「『公正』を越える他の単語が必要だ」
［ワーカーズ・イシュー(1)］進歩政治青年活動家集談会
司会:ユン・ジヨン「ワーカーズ」編集長
パネル:カン・ミンジン正義党報道担当者、
コ・グニョン:ソウル大学校学生(社会変革労働者党)
シン・ジエ:緑色党共同運営委員長
チョン・ナウィ:民主労総組織争議部長
記録:ウン・ヘジン記者
写真/整理:キム・ハンジュ記者
ユン・ジヨン: まずソウル大、高麗大の�長�(チョ・グク)糾弾集会が 「公正性」議論の導火線になった。 大学から始まったこの集会をそれぞれどう見たか?
コ・グニョン: 直接目撃した限り、それなりに熱気があった。 ソウル大学生の間でも世論が分かれるが、 �長�長官に反対する声が大きかった。 いつも2〜300人は参加した。 初めてソウル大で集会を開いた時は、学生の怒りが分かった。 学閥主義問題があるにはあるが、社会正義を望むという声に期待していた。 �長�長官の娘が 他人とは違う特典を受けたのは事実ではないか。 特に「�長�」という人に、 このような姿を見たことで、さらに腹をたてたのだろう。 怒りの背景には、実在するさまざまな悩みがある。 ソウル大を卒業しても、以前のような機会は与えられない。 文科は公務員試験やロースクールの準備に追いやられ、 理工科は勉強がとても難しく、就職しても多くの構造調整で追い出される。 ますます機会は少なくなっているが、 ある人は特典で逃げる姿を見れば我慢できないのは当然だ。 問題は、学閥社会の最高峰であるソウル大と高麗大だけがこの怒りを表出したという点だ。 ソウル大、高麗大のほかの大学では抵抗する動きがなかった。 また、ソウル大集会も 「これまで私たちは相対的な特典を受けてきたのではないか?」、 「この怒りを基礎として、私たちがまず代案的な教育システムを語るべきではなかったか?」と考えることができなかった。 陣営の論理から抜け出すことも出来ない限界だ。
カン・ミンジン: 私はソウル大や高麗大に行かなかった青年として、一方では不正感も感じた。 ここの学生のキャンドルが、韓国社会「青年の声」の代表になったためだ。 もし他の地方の大学で似たような動きがあれば、 その集会は「青年の声」になったのだろうか? ソウル大キャンドルの場合、自分たちが努力して得た名門大というタイトルを �長�が不正な方式で傷つけたと考えたのではないか? だが地方大でさえ、大学に行けない青年たちは、 タイトルがないから声も上げられないという社会的雰囲気が存在する。 私は多くの青年が光化門と瑞草洞に分かれた韓国社会から排除されたと思う。 �長�の場合、 違法かどうかは別として、 過去に社会主義者として平等を語ってきた彼がこうした姿を見せたという点で、 国民を代表するのは不適切な人だという気がした。 進歩政党の正義党が�長�を批判することを希望した部分もある。
ユン・ジヨン: �長�事態で 湧き上がった「公正性」の議論は韓国社会にどんな話題を投げたと思うか。
チョン・ナウィ: �長�事態による 「不公正」という単語は、事実、不平等と階級の問題を赤裸々に表わしたことだった。 �長�と�長�の娘がいた運動場は、 私たちとは全く違う運動場だったから。 一例として、正規職の青年たちは同じ運動場にいる非正規職に対し、 競争や試験のような手続的な問題を提起したりする。 ところで�長�とその子供によって完全に違う運動場があらわれたのだ。 �長�の私募ファンド、 財産、娘の論文などは私たちが知らなかい「特権層の運動場」だった。 本当に貧しい人が新聞に登場しないように、 特権層も私たちの目に見えなかった。 特に、特権層が社会のために献身すべき地位につく時、 彼らの運動場は全面化される。 その姿を見て人々は矛盾を感じたのだろう。
カン・ミンジン: ソウル大、高麗大の学生は、 �長�の議論を通じて 「不公正」という彼らの単語を持つようになる。 自分は試験で入って孤軍奮闘しているのに、 ある人たちは違う方式で入学し、卒業証書を得るということだ。 だが競争社会に入ることもできない多くの青年は、 この議論をどのように言語化できるだろうか? 不公正? 不平等? 彼らは自分の言語を持つのが難しい。 九宜駅スクリーンドア事故で命を失ったキム君の友人が 「�長�の議論は 大学を早々に放棄して19歳で労働をしなければならなかった私たちにとって、 違う世界の話にならざるをえない。 『入試制度が公正なのか』、『高校生の論文第1著者登載は可能なのか』 といった議論は、すべて大学に行ける人が言う話だ」と証言したのを見た。 この話は韓国社会が持つ限界をはっきり見せた。 韓国社会が語る「公正」の視角差はとても大きい。 そして多くの公正は、弱者に向かわない。
「�長饂�態で出てきた『不公正』という単語は、実は不平等と階級の問題を赤裸々に表わすものだったのだろう」
ユン・ジヨン: �長�事態で 両党を中心とする広場集会が開かれた。 その中で進歩陣営の声が聞こえないのも事実だ。 進歩陣営は�長�事態で どのような声をあげるべきだったのか。
チョン・ナウィ: 民主労総では瑞草洞集会について話をしたことがない。 内部の考えはみんな違うようだが、 彼らと呼吸を合わせられなければ、さまざまな連帯体活動が狭まると考える人もいるようだ。 だが私の考えはちょっと違う。 自発的な広場闘争だという理由で必ずしも参加する必要はない。 特に労働者たちはすでに瑞草洞キャンドルが要求する司法改革闘争をかなり前から進めている。 例えば7月に解雇された1500人の料金所料金受納労働者は現在、 韓国道路公社に大法院判決履行を要求して 文在寅政府の責任を問い闘争している。 戦いの様態が違う。 料金所労働者の正規職転換に関して、正規職は「不公正だ」と反発する。 ここでも「公正」の問題が出てくる。 これに関して、ある料金所労働者が 「試験で入ってきたあなたたちより私たちの人生の方が激しかったことを認めろ」 というプラカードを書いた。 公正性の談論に対する料金所労働者たちの答だったと思う。
「競争に投げ出された青年は『手続的公正性』に執着した。政府が競争体制をそのままにして差別を解消するというのは無理がある。」
シン・ジエ: 民主労総が瑞草洞キャンドル集会に参加しなかったのは良かった。 �長�は民情主席の時にも、 そして今も労働者のための道を歩んでいるとは思わない。 瑞草洞で労働者のためのスローガンを聞いたことがあるか? 労働者たちはそこで彼らのシュプレヒコールをあげられたのだろうか? 瑞草洞キャンドルでは、弱者と平等は言及されなかった。 その声を瑞草洞キャンドルが排斥したし、 実際に弱者と少数者の声を消して集会が進められた。 瑞草キャンドルは「私たちが�長�だ」と叫んだ。 果たして私募ファンドのようなところに金を投じる人はどれぐらいいるだろうか。 当然私は、そして多くの人は�長�にはなれない。 瑞草洞キャンドルは「私が性少数者だ」(�長�は9月6日の国会人事聴聞会で 「同性愛は許容するしないの事項ではないが、 同性婚を法的に認めるのは韓国の状況ではまだ早いと考える」と話した)、 「私が非正規職だ」、「私が社会的弱者だ」といったシュプレヒコールをあげるべきだった。 今回のキャンドルは、総選挙に向かって暴走する政界が、 デモ隊を使って良くない方式で糊塗したものだと見る。 彼らは司法改革に対する明確な提案もなかった。 瑞草洞キャンドルは、政治家が義務を失った場所だった。
カン・ミンジン: その延長線上で、キャンドルは教育問題を語るべきだった。 議論の出発は教育の不公正だった。 文在寅大統領も 議論が高まると、大学入試不公正の問題に言及した。 事実、文大統領は候補の時に修学能力と内申絶対評価転換、 特別目的高校・自私校廃止などの教育改革を約束した。 すべてが守らないか、破棄された。 政府は教育問題を正せなかった。 同時に、競争に追いやられた青年は、さらに試験のような「手続的公正性」に執着した。 期間制教師の正規職転換に対して教育大の学生、任用試験生が怒った現象がそれだ。 入る門も少ないのに、期間制教師がこの門に入るから反発したのだ。 当初の誤りは政府にある。 政府は当然、正規教員を増やすべきだったのに、そうしなかった。 競争体制をそのままにして差別を解消するということには無理がある。 それでも約束を破った政府の誤りは隠された。
ユン・ジヨン: 瑞草洞キャンドルは3年前の 朴槿恵退陣キャンドルと、 どのような点で異なるか。
コ・グニョン: 青年を中心に話すと、ひとまず瑞草洞と光化門に広場が分かれてはいないのではないか。 ここで20代の青年は2か所とも行かなかった (ソウル市生活人口データによれば、10月5日の瑞草洞集会に参加した20代は8.5%)。 青年たちが2か所の集会を「私の人生を変える過程」と考えていなかったと思う。 この点で、2016年の朴槿恵退陣キャンドルとの違いがある (嶺南大学校の研究によれば、2016〜2017朴槿恵退陣キャンドルに参加した20代は19.3%)。 朴槿恵退陣キャンドルには、 私の人生を変えるための多様な要求があった。 教育、労働、財閥、人権などの社会変化の要求だ。 瑞草洞、光化門キャンドルは、 2016年キャンドルのようにすべての人の「生活の問題」を代弁する方式ではなかった。 この点で、社会的弱者の議題を入れる広場が必要だと思う。 最近の自炊生総決起は、青年住居問題を引き出した。 政府、国家が責任を持ってこれを解決しろと声を上げた。 事実、こうした要求も足りないと思う。 一歩進んで青年貧困と社会二極化を引き起こした 既得権、財閥に対して責任を問う方向が必要だ。
シン・ジエ: 2016年のキャンドルでは市民が要求する「100大改革案」があった。 労働と福祉、教育など、すべての社会分野を総網羅して方向を提示した。 しかし闘争の終わりは「バラ色の大統領選挙」になり、改革は失敗した。 われわれは大統領選挙が終わりではなく、闘争のひとつの過程だと言うべきだった。 大統領が変わるだけでは社会を変えることができない。 キャンドルを「革命」だと言うのなら、新しい体制、共和国を作るべきだった。 朴槿恵退陣キャンドル以後、 これまで闘争の過程として続いてきたのはMeToo運動をはじめとする フェミニズム運動程度だ。 それぞれ異なるところで「これが国か」という叫びが社会の問題として、 また上がらなければならない。 私たちには新しい国のための新しい広場が必要だ。
「瑞草洞、光化門のキャンドルは、2016年キャンドルのようにすべての人の『生活の問題』を代弁する方式ではなかった。社会的弱者の議題を入れる広場が必要だ。」
チョン・ナウィ: まず2016年のキャンドルと瑞草洞キャンドルは、自発的闘争という共通点がある。 だが議題の拡張性と吸収性に明らかな差がある。 2016年のキャンドルには民主労総が参加して、 多くの活動家が驚いたのは多くの市民がさまざまな議題を吸収したという点だ。 だが瑞草洞キャンドルの議題拡張性は弱かった。 「私が�長�だ」 というスローガンで終わり、 検察改革を越える議題を作り出すことができなかった。
ユン・ジヨン: だが朴槿恵退陣キャンドルが残した成果もすべて民主党に渡った。 相変らず非正規職雇用が広がり、二極化は解消されず、 青年失業は今年は史上最悪を記録した。 社会改革を望んだ2016年のキャンドルはなぜ失敗したのか?
チョン・ナウィ: 朴槿恵退陣キャンドルの時に 1987年を経験した人と会った。 彼がずっと強調した言葉は 「闘争の成果を持てる者に与えるな」ということだった。 その人のように危機感が強くなかったのかもしれないが、 誰もがキャンドルの収斂点は文在寅だということを ぼんやり知っていたはずだ。 結局、制度政治を中心に対応され、キャンドルの成果が制度圏政治に吸収された。 多くの社会団体が集まった朴槿恵政権退陣 非常国民行動会議でも、 朴槿恵退陣までは一緒に行けるが、 その後を話せば答がないという前提が大きかった。 革命の段階まで行けなかった改革の成果は、 すべて権力に移動するという歴史を実際に感じた。 そうした多くの警告を聞いても、同じミスをしたわけだ。
シン・ジエ: 私もそれが失敗だったと思う。 朴槿恵キャンドルの後は、 市民に預けすべきだった。 彼らがシステムを変える選択まで行くべきだった。 全国民が広場に飛び出すほどなら、 国家システムのどこかに誤りがあるという意味だ。 朴槿恵国政壟断は、 政治・経済体制の問題をすべて表わさなかったのではないか。 二大政党制でこのシステムを維持することができないのなら、 キャンドルはこの限界を指摘して、 国民投票で議院内閣制であれ、二院制であれ、 政治構造を変える憲法改正に動くべきだった。
コ・グニョン: 民主党が政権を取った後、 進歩政治がどんな活動をしてきたのかも振り返ってみなければならない。 全教組は正規職化の議論の時に期間制教師を切り捨て、 民主労総は経社労委に参加するかどうかだけにしがみつき、 文在寅政府に対する判断を遅らせた。 正義党は第一野党の地位を自由韓国党に渡した。 その間、文在寅政府は 朴槿恵退陣キャンドルの要求を放棄して、進歩することができなかった。 限界は明らかなのに、進歩政治は代案をたてられず、 代案勢力を作ることもできなかった。 2年の歳月を浪費して、 韓国政治は二大政党体制に復帰した。
ユン・ジヨン: 文在寅と �長�は どちらも「公正社会」を強調した人物だ。 文在寅と �長�、 そして386世代につながる民主化世代が考える「公正」は、 現在大衆が渇望する「公正」から多少ずれているという気がする。
シン・ジエ: 386は過去には韓国社会変化の主役で、現在の主役でもある。 彼らは20代で学生運動に飛び込み、今まで社会から排除されなかった。 1980年代の民主化運動以後、彼らは国会で4選議員になったり、 ネイバー、カカオ、ゲームなどのIT業界を主導していたりもする。 彼ら自身は独裁政権に対抗し、国を変えたのだから、 権力を持つのは当然だと考えているのだろう。 一度は50代半ばの共に民主党の議員と青年政治について話をしたことがある。 彼は「自分はまだ権力を得られない」、 「まだ上があらゆる事を勝手にする人がいる」、「自分も青年」だそうだ。 青年世代はそれさえも持つのが困難で、だから不平等に対して怒っているのに、 彼らはそうしたことを理解したり意識するのが難しいようだった。 私は386に「あなたは20代の時、今の青年のような生活を送ったか?」と訊ねたい。 今の青年は、386が作った世の中で、集団と世代間不平等に酷使されていると考える。 各自渡世の社会で、社会の転換は夢のように感じられるので、 個人の努力で克服しようとするわけだ。 私は文在寅大統領が話した 「機会の平等」、「過程の公正」には同意しない。 政治、経済、社会、文化がまず人間らしく生きられる条件を作らなければならないと考える。 だから私は公正でない、別の単語が必要だと思う。
チョン・ナウィ: 完成車労組の一つが「組合員年俸1億ウォン」を目標にしたことがある。 386世代とは少しニュアンスが違うが、 87年民主労組世代も周辺部労働をする青年世代とは間隙がある。 もちろん集団化して評価することはできないが、 民主労組1世代は自分の取り分を占有するために、 次の世代の取り分を確保することができない面がある。 こうした誤りが続けば、違う方式で入ってきた同僚の労働者に対する 正規職青年労働者の怒りもまた続くだろう。 現在、すべての手続き、過程は試験で語られる。 ここで過程が違うからといって、その人が差別されなければならないのか? 賃金が少なくなければならないのか? 安全を保障されることができずに死ななければならないのか? そんな逆質問も必要だ。 IMF以後の新自由主義が作ったルールから抜け出すことが必要だ。
「文在寅大統領が話した『機会の平等』、『過程の公正』に同意しない。政治、経済、社会、文化がまず人間らしく生きられる条件を作らなければならない。」
ユン・ジヨン: 現在の韓国社会の不平等、不公正の問題は、 どんな変化から始まるのだろうか?
カン・ミンジン: 私は公正という単語の辞書の定義とは無関係に、 いつかは公正性という概念と正面から闘う時期がくると思う。 李明博(イ・ミョンバク)も公正な国をスローガンにした。 文在寅大統領も同じだ。 パルン未来党さえ続いて公正に言及する。 韓国社会における公正性は、連帯を拡張する概念ではなく、 自分のものをしっかり守らなければならないというように使われた。 これから既得権は公正をさらに強く語るだろう。 進歩政党と運動陣営はこれに対抗して代案的な声を作らなければならない。
コ・グニョン: �長�事態以後の公正性は、 社会的弱者のための声でなければならないと思う。 標的への矛先を転じなければならない。 弱者や少数者ではなく、今の資本主義の矛盾を作った財閥、 財閥と手をとった国家に向かわなければならない。 そして「公正」ではなく「平等」についての話をしていかなければならない。
チョン・ナウィ: 労働の立場としては、 文在寅政府は 低賃金、長時間、不平等労働体制を作った張本人だ。 弾力勤労制の単位期間を拡大し、週52時間制を無力化した改悪が代表的な例だ。 労組法を改悪する状況で、もう評価する余地がない。 不公正、不平等の問題を解決するためには、 一番下の層を押し上げることが重要だ。 上層や中間層ではなく、最低基準の権利を保障することに集中しなければならない。 最も重要な民主労総の課題だ。
シン・ジエ: 今の体制では大統領ひとりが変化をもたらすことは難しいと思う。 だから選挙制のようなシステムの再確立が必要だ。 平等はあまりにも当然の議題で、 協力とケアのメッセージを投げるべき時だ。 韓国では互いに面倒を見るという雰囲気が非常に弱い。 ジェンダー平等など、制度圏政治から抜けている議題もとても多い。 気候危機は地球の時間が8年しか残っていないと話す。 だが韓国社会は協力、ケア、持続可能を話さず、 �長�だけを論じて、 必要なことが出来ずにいる。 今、韓国社会が作ったフレームを越えた新しい談論が出てこなければならない。［ワーカーズ60号］
翻訳/文責:安田(ゆ)
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Created byStaff. Created on 2019-11-01 03:50:05 / Last modified on 2019-11-01 03:51:37 Copyright: Default
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