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米国のインド太平洋戦略に従う文在寅とその後

[ワーカーズ連載]己亥倭乱と弾除け(2)

イ・ジョンフェ 2019.08.24 10:31

米国のトランプ大統領が2次訪韓当時、 板門店で金正恩(キム・ジョンウン)国防委員長と会った。 世界に生中継されたその派手な電撃面会に隠れて、 まさにトランプ大統領と文在寅(ムン・ジェイン)大統領の首脳会談の内容は あまり大きく報道されなかった。 韓米首脳会談共同記者会見で 「韓国の新南方政策と米国のインド太平洋戦略間の調和がとれた協力を推進することにした」とだけ明らかにした。 しかし米国の国務省が配布した資料によれば 「米国の『インド太平洋戦略』と韓国の『新南方政策』の協力深化のための方案を摸索」し、 「韓米首脳は強力な韓米同盟がインド太平洋地域の平和と安保のリンチピン(linchpin・核心軸)だという点を再確認した」とする。 そして韓米はタイ、ミャンマー、ベトナム、カンボジア、ラオスなど メコン川地域の国家の経済的な独立と主権のための約束を再確認し、 メコン川地域を開放して革新的な地域デジタル経済を促進するという目標を共有したという。 また米国と東南アジア国家連合(ASEAN・アセアン)のスマートシティパートナーシップ等を通して、 サイバー・セキュリティの力量を強化すると付け加えた。[1] 額面そのままを見れば、 米国のインド太平洋戦略と反ファーウェイ戦線に韓国が列並びをしたことになる。

一方、7月10日に全経連が主催した 「韓日関係を通じてみたわが国の経済現況と解決法特別対談」での クォン・テシン全経連常勤副会長の発言に注目する必要がある。 彼は「日本の措置が突然だったという世論があるが、 4月に全経連が開催した韓日関係診断セミナーでも、 自民党が最悪のシナリオまで検討していると言及される程、 かなり前から何度も深刻な状況を知らせる信号があったのに (政府の)措置がなかった」とした。[2] そして日本はホワイトリストから韓国を排除した。

こうしたマスコミの報道を背景として見る時、 文在寅政権は 日本の経済制裁に対して戦略的判断をしたと見られる。 韓国が戦後、日本を先頭とする雁編隊から離脱して、 独自に動くことができるという判断をいう。 米国の最恵国待遇から卒業して長い現在、 米国との同盟を強化すれば経済・軍事部門などに関して日本を頂点とする垂直系列化を越えられるという計算があったのだろう。 これまでは経済と南北関係などの問題で中国と距離をおくことができない条件であり、 米国のインド太平洋戦略に留保的だったが、 今回決断したと見なされる。 それと共に日本の経済制裁も越えられると予測して、 その後持続的に米国に仲裁を要請してきた。

法曹人出身の文在寅大統領は、 自分が直接関与した慰安婦問題、強制徴用労働者問題を政治的に計算したりもしただろう。 しかし日本に対する今回の立場は、 韓日請求権交渉に関する紛争を根本的に終わらせる意志を示すものでもある。 雁編隊から抜け出そうとする文在寅政府にとって、さらに重要な意味を持っているためだ。 「1965年の韓日請求権協定は、国家保護権が消滅しただけで個人請求権は有効で、 1991年に日本外務省の柳井局長が、 そして昨年の韓国大法院確定判決の時に日本の河野外相が再確認した。 したがって、韓国大法院の日帝強制支配期強制徴用労働者に対する賠償判決は正当で、 日帝強制占領期間を不法と認めず、経済制裁という不当な処置は止めなければならない」ということが政府が出した立場だ。 そして韓国も日本をホワイトリストから除き、韓日軍事情報保護協定も破棄することに決定した。

パンドラの箱が開かれる

すると突然、客が割り込み始めた。 7月23日、中国とロシアの爆撃機それぞれ2機とロシアの早期警報統制機1機など、 合計5機の軍用機が韓国防空識別区域(KADIZ)を侵した。 韓国空軍は戦闘機18機を出撃させ、対応マニュアルにより警告放送、遮断飛行の段階を経て、警告射撃をした。 1953年の停戦協定締結以後、韓国の戦闘機が他国の軍用機に対して警告射撃をしたのは初めてだという。 日本は日本の防空識別区域(JADIZ)に入ってきたとソ連に抗議して戦闘機を出撃させ、 射撃までした韓国にも抗議をしたが、 笑うことも泣くこともできない状況だろう。 独島を含む韓国防空識別区域は、朝鮮戦争当時の1951年、 米太平洋空軍が設定し、独島が抜けた日本防空識別区域(JADIZ)は1969年、 日本が自衛隊法により設定したという点でもアイロニーだ。

そして中国は7月末、国防白書で初めてTHAAD問題に言及して 「米国は韓国にTHAADを配置することにより地域の戦略バランスを深刻に破壊し、 地域国家の戦略と安全利益を大きく傷つけた」と明示した。 一方、米国は中距離核戦争力(INF)条約から脱退した翌日の8月3日、 地上発射型中距離ミサイルをアジア内に配置する構想を発表した。 そして「どんな国もインド・太平洋を支配することはできず、そのようにしてもいけない」という米国国防長官は、 該当地域の同盟およびパートナーとの協議を経て配置すると言い、 候補地として韓国と日本をあげた。 中国の環球時報は「このミサイルは明確な攻撃型武器であり、 韓国に高高度ミサイル防衛体系(THAAD)を配置した衝撃より深刻」で、 「弾除けになるな」と警告した。

その前日8月2日、ロシアのドミートリー・メドヴェージェフ総理は ロシアが米国に太平洋戦争参戦の条件として掲げた島で、 今でも日本が領有権を主張している南千島列島4島の一つである イトゥルプ(日本名エトロフ)を訪問した。 安倍政権は4島全体を返してくれという立場から一歩退き、歯舞、色丹の2島だけを返してもらって平和条約を締結するという側に目標を下方設定したが、 ロシアは不動の姿勢だ。 安部政権の期待とは正反対に、 ロシアは南千島列島で実弾射撃訓練を実施し、 レーダー基地を新しく設置して、 地対艦ミサイル増強配置計画を推進するなど、 むしろ実効的支配を強化している傾向だ。[3]

結局、日本の韓国に対する経済制裁を契機としてパンドラの箱が開いてしまった。 埋められていたサンフランシスコ講和条約が前面に出てきたのだ。 植民犯罪を問う意図が誤りだという話ではないが、 ひざまずいて戦争犯罪を謝罪したドイツさえも植民犯罪に対する謝罪をしたことがないという事実で今、 韓日戦はその終わりを予想するのが難しい。 独島、釣魚島、千島列島はすべて今まで領土紛争を体験していて、 これに伴い今回問題になった防空識別区域は 韓日、中日、韓中、そして韓中日の3か国に重なっているので、 いつでも紛争の火種を抱いている。 ここにロシアまで割り込んだ。 次にまた防空識別区域に入って来たら、また射撃ができるだろうか。

米国のインド太平洋戦略に従う代価

韓国が米国に仲裁を要請した後に訪韓したジョン・ボルトン米国家安保補佐官は、 先に予想された通り仲裁を無視した。 彼は防衛費の分担金を請求し、 ホルムズ海峡での海上安保と航行の自由のための協力、 すなわち派兵を要請しただけだ。 そして政府はチョンヘ部隊の派兵を検討していると明らかにした。 トランプが帰った直後の7月25日、 韓国は垂直離着陸機のF-35Bを搭載する次世代大型輸送艦建造計画を出した。 事実上、軽航空母艦計画で、インド太平洋戦略の列に並んだ代価を受けたと見られる。 これまで念願の事業だった核潜水艦建造計画も遠くないと見られる。 そして国防部は今後5年間で軍事力の建設、運用に290兆ウォンを投入することにし、 来年の国防予算は今年より8%増額した50兆ウォンを編成したという。 最近、独島軍事演習が発表され、「独立軍」も選挙の票になると判断をしたのか、 不買運動をするように軍事演習も支持して清州F35A軍事基地も賛成すると言い出している。 すでに知らされた通り、中国と日本に続いて韓国も軍備強化に動いている。 これに北朝鮮もこれ見よがしに連日ミサイルを撃ちまくっている。 東北アジアが紛争地域になり、本格的に軍備競争に出ているのだ。 米国、ロシア、中国がグローバルファイアーパワー(GFP)基準軍事力1、2、3位で、 日本と韓国は6、7位の国家だ。

韓米同盟による米国への列並びにより日本の経済制裁を越えられると判断するとしても、 でなければ韓米同盟と日本の経済制裁に対する対応が別途に進められるとしても、 サンフランシスコ体制という戦後体制の歴史的背景に加え、 東北アジアでの政治・経済的、そして軍事的緊張は極度に高まっているのは事実だ。 そして、米朝間の核交渉による以後の朝鮮半島の政治軍事的地形の変化がその頂点でもある。

結論は全く同じだ。 「労働者弾除け」。 近い将来、到来すると予想されている世界的な景気低迷とからみ、 これによる東北アジア軍事的緊張が高まるだろう。 それだけ朝鮮半島・東北アジア平和地帯はさらに遠ざかっている。 今、不買を越えて、韓日だけでなく、 東北アジアの労働者民衆の連帯には意味があり、 さらに切実に、さらに強化されなければならない理由だ。[ワーカーズ58号]

[脚注]

[1] 米「韓米同盟がインド太平洋戦略のリンチピン」…中牽制協調示唆。東亜日報。 2019.7.4.

[2] 全経連「数回日本最悪シナリオ検討警告…政府傍観」主張。ハンギョレ. 2019.7.23

[3] 四方頑なに融通がきかない安倍外交…「何も解けるものがない」。 聯合ニュース2019.8.5

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2019-07-26 16:43:28 / Last modified on 2019-08-26 01:45:21 Copyright: Default

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