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●映画「白いリボン」
憎悪の持つ負のエネルギーに
見る者の目は釘づけにされる

 人間は得体のしれない感情に支配されていて、歯の浮くような愛の歌に酔いしれるかと思えば、ささいなことにも激して「殺せ」と憎悪をたぎらせたりする。こういう感情の魔物が生まれてくる人間社会の不条理にメスをいれている監督にオーストリアのミヒャエル・ハネケがいる。

 新作の「白いリボン」もそんな一本だ。といっても残酷な殺人や観客の度肝をぬくような映像はなく、抑制された白黒画面には、時には懐かしい、昔の映画でもみているような気分にさせられる。舞台も、百年近く前の北ドイツののどかな村。それでいていまの世界と同じ不穏な空気が漂っている第一次大戦前夜のこと。何者かが張った鉄線に引っ掛かり医師が落馬して大けがをする。ここから次々と奇妙な事件が……。いったい犯人は誰なのか?

 映画は、当時村の若い教師だった男が、かつての出来事を老いた声で回想する形で展開していく。彼が目撃したことや噂もおりまぜて描かれ、多くの事件は謎のまま戦争へとなだれこんでいく。

 では、これはミステリーか? 表向きはそうだ。が、監督の狙いは、事件の連鎖からみえてくる旧社会のしくみとその崩壊に光をあてることにある。村は大地主の男爵が仕切っている。配下に家令がいて、多くの小作人が働いている。ある小作の息子が母の死を恨んで地主の畑を荒らす場面には圧倒される。そこに憎悪の感情がみなぎっている。

 一方、プロテスタントの牧師は村の精神世界を支配し、子供に倏鬚ぅ螢椒鶚瓩僚齋藏軌蕕魘いている。大人の歪んだ信念と欲望のはけ口になっている子どもの姿も捉えられている。子どもたちは少しも愛らしくない。黒服の牧師の娘クララは不気味でさえある。事件全体の共犯者のようにみえてくるが、村自体ファシズムの温床となっていることを監督は暗示している。

 不快であっても見入ってしまう傑作。(木下昌明/「サンデー毎日」2010年12月19日号)

*映画「白いリボン」は東京・銀座テアトルシネマで公開中。全国順次ロードショー


Created bystaff01. Created on 2010-12-26 18:08:41 / Last modified on 2010-12-26 18:11:16 Copyright: Default

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