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金管の響きは民衆の声―W.ブロイカーやブラスバンドの音楽

写真は公演のチラシ

 いささか古い話しになるが、4月末にオランダからサックス奏者のウィレム・ブロ イカー率いる「コレクティーフ」(集団の意)が来日した。

 ブロイカーはインターナショナルや労働歌も演奏するというスタンスから わかるように70年代に反体制を標榜する作曲家ルイス・アンドリーセンの階 級的オーケストラ「ヴォルハーディング」への参加や演劇のブレヒトからの 影響を受けて、先進的な即興音楽や現代音楽の演奏してきた。そして自己の バンドを結成し25周年を迎えている。彼らの音楽はマーチングバンドや伝統 的ポピュラー音楽を含んだジャズバンドで、フリーな即興のスタイルのなか にクラシックから現代音楽、サーカスミュージックの引用がされて、はては 演劇的パフォーマンスを取り入れたステージもおこなうという破天荒なもの である。

 日本でのステージは京都と東京の2回だけで、東京の公演に行った。さすが に往年の過激な即興演奏はなかったが職人芸的なアンサンブルやユーモラス なコント風ステージを楽しんだ。管楽器の音の固まりは聴いていて、爽快で、 力がみなぎってくる。そんなわけでジャズを中心にブラスバンドなども聴い ているが、金管楽器が世界の民衆の音楽のキイワードになっているようだ。

 例えばアメリカはジャズ発祥の地のニューオリンズでブラスバンドが葬式 で行進していたし、ラップを取り入れた新しいバンドもでているという。イ ギリスでは映画の『ブラス』で炭坑労働者が自分たちの存在を示すためにブ ラスバンドをやっているエピソードがあるように、ブラスバンドが盛んだと いう。同国の「ハッピーエンド」というジャズのビッグバンドはスペイン内 戦やアフリカ解放の歌を演奏している。イタリアでは「ダニエル・セペ」が 『限界労働』という労働歌集を演奏している。 

 バルカン地域ではロマ(ジプシー)のブラスバンドに人気が集まっていて、 婚礼などでは生のバンドは欠かせない存在だったという。ユーゴスラビア映 画『アンダーグランド』の音楽で有名になった「ファンファーレ・チォカリ ーア」は来日を果たしている。

 またユダヤ人の音楽として注目されているクレツマーミュージックのなか にも哀愁と民衆の息吹をが混じった力強いブラスサウンドが聴ける。「アレ・ ブリーダ」という歌は昔、ユダヤ人の社会主義者たちが集会の時に歌ったと いう(みんな仲間だ、てな意味らしい)、なかなかいい曲だ。

 アジアのブラスバンドも土俗的な染まりかたをしている。インド、インド ネシアなど地域に根ざした音をだしていると思う。やはり冠婚葬祭に奏でら れているようだ。日本でも「ちんどん屋」などはそれに当たるのだろうが、 ここでは大阪で活動している大原裕ブラスバンドの「LIVE! LAUG H!」(オフノート)というCDを推薦したい。インターや美しき天然など を演奏している。それぞれの音に共通して感じるのは管楽器のハートを揺さ ぶる音で、おおげさに言えば魂への共振であり、民衆の生の雑多な声を代弁 しているようにもきこえるのだ。(安齋徹雄)

  1. ブロイカーのHP http://www.xs4all.nl/~wbk/

Created byStaff. Created on 2005-09-04 20:40:42 / Last modified on 2005-09-04 20:40:42 Copyright: Default

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