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LNJ Logo 木下昌明の映画の部屋・第107回
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●映画「クレアモントホテル」
「老いらくの…」と言うなかれ 恋はいい年を取るための妙薬

 高齢化社会になるにつれて老人もの映画のテーマも多様化してきた。恋もその一つ。10年前にみた日本映画「虹の岬」が記憶に残っている。66歳の歌人が39歳の教授夫人と結ばれるまでの恋の修羅場を描いたものだ。戦後まもなく“老いらくの恋”と騒がれた実話をもとにしていた。

 今度公開のダン・アイアランド監督の英国映画「クレアモントホテル」は、そんな激しい恋とはほど遠く、年もずっと開いているが、それでも男女の心の交流を描いていて、今日の殺伐とした時代の空気のなかで、ほのかな温もりを与えてくれる。

 主人公は80歳過ぎの気品のある老婦人、相手役は26歳の美青年─その二人がどうして出会うことになったのか。

 ロンドン市内の小さなホテルを老婦人がタクシーで訪ねるシーンからはじまる。映画をみる前、舞台は豪華なホテルと勝手に想像していたが、運転手さえも知らないということで冒頭から驚かされる。そこは人生の行き場を失った孤独な老人ばかりが長期滞在するホテルだったのだ。老人たちの楽しみといえばテレビドラマの「セックス・アンド・ザ・シティ」をみること。

 一方、青年は小説家志望なのだが貧しく、路上でのギター弾きでしのいでいる。そんな二人が思いもよらぬことで出会い、周囲には祖母と孫と偽って交流を重ねていく。

 二つのシーンが味わい深い。一つは彼女が同宿の老人からプロポーズを受けた際に「残りの人生は(誰かのためにでなく)“私”として生きたい」と凜と言い放つところ。

 もう一つは青年の部屋で、老婦人の思い出の曲を弾くところ。そこで青春時代の亡き夫といまの青年とが二重写しとなって、彼女の目に涙がキラキラと輝きはじめる。

 映画は、いかに人は老いようとも、異性との心の結びつきが大切で、そこに生きようとする意欲の源もある、と訴えている─がんばらなくっちゃ。(木下昌明/「サンデー毎日」2010年12月5日号)

*映画「クレアモントホテル」は東京・神保町の岩波ホールで12月4日からロードショー、ほか全国順次ロードショー C2005 Claremont Films,LLC


Created bystaff01. Created on 2010-12-05 21:48:26 / Last modified on 2010-12-05 21:51:16 Copyright: Default

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