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非正規職法改悪は労働の全面的不安定化

[連続寄稿]朴槿恵政権の非正規職政策批判(1)

オム・ジンニョン(全国不安定労働撤廃連帯事務局長) 2014.12.08 16:41

[編集者注]朴槿恵政権の非正規職総合対策はまだ発表されていないが、 派遣拡大に対する政府の方向性は何回も政策として発表されており、 期間制法についても改悪が予想される。 こうした非正規職対策は正規職に対する過度な保護を口にして労働全体を不安定化することを意図している。 また、韓国社会の雇用構造全体を「完全な不安定性」が基礎になるように変えていくことを目標にしている。 全国不安定労働撤廃連帯は、非正規職法改悪の流れに関する問題と対応のために連続寄稿する。

[順序]

  1. 朴槿恵政権の非正規職政策批判
  2. 期間制法が改悪されればどうなるのか?
  3. 派遣法が改悪されればどうなるのか?
  4. 正規職が悪くなれば非正規職が良くなるか?

雇用率を押し出した雇用不安の隠蔽と歪曲、その開始は非正規職法制定から

2012年12月、数え切れない偽りがまかり通った。 そして今われわれは安全も、幸せも、明日が見えない生活を送っている。 政府は公共部門の非正規職をなくすといったが、非正規職規模は減らなかった。 単に数値の問題ではない。 政府の無期契約転換指針はむしろ解雇をあおり、間接雇用を量産している。 雇用を高めるために政府が作っている時間制労働は、労働者の権利が時間単位に分割されるように偽装し、権利を奪っている。 そうして押し上げた雇用率の数値のほとんどは新規雇用の創出ではなく、短期雇用と失業の反復から現れる効果でしかない。

雇用率70%達成という政策は、雇用の不安定の問題を雇用率の問題に変身させ、「不安定」という要素を隠蔽した。 期間制雇用や間接雇用などによる雇用不安の問題が非正規職問題の主な争点から抜け落ちているのに、 事実上、日常的な雇用の移動と変動、断絶を味わう多くの労働者はこれを当然のこととして受け入れなければならない。 雇用の安定を「権利」として認識できない状態を作り、雇用不安を隠しているため、 正規職という概念が「無期契約職」に変わり、正規職労働は非正規職労働の搾取の上に存在する特権の概念に発展した。 朴槿恵政権の政策が作り出した歪曲だ。

ところがこれは現政権だけの作品ではない。 その基盤がどう形成されたのか、今一度2006年にかっぱらい通過した期間制法と、 1998年に制定され2006年に期間制法と共にまた改悪を繰り返した派遣法に言及せざるをえない。 非正規職を制度化して無限に拡大する基盤を形成した法だからだ。 また非正規職問題に対する代案を議論しても、非正規職活用を正常と見なす悪法の廃止がなければ、 きちんと問題に対処できる社会的基準を確立できないからだ。

悪法の本質は労働者「権利」の存在そのものを隠すこと

最近、非正規職法の性格をはっきり見せたのが映画「カート」のニューコア-イーランド労働者大量解雇だ。 法が施行されるとすぐ、イーランド資本は外注化を理由として大量整理解雇を始めたが、 その過程で期間制労働者の契約期間はますます短くなり、0か月契約まで登場した。 そうして労働者たちは大規模にクビ切りされ、一気に期間制法がその威容を表わした。 期間制として契約を更新し続けて使ってきたこと、 それで事実上、正規職も同じようにその事業場の常時労働力を構成していたことも、 販売、レジなどの業務がその事業に必ず必要な核心業務であることも、 どんなこととも無関係に契約期間が終われば労働者を即クビにできること。 それが期間制法だった。

また期間制法制定と一緒に拡大改悪された派遣法は、1998年の制定以後、すでに多くの間接雇用を量産する悪法であることが証明されている。 社内下請でも多くの間接雇用労働者が不法派遣を争っているが、合法的な請負か、不法な派遣かを分ける基準は、時には明らかだが、時には非常に不明に感じられる。 労働者が要求するように実質的に労働を支配して利益をあげる使用者を法律上の使用者と見れば不法派遣であるのは明らかだ。 ところが会社の使用者を中心に実質的に事業体の性格があるのか、四大保険や人事労務上の実務を行っているかを把握する方式は「本当の使用者」を見つけにくくしている。 そして「派遣」が認められた第三者雇用への介入とその可能性の制度的な許容は、それ自体が無数の間接雇用を量産した。 また紹介、募集、請負、斡旋などで偽装されるさまざまな不法派遣を作り出し、 それらの形態が不法派遣という点を回避するためにさらに権利を奪う方向に歪められてきた。

期間制、派遣に加えて時間制労働まで、非正規職類型で積極的に制度化

時間制労働も同じだ。 本来、労働時間が短いという理由だけで非正規職類型に分類される理由はないが、 期間制法は時間制労働も非正規職類型の一つとして制度化し、 李明博政権は時間制法を全く別の法案として制定し、 資本がさらに柔軟な労働力を活用できるようにしようとした。 これは現政権でも試みられている改悪の一つでもある。 ところが時間制労働導入の過程は、非正規職の制度化がいかにして安定した雇用を内部から解体するかをさらによく示している。 例えば教師の場合、政府は来年から全日制から時間制に転換する「転換型」を導入するというが、 時間制を導入する過程で教育界の批判が小さくないため、まず転換型を導入するというように変えた。 しかし公務員の場合は契約職時間制公務員、時間選択制採用公務員、転換公務員など、時間制の類型がとても多い。 政府が鉄鉢と呼んで非正規職の反対側に無理に対蹠させたその社会も、 不安定労働を量産する構造が確立された。 時間制労働はそれだけ正規労働の不安定化を明確な目標にしている。

また、新規雇用量産という面でも非常に否定的だが、 時間制労働は当然、ほとんどが低賃金の期間制で形成される。 定年を保障する形でも同じだ。 政府は無期契約職を作る時から「雇用期間」と「権利の保障」をそのまま代替して使用しているが、 派遣会社の正規職という概念が成立しないのと同じように、定年の保障がそのまま権利の保障に代替されることはない。 無期契約職労働がそうだったように、既存の正規職と区分し、雇用保障が相対的に脆弱な状態にして、 それからまたそれなりに安定した労働全体の雇用を柔軟化する通路にしている。

劣悪な雇用形態が出会い極大化する制度的効果、これを裏付ける「雇用サービス活性化」

最大の問題は、期間制、派遣、時間制労働などが別にあるのではなく、 このようにして開かれた非正規職を活用する構造が互いを裏付け、効果を上昇、極大化するということだ。 期間制法はすべての雇用の基本形態を期間制雇用として確立する方式で制度化され、 正規職雇用を侵害しないようにするという派遣制は、雇用への第三者介入を許容することにより、 常時的に人員を間接雇用で活用できる制度的な道になった。 特に政府の非正規職対策は一度も間接雇用の通路を閉じたことはない。 期間制法の無期契約転換条項によって発生するいわゆる風船効果は、 明確に2年という期間制限がとても短期間だからなのではなく、 間接雇用の規制がないからだ。 そして政府はむしろそれを経済活性化の契機だと考えている。 労働者をあちこちに移動させる事業、紹介し、募集し、供給することをいわゆる「雇用サービス産業」と呼び、産業で活性化させようとしているのだ。 時間制労働も同じだ。 時間制労働は短時間化されるほどに間接雇用化する傾向を体験するほかはない。 時間単位で細かく分割された労働が円滑に供給されるように、結局は人員の早く適切な供給というシステムに依存するほかはなくなるためだ。

すなわち、労働は断片化されるほどに、これを適時に供給することが資本には大変重要になる。 そしてこれを可能にするものがまさに人員供給産業だ。 それで李明博政権の時からずっと職業安定法を「職業安定」ではなく「雇用供給産業を活性化」させる法律に変革しようとしてきたのだ。 全面的な法改悪は労働者の反対で一度は退いたが、着実に床からこそこそと施行されている。 朴槿恵政権が語る規制を解くという方式だ。 職業紹介所の面積や登録規制、申告や許可に対する規制を何種類か解いただけでも、はるかに自由な活動が可能になる。 そしてこれは労働市場を全般的に変化させる。 すでに工団地帯では大型紹介業体が寄宿舎と通勤バスを運営している。 昔、農村地域で大資本が卒業生を車にのせてそのまま工場に連れてきたとすれば、 今では用役企業がバスにのせて工団に連れてくる。 そうして仕事場を見つけた労働者たちは、業者が送り込むまま、この会社、あの会社に通う。 解雇されればすぐ業者が他の仕事場を斡旋する。 この斡旋は職業紹介でもあり、不法労働力供給でもあり、不法派遣でもある。 この関係は何か分からないように隠蔽され複雑になる。

また始まる非正規職法改悪の試み、さらに完全な不安定化に!

労働者を雇用するにあたり、契約期間を決めるのはもう当然のことになってしまった。 期間制法の効果だ。 ところが2年という雇用擬制の適用期間を延ばして、さらに長期間の非正規職雇用を可能にさせるという。 全面的に延ばすことができなければ、特定の年令帯をターゲットに延長するという。 しかし、これは資本の柔軟な雇用調整をさらに容易にする。 期間制使用期間の延長は、決して労働者の勤続を延長するのではない。 労働者の雇用期間はその中でさらに細かく分離され、該当年齢は当然非正規職として雇用できる生涯周期と評価されるだろうし、低賃金化の道を辿るしかない。 また政府はさらに派遣を拡大するという。 間接雇用全般の制御をまったく無くし、ただ費用負担を避けるために行われる数え切れない間接雇用の問題を派遣拡大で隠そうとしているのだ。 そしてそれが雇用を得ることが難しい非正規職として働く労働者のためだと主張して、 高齢層や農畜産業を狙う。 その矢は止まることなく、さらに広範囲な労働者層をねらうようになる。

そのように非正規職のためだというふりをして、一方では正規職が問題だという。 企業が支払える費用は決まっているので、正規職が多く持っていくから非正規職が増えるという。 だから正規職を柔軟化しなければいけないというが、これは朴槿恵政権の初めからすでに出てきた話だ。 多様な正社員制、多様な形態の正規職が可能だというのが大統領の話だった。 これは非正規職の雇用形態に安全性という表面的な皮をかぶせただけで、 結局非正規職を増やす政策でしかない。 それで生まれた時間選択制雇用というものが引続き非正規職、低賃金雇用で量産されているではないか。 そして雇用サービスを活性化する制度的措置をずっと追加するという。 これは何を語るのか。 さらに不安定な労働、さらに極端な柔軟化、さらに低い費用の労働を作るということだ。 そしてそのように極端な不安定労働を資本が無理なく使えるように労働力を供給する事業を産業として育成するということだ。 労働者の人生は何も考えがない。

政府が強要する未来、このまま容認するのか?

今の法改悪の試みは、期間制法、派遣法の一部の内容が変わるという問題ではない。 今の変化は完全な新しい労働社会への進入になる可能性が高い。 私達が知っていても知らなくても、すでにそのように変わりつつある。 正規職雇用が一般的だった時、われわれは定年が保障される雇用を当然だと思った。 しかし期間制法の制度化により、期間を限る契約がもう当然のことになった。 そして期間制法が制定されてから、派遣法と期間制法が非正規職を拡大量産するための二本の軸になり、もう正規職雇用は当然のことではなくなった。 あれほど多かった求人広告が消え、今は多くの募集広告だけがあふれ出る。 その募集広告をたどって行くと、○○用役会社を通じて△△業者に入る。 その業者は◎◎資本の部品業者、下請企業だ。 製造業だけではない。 公共部門も期間制や間接雇用があふれ、時間制の割合がますます高まっている。 民間委託をしても地方自治体の管理責任下にあり、最終的にその業務に責任を負っているのに、 現実での労働関係についての責任は全く知らないふりをする。 タサン・コールセンターを見ただけでもわかる。 ソウル市が雇用問題について、いつ一度でも責任ある姿勢で言及したことがあるか。 彼らはソウル市民の便宜のためだというソウル市の政策により働いているが、 ソウル市は自分の政策を達成するために働く労働者とは考えない。 業者に委託したのだから、業者が処理する問題でしかない。

今、私たちが迎える時代はそんな短い契約期間中の安定もない時代になるだろう。 ひどいと考えるだろうか。 すでに呼び出し労働が増えていて、事実上の長期一党制と共に長期呼び出し構造が行われている。 多様な正社員の一形態としても語られる定年で雇用した後、労働時間についての全権を資本が持つ労働がある。 こうした雇用形態でむしろ労働者は自分の時間のほとんどを資本に従属させなければならない。 これでは定年が保障された呼び出し労働と何が違うのか。 今は雇用の期間だけで不安定性を語れない時代になった。 権利を剥奪する構造の一つ一つを見なければ、不安定性を読みだすことが容易ではない雇用形態が増えるだろう。 そうして労働者は単一資本の部品を超え、資本集団の部品として、 資本を優先視する社会と政府の部品として読まれるようになる。 そんな社会を容認するのか!

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2014-12-20 01:06:11 / Last modified on 2014-12-20 01:06:12 Copyright: Default

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