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コロナ19危機、1040億の黒字にも一方的廃業した投機資本

[ルポ]集団解雇危機処した韓国ゲイツ労働者たちの話

ヨンジョン(ルポ作家) 2020.07.31 10:11

▲6月26日廃業通知以後に止まった大邱の韓国ゲイツ工場[出処:ヨンジョン]

6月26日、20年間で純利益1041億ウォン(年平均52億ウォン)を記録した 大邱の優良企業、韓国ゲイツが一方的に廃業公告を出した。 韓国ゲイツは昨年も45億ウォンの純利益を上げ、 コロナ19でも休業や政府の支援金なしで運営された会社だ。

韓国ゲイツは世界約30国の120の工場で1万5000人以上の労働者を雇用する グローバルゲイツ企業の韓国事業場で、 自動車と産業用動力伝達ベルト類を生産してきた。 韓・米・日の法人が合弁投資して1989年に設立された韓国ゲイツは現在、 米国法人が51%、日本法人が49%の株式を所有している。 2013年には私募ファンドのブラックストーンがゲイツを買収した。

韓国ゲイツは大邱達成産業団地に入居して雇用創出・維持の代価として 取得税と財産税免除など、各種の優遇税制を受けた。 また、国内の完成車メーカーに部品を納品し、大きな利益を上げ、 純利益の97%に当たる1008億ウォンを株主配当金として持っていった。 31年間、投資額の30〜40倍以上の収益を回収したが、 韓国ゲイツは事業構造調整とコロナ19等を口実に大邱工場147人の労働者に 集団解雇を通知した。 その被害は51の協力業者の労働者6千人にも影響するものと予想される。 韓国ゲイツは国内生産施設は閉鎖して、 販売法人GUKC(ゲイツ・ユニッタコリア)は国内に残し、 中国で生産した製品を現代・起亜・GM自動車などに供給すると明らかにして公憤をかっている。

韓国ゲイツのとんでもない態度はこれに終わらない。 韓国ゲイツは廃業公告10日後の7月6日に希望退職制も(ERP)を実施するという公告を出した。 7月20日までに自発的に辞職する職員には勤続年数1年あたり1か月分の基本給と通常手当に当たる慰労金を払うという内容だ。 失業給付を受けられるように、雇用保険喪失申告書には 「経営上の必要および会社の不況で人員削減による退社」と記載するが、 経歴証明書などの公式書類には自発的退職の「依願退社」と記録するという。 希望退職プログラムは今後、廃業に関する損害賠償請求などの法的攻防の余地を事前に除去し、 労働者を分裂させて工場再稼働の闘争動力を落とすためだった。

会社の一方的な廃業公告で集団解雇の危機に瀕した韓国ゲイツ労働者の心情と悩み、 これに対して工場の再稼働を要求して闘争する人々の読者と分けようと思う。 ――筆者注

いくら悪質な企業も90日前には通知

7月9日午後、大邱東区新川洞の共に民主党大邱市党の前。 韓国ゲイツの一方的な工場廃業反対と労働者生存権死守を宣言する 全国金属労組大邱支部集会が開かれている。 30度を上回る炎天下で韓国ゲイツ支会のチェ・プンソク支会長(全国金属労組大邱支部)と ユン・ジョンファ支部長(全国金属労組大邱支部)が決意を新たにする断髪式をする。

▲7月9日共に民主党大邱市党前で断髪式をする韓国ゲイツ支会のチェ・プンソク支会長(右)と金属労組大邱支部ユン・ジョンファ支部長[出処:ヨンジョン]

「わが組合員たちは20年間、長ければ30年まで昼夜を問わず苦労して職場を作ってきました。 会社は31年間、千億以上の黒字を出して株主配当金として持って行きました。 私たちは自動車産業が死んでいくから、代替産業が必要だから投資してくれと3〜4年以上要求したが、 一つの投資もありませんでした。 しかし今、自動車産業とコロナ19を口実に廃業を宣言しました。 いくら悪質で不道徳な企業でも、90日前には通知します。 しかし彼らは6月26日(一か月前)に廃業を通知しました。」 (チェ・プンソク支会長)

集会を終えたチェ・プンソク支会長など韓国ゲイツ労働者が 共に民主党大邱市党事務室に上がる。

「私たちが要請する所はあまりありません。 外国資本の一方的な態度に民主党としてできることがあるのか、要請しに来ました。 7月31日になればわれわれはみんな街に出ていかなければなりません。 だからこの事態が解決するまで、ここで食べて寝て、 党に要請をするという気持ちで上がってくるのです」。

「そうすることはできません。 このことで来たのは初めてで、 解決するのかしないのかも聞いてみたこともなく、 ここで食べて寝るなんて話になりますか。」

そうだ。話にならない。 翌日工場に行って状況把握をして、できることを探してみるというが、 市党委員長と面談も進めるというが、 初めて訪問した日いきなり食べて寝るというのだ。 ところで本当に話にならないのは、工場廃業まで20日を残して 藁をもつかむ心情でここを訪ねてきた韓国ゲイツ労働者たちの切迫した状況だ。 1か月時間があれば、いや半月だけでも、こんな選択はしなかっただろう。 政党、青瓦台、国会、雇用労働部、市庁、郡庁、議会… どこでも行かなければならず、何でもしなければならなかった。 一時間ほどの攻防の末に韓国ゲイツの労働者が事務室の扉の前で座り込みを始める。

▲7月9日共に民主党大邱市党で座り込む韓国ゲイツ労働者[出処:ヨンジョン]

ただぼんやりとして、じっとしていました

「6月26日の朝8時に出勤して働いていると、 9時に会社が労組役員と面談をしようと言うので面談をしました。 10時に職員全体を集めて7月31日に廃業をするのだと。 アジア社長からキム&チャンの法律チームと通訳者もきていて。」

「その時はどうでしたか?」

「ぼー… (あきれる笑い) とても突然だったので、ただぼんやりとしていました。 2週間経っても、いまだに実感がわきません。 これから津波のように押し寄せるでしょう。 夜眠れば、以前は見なかった夢も見ます。 休んでも休んだ気がせず、寝ても寝たような気がせず、 この戦いがいつ終わるかもわからず。 また工場に行って同僚と一緒に仕事上がりに酒の一杯も飲める、 そんな日常がまたきたらいいですね。それしかありません。」

共に民主党大邱市党の座込場で会ったチョ・ソンウ氏(仮名)は、 相変らず信じられないという表情だった。 ソンウ氏は韓国ゲイツで20年間自動車に入るベルトの生産業務を遂行してきた。 冗談なのか本当の話なのか分からない廃業公告を聞いて、 労働者たちは抗議さえできなかった。 その時間から後に工場の機械はもう動かなかった。

韓国ゲイツは「製造施設閉鎖に対する韓国ゲイツの立場公告」で、 自動車市場内の事業効率の改善と、 コロナ19により本社の事業構造調整の日程が前倒しになったと明らかにした。 今回の決定までには多くの選択肢と代案を慎重に検討したとも話した。 それと共に、当の労働者には廃業の一か月前にこの事実を知らせた。 明らかに労働組合があるのに、労組とただ一度の協議さえしなかった。 事務室で働く役員も、知っている人は殆どいないほどだった。

「赤字が毎年重なり、経営者がとうていどうにもならない時、 やむを得ず涙を流しながら廃業するのはいいとしても、 50億の黒字を出す企業でこれは本当に誰が見ても笑います。 私たちの常識ではとても理解ができませんが、 外資企業はそれがあまりにも当然なのでしょう。」

秒単位で時間を測り、物量を算定して、生産性向上を要求して、 残業物量を8時間以内に終わらせろと督促して利益をあげて行った会社だった。

廃業公告して希望退職を申請しろと言うのだから

7月16日、機械が止まった韓国ゲイツ工場は寂しかった。 一部の労働者はソウルの青瓦台の前で開かれる記者会見に参加するために席を外しており、 残った労働者たちは使用者側の装備・部品の搬出に備えて、 各自の工程を死守していた。 遠くから聞こえてくる労働歌謡と時々聞こえてくるひそひそ話をする声。 ただ平凡なある日の工場の休み時間のようだった。 昼休み、休み時間…機械が止まった工場でも、作業ベルは鳴り続けた。

「率直に羊飼いの少年の話のように信じなかったが、 アジア社長がきて廃業すると話したのだから、 これは侮辱でしょう。 政府では雇用を増やすというのに、今ある雇用もなくなっているのです。 他の会社が大変な時も、私たちの会社は大丈夫だといっていたのに、 私たちがこうなるとは思いませんでした。 景気がこうだから職場を見つけるのも難しい。年齢も高いし…眠れません。 笑っていても笑っているのではありません。」

ここで20年間働いてきたソン・ユンジュ(仮名)氏は、 これまで兆候がなかったのではないといった。 会社は黒字を出していても、20年前から毎年「扉を閉める」と話してきた。 労使交渉があるときは、マニュアルのようにその話をしながら労組を圧迫した。

希望退職申請締め切り四日前、労働者たちの気持ちはさらに情けなくなる。 会社は業界の模範事例に符合するとして希望退職申請公告を出した。 労働者たちは使用者側の胸算用を知らないわけではなかった。 だが当面の生計問題もまた無視できなかった。 ユンジュ氏はこの日、生産職からも少なくない人員が 希望退職申込書を作成したようだといった。

「出て行く人をののしることもできず、残る人をののしることもできずに こうなったんです。 それでも闇雲に全部戦おうというのも有り得ない。 会社は7月20日以後は希望退職慰労金がないとはっきり言うので、 みんな全部それとなく心配していた。 決定はするべきだが、差し迫っていて数日しか残っていなかったし。」

ユンジュ氏は一日にも何度も 「このようしなればならないか。 ああしなければならないか』という気持ちが行き来する。 工場が再稼働さえすると言っていたら残って戦うだろうが、 それが出来る希望が見えないと言う。

労働者たちは現代自動車が昨年と今年、中国ゲイツで生産した タイミングベルトとオートテンション納品を認めたのが 今回の廃業公告の口実にされたといった。 今でも現代自動車が中国製品を使わないといえば、 工場の再稼働ができるだろうといいながらも、 現代車が自分の利益のための決定を簡単に撤回するかとも言う。

ユンジュ氏のように希望退職申請について悩む労働者がいるかと思えば、 すでに希望退職を決めた労働者もいた。 また、投機資本の一方的な廃業に反対して工場の再稼働を要求し、 最後まで戦うという労働者もいる。

▲大邱達成公団にある韓国ゲイツ工場[出処:ヨンジョン]

しばらく休んでいるような感じがします

19年間、オートテンショナー部署で自動車のエンジンベルトの張力を調節する部品の 組み立て業務をしてきたキム・テヒョン氏は、 6月26日以後、自分が働いていた工程を守っている。

「メンブンという言葉はこういう時に使うんだね。 一日二日と過ぎるとメンタルが皆おかしくなり始めるのですが、 ちょっと変だったんです。 頭では何か早く回っていくのですが、胸は整理ができないのです。 それで椅子を置いてここに座っているのです。 気楽に更衣室にも行けないし、楽に椅子に座っていることもできないし。 皆私と同じ気持ちでしょう。」

妻には廃業公告のニュースを簡単に知らせることができたのに、 まだ小学生と中学生の子供たちには知らせるのが容易ではない。

「家で子供たち三人を座らせて話をしました。 『お父さんの会社が来月から閉まるから、 お父さんは雇用を失ってお金を稼げない』。 すると『これからどうするんですか?』と聞かれました。 『計画がない』という言葉だけ…」。

テヒョン氏は希望退職というのは会社の存立を前提として、 会社が難しいから退職してくれということだが、 廃業を宣言しておきながら希望者は出て行けというのは脅迫と違わないと言う。 労働組合があるのに協議せず、一方的に通知したことをとても受け入れられないと言う。

「本当にあなた方が私をぞうきんみたいに使い捨てるのなら、 私は何年か捧げても、あなたたちと戦う。 入ってくる時は雇用創出だと言って華麗な内容でさまざまな恩恵をくれと言って、 純利益をすべて持っていく。 黒字を出す状況でも、もっと良い条件を探して巧妙に法の網を避けて 廃業通知を飛ばすのだから、本当に対応無策だという感じがします。 韓国ゲイツ廃業が成功すれば、全国の多くの労働者たちが 投機資本や食い逃げ資本に被害を受けることになりそうです。 私たちが工場再稼働闘争に勝利しなければなりません。 この会社から出て行くということが、あまり実感がわきません。 ここを辞めて他の仕事をするという気持ちにも全くなれず。 しばらく休んでいるような感じしかしません。 会社が考えを変えて物量を確保して、工場を再稼してくれということです。 今からでも電気コードさえ入れれば製品を生産できるからです。」

重い足取りで韓国ゲイツ工場から出た。 工場の入口には「あなたが守ったのは家族です」、 「2020私の人生最高のゲイツ」という文句がついている。 ゲイツに聞きたかった。 あなたたちは何を守るために、何を捨てて、誰の人生を死地に追いやっているのか?

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2020-08-03 13:30:24 / Last modified on 2020-08-03 13:30:30 Copyright: Default

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