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LNJ Logo 木下昌明の映画批評「あきらめない―続・君が代不起立」
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●映画『あきらめない―続・君が代不起立』
黙って40秒間座っていただけで教師はなぜ処分されるのか

 かつて本誌(『サンデー毎日』)で、辺見庸氏が「君が代」の替え歌として「我が代」を提案したことがある。「君(天皇)」を「我」にすれば自分をたたえる歌になり、かえって笑えて楽しくなるからだ。これは「国旗国歌法」の施行以来、上からの押し付けに反対して処分される学校の先生が相次いでいる事態を懸念してのことだった。

 特に、愛国教育をしいる石原東京都知事のもと、都教育委員会が入学式や卒業式で監視し、「日の丸」に向かって起立して「君が代」を歌わない教員に見せしめの懲戒処分を科すようになってからは、物の言えない寒々した状況が支配するようになった。そんななかでも「子どもを戦場に送るな」とたたかう教員たちがいた。

 このせめぎあいの最前線を撮った佐々木有美、松原明の『君が代不起立』という優れたドキュメンタリーがある。停職処分を受けてなお校門でプラカードを掲げて立ち続けた一人の女性教員に焦点を当てたもので、彼女を励ます生徒や父母との交流はすがすがしく、胸を打った。

 あれから2年、続編の『あきらめない』が完成した。あの「不起立」を貫く教員たちはどうしただろうか? 彼らはさらに重い処分を受け、たたかう教員は激減していた。かの女性教員は1カ月→3カ月→6カ月と次々に停職処分をうけて、学校も遠くへ(転々と)とばされて、次はいよいよ「免職」の瀬戸際に立たされていた。

 映画は、彼女と少数の支援者のささやかな(しかし必死な)抵抗の日々を中心に追っている。彼女と支援者と、都教委職員との攻防が見どころとなっている。都庁を訪れて切々と訴える支援者を前に、職員たちは魂のない能面のような顔で立っている(彼らもまた人事考課に怯えている!)。両者の関係を通して日本の労働運動の弱体化した姿も見えてくる。

 ラスト近く、「君が代」の歌と伴奏が流れるなか、黒い画面が40秒間続くシーンが印象深い。卒業式の「国歌斉唱」を座ったまま自分でテープ録音したもので、そこに彼女の「抵抗」の意思表示が読み取れるからだ。 (木下昌明)

*映画「あきらめない―続・君が代不起立」は、11月26日夜6時30分から東京・なかのゼロ小ホールで上映会開催  問い合わせ TEL 03-3530-8588 なおこの作品はことしの「平和協同ジャーナリスト基金賞奨励賞」に選ばれた。
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『サンデー毎日』 08年11月30日号所収


Created by staff01. Last modified on 2008-11-21 23:19:40 Copyright: Default


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