01. Last modified on 2009-07-07 22:58:22 Copyright: Default

このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について