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名古屋コラム

郵政首切り20年・名古屋哲一の月刊エッセイ

 我が家のスズメたち

しょうもない事にウツツをぬかしてしまった。それは風邪などおめしになって、 団地5階の我が家に長らく引きこッもていた時のこと。スズメの声に誘われて、 フト、何の気もなしに、胚芽米と押し麦とをベランダの植木鉢の上にバラ播いたのが始まりだった。しばらくして見るとお米だけが無くなっていて、「麦は 食べないのかな」と思っていたら次に見たときは麦も無くなっていた。人には 色々なタイプがあるけれど、スズメは皆が皆、美味しいものから先に食べるんだという、当たり前なことではあってもボクにとっては「新発見!」の喜びを得たのだった。

 チラッとでも人影を見るとサット飛び立っていく、警戒心が「不当にも」強すぎるスズメたち。何となく悔しいではないか。植木鉢は幅1メートル弱のベランダの端にあり、それよりもこちら、窓際の方には断固として来ようとしないのだ。となれば、植木鉢から窓際までテンテンとお米を播いて、近くに引き寄せたい、近くまでおいで頂きたいとなるのは、これ、人情というものだ。こうしてボクは苦闘の渦中に突入!

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 鳩が、お米を食べてしまった。鳩のヤローには食べさせないでスズメさんだけに食べてもらう、この難問が待ち受けていた。糞害が凄い鳩は団地では嫌われ者だ。しかし心優しいボクは、長さ6メートル弱のベランダ3分の2の所に洗濯機を置きこれを境界線にして住み分ける「平和共存」協定を鳩と結んでいた(階下の住人からは「鳩をなんとか追い払えないか」と要求が出されており、ボクもそれなりに努力したのだが鳩の方が賢くて、仕方無しに階下の住人には秘密の共存協定に至っていた)。この温情に満ちた境界線設置なのに、鳩のヤローはたびたび越境侵犯をするのだった。

協定違反は「ならず者国家」みたいな不正義だ! だが、よく考えてみると先住民は鳩たちの方であり、ボクの方が侵略し勝手に境界線を定め協定を押し付けたのであって、これではボクはまるで「米帝」や「日帝」と同じになってしまう。だから、よくは考えないことにした。そしてまた、若い時とは違い「人間だけが特別ではなく命あるもの全てが皆等しく、尊くいとおしい」等と感じる事もある今日この頃だが、この際それは反古、鳩には「人権」は無い、お米を食べようとしたら弾圧なのだ〜!

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鳩の居住区から一番遠いベランダの隅だけにお米を置くなど様々な工夫と苦労の数週間を経て、今やツガイのスズメ二羽が窓の内側に来るまでになった。これはフロンティア精神旺盛の一羽が頑張ってくれたおかげでもあり、その勇気は尊敬に値すると初めは考えていたが、今は単なるクイシンボなんではと疑いだしている・・・ここに至る「進歩」の連続は楽しいものだった。また、研究 熱心なボクは、鶏肉と卵焼きを食べるかどうか?というドーデモイイ「共食い」実験をやってみたりもした(害虫も食べる雑食のスズメは、草食の牛への肉骨粉〜共食い〜BSEの場合とは異なる)。

スズメは可愛い。子供の頃から見ているはずなのに、とても綺麗な色と模様の羽をもち、愛嬌ある顔をし、鳩の5分の1以下の大きさしかなく、幾種類ものサエズリをし・・・ちなみに、「チュンチュン」ではなく「ピヨピヨ」に10%くらい「キョンキョン」を混ぜた声で鳴くし、歌い続けたり、沈んだ感じの低い声をだしたりもする・・・、180度回れ右を0.1秒でやったりする等を初めて知った。

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こうしてボクは今、激烈な矛盾の中にいる。お百姓さんがカカシ等でスズメに 食べられないようにと育てたお米を、スズメにあげている。鳥インフルエンザ問題で鳥を排斥しようとする人がいるご時世の中、わざわざ鳥を向い入れようとしている。窓の内側に置いたお米を食べるようになったとはいえ、ボクと目が合えばスズメは逃げてしまうのであり、ボクはバードウォチングをしたいからスズメに訪れてもらいたく、そして訪れてもらうためにはスズメを見てはいけないのであった。根本的な矛盾は、6千500万年前に絶滅した恐竜から進化してきたらしい鳥のモンノスゴイ長期の習性を、わずか数週間かそこらで変化させたいという夢想を抱くことにあったのだ。

この世は矛盾のオンパレード。91年全逓本部は4・28免職者の首を切るという矛盾を犯したが、反処分闘争を葬るためのこの首切りが、その目論見には矛盾して、自立自闘の新たな4・28反処分闘争を誕生・再活性化させたのだった。

名古屋哲一(郵政4・28免職者)

郵政九州労組・郵政近畿労組吹田千里支部「機関紙3月末号」掲載

*タイトルはレイバーネット編集部


Created byStaff. Created on 2005-09-04 20:41:06 / Last modified on 2005-09-29 06:44:52 Copyright: Default

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