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●映画「BOY A」
「匿名」で語られてきた少年は 社会で「名前」を取り戻せるか

 少年犯罪を扱った映画にダルデンヌ兄弟の「息子のまなざし」という傑作がある。息子を殺された職業訓練所の指導員のもとに、それとは知らずに加害者の少年が刑期を終えてやってくる筋書きで、指導員がどう対応するのかが見どころになっている。

 映画は「楽しむ」ためにあるが、これは、ただ楽しむだけではなく「考える・考えさせる」という作りになっている。

 同じように少年犯罪に光を当てたジョン・クローリー監督の英国映画「BOY A」も“考えさせる”要素が強い。映画は少年時代の犯罪で服役したエリック青年が、ソーシャルワーカーのテリーと釈放前に話し合っているシーンから始まる。青年は「ぼくの名前はジャックだ」と新しい名前に変えて社会に出ていく。その時の彼の無垢な笑顔が印象深く、車窓に映る光景は、初めて広い世界へと旅立つ者の目で見たように鮮やかだ。

 ジャックは運送会社のトラック助手として働くようになる。同世代の運転手と友達になり、彼の後押しで事務員の恋人もできる。それと同時にマスコミが「悪魔の少年」が出所したと騒ぎたてる。

 映画はそんなジャックを現在進行形でとらえながら、彼の脳裏によぎる過去の事件も次第にクローズアップしていく。彼は恋人に過去を打ち明けるかどうか悩み、テリーに相談するものの「絶対に正体を明かすな」と諭される。

 ここで問われているのは、いかに犯罪者だったとはいえ、人々に嘘をつき、自らの人生を虚構化しなければ生きていけないのか? という問題である。それとともに、一度罪を犯すと社会の害悪と烙印を押して排除しようとする社会のありようである。

 映画は観客に、ジャックの行動に共感させつつも、ラストにきて、あなただったらどうするか? と問う仕掛けになっている。なお、これは日本のある事件報道がヒントになったという。(木下昌明)

*映画「BOY A」は東京・渋谷のシネ・アミューズで11月15日から公開、ほか全国順次ロードショー (c)Cuba Pictures (Boy A)Limited 2007

「サンデー毎日」2008年11月16日号所収


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