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ハノイを越える米朝対話と文在寅政府の役割

[ワーカーズ]朝鮮半島

ペ・ソンイン(聖公会大) 2019.07.31 12:31

中国の習近平国家主席の北朝鮮訪問に始まる10日間の朝鮮半島首脳外交が、 史上初めて板門店で南・北・米首脳会談を最後に幕を下ろした。 6月末に続いた首脳外交の結果を基礎として、 北朝鮮と米国間の非核化交渉の出口を開くことができるかどうかが下半期の 朝鮮半島情勢を左右する展望だ。

中国の仲裁者の役割(?)

中国最高指導者としては14年ぶりに北朝鮮を訪問した習近平は、 6月20〜21日に金正恩(キム・ジョンウン)委員長と首脳会談を開き、 北・中親善関係の強化とともに朝鮮半島非核化の実現に積極的な役割を果たす意向を明らかにした。 そして金正恩の立場を確認した。 その内容は 「非核化の意志」、 「北朝鮮の制裁緩和および体制安全保障希望」、 「北米交渉再開の意志」、 「南北対話基調維持」に要約できる。

今回の北中首脳会談では 「共産党が指導する社会主義国家を堅持することは北中関係の本質的な属性」 と、さらに強調された社会主義連帯意識を表出した。 これと共に習近平は 「朝鮮半島の非核化実現に中国が積極的な役割(建設性作用)をする」と明らかにした。

北核問題において中国が中国式解決法である、 いわゆる「中国方案」を提示したのだ。 既存の「双中断」、「双軌並行」が北核問題を管理する方式だったとすれば、 今度は「解決法」を提示した。 これは、米国式の「制裁による北核解決」の方法を否定し、 「安保の保障による北核問題の解決」を提示したのと同じだ。 中国が積極的に乗り出して北朝鮮の安保の憂慮を解消させるということだ。 そして金正恩委員長を説得し、 板門店、北米首脳会談を成功させる水面下の仲裁者役を果たした。 もちろん具体的な証拠はない。 しかしハノイ、北米首脳会談の決裂の原因とされる 「寧辺+α」で譲歩を受けたという意味がある。

北中首脳会談の結果を保証でもするかのように、 会談が終わるとすぐ6月22日に大連-平壌の直航路線が開設され、 沈川-平壌の直航路線も開設することにした。 中国から大規模な観光客が北朝鮮に行くことになるの。 企業家による平壌訪問も速くなる。 今まで平壌に入るには1か月程度時間がかかったが、これからは数日で良い。 中国の航空機が平壌に入るということは、それだけ経済的効果がある。 年間8万人の人員交流の増加と約800億ウォンの輸出代替効果があるという分析もある。 対北朝鮮制裁を緩和する役割も果たせる。 米国の代わりに、中国が相応する役割を果たすわけだ。

米国も相応の措置を

板門店会見を契機に、 米朝両国とも実務交渉チームの構成を事実上終わらせるなど、 また非核化交渉に速度がついている。 だが非核化の接近方式と初期段階履行措置など、 核心的な争点をめぐる間隙は相変わらずで、交渉は順調ではないだろう。

板門店の出会いで北米首脳は互いにワシントンと平壌に招いた。 平壌あるいはホワイトハウスでの出会いが実現すれば、 世界の外交史の1ページを飾る事件として記録されるだろうが、 米朝間に越えるべき山は多く、実際に実現するかどうかは未知数だ。

米朝首脳は早い(?)内に実務交渉を再開することにも合意した。 交渉パートナーもきちんと整理した。 既存のキム・ヨンチョル前統一戦線部長とキム・ヒョクチョル対米特別代表が抜け、 対外交渉ラインを北朝鮮外務省に交替した。 リ・ヨンホ外相を筆頭としてチェ・ソンヒ第一副長官、 リ・テソン副首相、クォン・ジョングン米国担当局長、 そして新しい対米交渉代表といわれるキム・ミョンギル前ベトナム大使まで、 対米外交陣容を備えたという。

険しい旅程が予想される実務交渉をどのように引っ張っていくのかに注目される。 北朝鮮が一貫して主張してきた非核化と補償方法論は、 いわゆる「段階的同時行動の原則」だ。 非核化と相応措置を低い水準から一つずつ合意して、 各段階別に履行が成功すれば次の段階に行こうという主張だ。 北朝鮮がハノイ会談の当時、寧辺核施設の廃棄と2016年以後に採択された 5種類の国連北朝鮮制裁解除に固執したのもこうした理由であった。

北朝鮮が主張する段階別履行は、 第1段階として将来の核に値する核実験やミサイル実験をしないということで、 その次の段階として寧辺または周辺施設を廃棄するということだ。 そして最後の段階として、 北朝鮮が保有する核兵器や弾道ミサイルの廃棄の問題を議論できるということだ。

だが米国は、将来の核と現在の核を扱おうとすると短くても5年から 長ければ10〜15年まで必要になると見ている。 その期間に北朝鮮は引続き核兵器を保有することになるのだ。 そのため米国は「同時併行の原則」を主張している。 つまり、北朝鮮の初期の非核化措置だけを合意に入れるのではなく、 すぐに履行しなくても廃棄の対象が総て網羅された最終目標に あらかじめ合意しておこうという立場だ。 トランプが板門店会談の後、急がないとして 「包括的な良い合意」をしようと強調したのもこのためだ。

したがって、今後再開される実務交渉では 「包括的合意」と「段階的合意」の間で 双方がどれほど柔軟性を持って交渉に臨むのかがカギになるだろう。

こうした状況で、 米国が北朝鮮の要求を一部受け入れる姿勢を示して、 北朝鮮との対話の進展の契機になるのかが注目される。 新しい交渉で米国が 「北朝鮮の核の廃棄ではなく凍結に満足することもある」という ニューヨークタイムズの7月1日の報道に続き、 米国の実務交渉チームを率いるビーガン対北朝鮮特別代表も、 北核の凍結を1次目標として議論を進展させることができるという立場を明らかにしたと伝えられている。 彼が強調した「柔軟な接近」の実体を説明したわけだ。 非核化に行く中間の過程で、将来の核の放棄を意味する核凍結を実現した後に、 完全な非核化に進むという交渉戦略だと解釈できる。

ただし、北朝鮮が核を凍結しても制裁解除はせず、 その代わりに人道主義的支援、人的交流拡大、平壌連絡事務所開設などを 与えることができると明らかにした。 非核化以前の制裁維持の原則を守るが、信頼回復措置等を通じて 段階別の補償を与える用意があるという意味だと解説される。

変数は制裁解除のない非核化交渉に北朝鮮がどれほど呼応するのかだ。 ビーガン代表が言及した相応措置は、 すでにハノイ談判の前から議論されてきたことなので新しいものではない。 そのため北朝鮮が「寧辺+α」を出す意志を引っ込めるかもしれない。 その上、まだトランプ行政府の立場が整理されていないのも実務交渉が遅れている理由だ。

文在寅政府には何ができるだろうか

北朝鮮と米国の対話はすぐ始まるだろうが、 文在寅(ムン・ジェイン)政府は何ができるのだろうか? 文在寅政府の朝鮮半島政策における最大の問題点として、 自律性の不足を強調せざるをえない。 自律性が不足しているため、朝鮮半島問題の当事者としての役割ができない。 米国が南北関係の独自の進展に制約を加えたせいもあるが、 文在寅政府が 自発的に米国に順応して、自ら自律性を失った側面が大きい。

文在寅政府はこれまで 非核化交渉と南北関係の好循環の構図を維持するために、 北朝鮮制裁の枠組みの中で判断し、決定をした。 このような基調によって自ら身動きの幅を狭めた。 非核化戦略を議論するために発足させた韓米ワーキンググループは、 南北協力事業を承認する窓口になった。 対北朝鮮制裁の下でも可能な南北関係の事業さえ、 米国を意識したために板門店宣言合意の履行がかなりの部分遅れた。

文在寅政府は 開城工業団地の企業家の施設点検訪問が制裁とは無関係だという立場を明らかにしつつも、 米国の同意が得られないとして遅延させた。 また2次北米首脳会談の決裂以後、 米国に開城工業団地および金剛山観光再開の可能性を打診したが、 非核化目標を達成するまで北朝鮮制裁を緩和しないという米国の確固たる原則を確認しただけだ。

このような態度は文在寅政府に対する北朝鮮の信頼低下につながり、 韓国の仲裁力量を弱めた。 北朝鮮は初めから米朝対話の進展次第で 南北関係を発展的に進展させるという意志を表明していた。

しかし文在寅政府は 南北関係の発展的な進展だけに焦点を合わせ、 あらかじめ結果を予想した。 2次米朝首脳会談が決裂すると、 北朝鮮は数回にわたり文在寅政府に対して露骨に不満を表出した。 2019年に入ってから南北間の正式な分科会談は一度も開かれず、 2019年3月末には3日で終わったが、開城共同連絡事務所から北側の人員を一方的に撤収させた。

対南宣伝媒体の「ウリ民族キリ」は7月14日、 「わが民族の運命は私たち自身」という文で 「米国の顔色をうかがい、南北関係問題を朝米交渉が進展するかによって推進するという南朝鮮当局の態度は、 平和繁栄に対する希望で明るくなければならない民族の顔に失望の陰を投げかけている」とし 「親米事大的な根性の発露であり、 民族の運命は自ら切り開くという南北宣言の根本精神の否定」だと非難した。 南側が韓米協調と対北朝鮮制裁の枠組み内で南北交流を推進することに対する不満を表わしたのだ。[1]

これまで文在寅政府は米国を選択し、 自分の善良な意志と真情性を北朝鮮が理解するだろうと勘違いした。 文在寅政府は南北関係を同じ民族だという民族的な観点と平和統一という一国的な観点で接近し、 韓米関係は同盟という帝国主義観点で接近したが、 結局、帝国主義を選択したのである。

したがって、北朝鮮としては米国の顔色をうかがい、 米国の裁可を受けて国家政策を決める文在寅政府は信頼できない。 そして韓国の優越意識も非常に不快だっただろう。 北朝鮮の低賃金労働力を云々したり、 いわゆる「朝鮮半島運転手論」を堂々と打ち出して韓国の主導的な役割に言及することは 非常に深刻な認識の誤りであり錯覚だ。 その上、文在寅政府は 韓国と米国、そして国際社会の経済的支援で北朝鮮社会を発展させられると考える。 その裏には北朝鮮の経済的水準を高め、統一をすることが副作用を最小化する 合理的な方式だと考えているのだろう。

北朝鮮はどこかの国に依存する外交はしない。 ただし相互間の信頼と役割関係が形成された時、 特別な関係として存在することはできるだろう。 そのためそれで文在寅政府の独自性が台頭したのである。

米国は帝国主義国家だ。 トランプ行政府は米国優先主義とトランプ優先主義を打ち出して、 国家の利益を最も基本的な目的としている。 彼らにとっては敵と同志の区分は特に存在しない。 何よりもトランプの登場は、 韓国社会における既存の関係と観念をすべて変えてしまった。 以前は米国の民主党が現在のトブロ民主党系列と選択的親和力を見せ、 米共和党は現在の自由韓国党系列と同じ関係を持っていた。 ところが今ではむしろ韓国の自由主義勢力が トランプへの支持と再選を祈る発言を吐き出している。 米国の民主党と共和党は基本的に政策的な差が大きくなく、 彼らはすべて自国の利益を常に優先視しているということを再度確認したのである。 文在寅政府が韓米関係をどう再構成し、 考えるべきかを理解しなければならない部分だ。

[1] 京郷新聞、2019. 7. 15

〈参考資料〉
ペ・ソンイン、「文在寅政府の朝鮮半島政策評価と課題」 〈進歩評論〉 80号、メーデー、2019.
イ・ソンヒョン、「板門店、北米首脳会談以後の中国の北朝鮮外交に対する展望」 〈情勢と政策〉 2019-6号、世宗研究所.

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


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