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最悪の二極化、最低賃金には罪がない

[ワーカーズ・イシュー(2)]最低賃金労働者と自営業者、そして財閥

キム・ハンジュ記者 2019.06.24 13:43

最低賃金が経済危機の主犯にされている。 保守政治圏やマスコミだけでなく、政府与党も加勢した。 6月13日に憲法裁判所では最低賃金引き上げ違憲訴訟の公開弁論が開かれた。 国会は4月までに何と20件の最低賃金改悪案を発議した。 文在寅(ムン・ジェイン)大統領は5月に「速度調節論」に言及し、 ホン・ナムギ経済副総理は6月に「最低賃金引き上げ効果を最小化する」と釘を刺した。 韓国労働社会研究所によれば、 保守紙と経済紙は昨年、平均2126件の「最低賃金バッシング」の報道をした。 これほどになれば6月に決定される最低賃金はすでに死亡宣告を受けたも同然だ。

最低賃金が急激に上げられたとしても、 それでも今年の最低賃金は労働者世帯の生計費の60%に過ぎない。 それでも最低「生計費」は再び「経済危機」という空砲の前で歩みを止めた。 果たして最低賃金の「急激な引き上げ」は、 低賃金労働者の生計も急激に押し上げたのだろうか。 ワーカーズが低賃金労働者たちの声を聞いた。

最低賃金引き上げを体感できない当事者

「最低賃金が上がったという感じは全くしません。 今月は180万ウォン程度を受け取りますが、ここから100万ウォンは学費ローン償還で出ていきます。 交通費20万ウォン、通信費8万ウォン、食費を払うと本当に何も残りません。 最低賃金より物価のほうがはやく上がると感じます。 最低賃金1万ウォンにならなければ映画一本も安心して見られません。」 (坡州出版団地のある会社で2年目契約職で働いている27歳のS氏)

「最低賃金が今より15〜20%ぐらいは上げなければいけないのではないでしょうか? 私はライダーで時給8430ウォンですが、実際の手取りは昨年と変わりません。 業者が週52時間制を導入して働く時間が昨年より減ったからです。 四大保険料も上がりました。 生活支出に耐えるのも苦しい。 貯めた金は住宅契約月2万ウォンだけです」。 (麻浦区のあるピザ フランチャイズ業者で配達労働をする25歳C氏)

統計庁による2019年1分期の家計動向調査によれば、 低所得層世帯の月所得は125万ウォンで、昨年から2.5%減少した。 1分位(所得水準下位20%)の家計所得は2015年153万ウォン、 2016年は144万ウォン、2017年は139万ウォン、2018年の1分期は128万ウォンと、 毎年減少した。 処分可能所得(租税などの非消費支出を除く金額で自由に処分できる所得)も 2015年は128万ウォン、2017年の1分期は114万ウォン、2019年の1分期は96万ウォンと減少した。

2分位も1分位と同じように、2015年以後から所得減少傾向を示した。 しかし高所得層(5分位、所得水準上位20%)の家計所得は2009年の662万ウォンから 2014年は812万ウォン、2019年の1分期は985万ウォンと上昇した。 1分位が10年間で月所得15万ウォン上がったが、 5分位の所得は323万ウォンも上がった。 現在、5分位の所得は1分位の8倍に達する。

1分位の家計所得は減ったが、消費支出は概して増加した。 1分位の消費支出は2009年に107万ウォン、2013年は125万ウォン、2016年は126万ウォンに増えた。 所得は上がらないのに物価上昇により、やはり支出だけが増えたわけだ。 最近数年間の物価上昇率は0〜1%台を維持しているが、低所得層としては違う。 彼らが主に消費するのりまき、ラーメン等の低価格食品の価格が暴騰したためだ。 食費だけではない。昨年基準月所得100万ウォン未満の世帯の交通費支出は 2017年よりも10%上昇した。 住居・水道・光熱費支出も8%も上がった。 交通費支出が上昇した所得区間は100万ウォン未満の世帯が唯一だ。 住居・水道・光熱の支出も100万ウォン未満の世帯が上昇幅が一番大きかった。 交通、住居などの基本的な生活さえ、ますます厳しくなっているのだ。 1分位の黒字率は2011年に-19.7%、2013年に-11.9%、2016年には-5.6%。 それこそ借金人生だ。

最低賃金攻撃に利用された「自営業者」

6月5日、ソウル雇用労働庁で最低賃金審議公聴会が開かれた。 2020年の最低賃金審議の開始を知らせる場であった。 この日の公聴会は、 最低賃金労働者3人、自営業者3人が出てきて、 最低賃金委員会に意見を伝える形で進められた。

「カフェで働いていた時、最低賃金ももらえなかった。 若いという理由で、アルバイトは簡単だという理由で、 きちんと代価を受けとれない。 今でもアルバイトをする友人は、賃金がとても少ないと話している」。 (パク・ジョンウン、青年ユニオン)

「最低賃金を2〜3%上げるということは、700万の零細自営業者に死刑を宣告するようなものだ。 今年、ほとんどのコンビニが勤務時間を分けたり、人員を削減した。 最低賃金が支払能力がある業者を支払能力がない状態に追いやっている」。 (シン・ソンウ、慶北コンビニ加盟店協会代表)

「イーマートは最低賃金が上がったといって、勤務時間を週40時間から週35時間に減らした。 実質賃金は何も上がらず、労働強度だけが強まった。 われわれは新世界、ロッテという大財閥で働いているが、 最高賃金になってしまった最低賃金から抜け出せない実情だ」。 (パク・サンスン、イーマート支部副委員長)

「2018年、2019年の経済成長率は2.0%、2.7%だが、 最低賃金引き上げ率は16.4%、10.9%だ。 小商工人にとっては泣きっ面にハチだ。 経済が成長しなければ賃金が上がらない、 賃金で経済を成長させるというのは話にもならない」。 (イ・グンジェ、瑞草区小商工人連合会副会長)

公聴会ではなく「乙たちの戦い」が行われた。 公聴会の途中に「なぜ最低賃金委員会で乙どうし争うのか」という指摘も相次いで出た。 では本当に自営業の危機は最低賃金によるものだろうか?

まず自営業危機と最低賃金引き上げの相関関係を確かめてみた。 自営業者の割合は2008年に25.3%、2012年は23.1%、2014年は22.1%、2018年は21%で、 数年前からずっと減少していた。 最低賃金引き上げ幅が低かった李明博政権の時も、自営業は危機だったわけだ。 国税庁によれば、自営業の新規対応廃業率も2013年は86.9%、2015年は69.2%、2017年は72.2%だった。 最低賃金の引き上げ幅と自営業景気の好況・不況の相関関係は見られない。 2017年基準、韓国の自営業の割合はOECD会員国のうち5位だ。 自営業者数があまりに多いため、出血競争、過多出店による衰退が数年前から自然に現れたのだ。

今度は自営業人件費を調べてみた。 ウリ金融研究所によれば、小商工人の売上額に対する人件費の割合は、 2015年は10.3%、2017年は11.0%に過ぎない。 2019年の最低賃金を適用した時、人件費の割合は12.2%(基本家庭推定値)だ。 経済社会労働委員会が3月に発表した資料でも、 10人未満の事業場の人件費の割合は12.8%だった。 統計庁によれば、フランチャイズチキン店の場合、 人件費が2015年の8.5%から、2017年には7.2%へと減少した。 増加したのはその他の営業費用だ。 営業費用には材料費、クレジットカード手数料、加盟手数料などが含まれる。 KB金融持株経営研究所は6月の自営業分析報告書で、 最近急激に増加したチキン店廃業は、最低賃金の引き上げではなく、 競争の深化、費用の上昇による影響が大きいと明らかにした。

その他営業費用のうち大きな部分が「本社加盟手数料」だ。 コンビニは、本社による加盟店の搾取が最も激しい業種の一つだ。 共に民主党のキム・ヘヨン議員によれば、 コンビニ加盟手数料の割合は15%から70%までだった。 統計庁が明らかにした2017年の全国コンビニ月平均売り上げは約4000万ウォンだ。 加盟手数料割合が70%の場合、本社は何と2800万ウォンを持っていく。 店主に残るのは1200万ウォンだ。 この中から本人を含むアルバイト労働者の人件費、カード手数料、契約形態による賃貸料、備品使用料などを払う。 2017年基準コンビニ店主の平均収益は200万ウォンにもならない。

6月17日に韓国中小商人自営業者総連合会などが参与連帯で記者会見を行い、 「財閥大企業と不公正な競争をしている中小商工人、 自営業の市場環境をそのままにして 『底の抜けた瓶に水を注ぐ』のように最低賃金だけを恨む保守言論と政界を、 われわれは厳しく糾弾する」と明らかにした。

会長さんの時給を公開します

最低賃金労働者と自営業者が貧困の沼にはまる間、「会長さん」たちはどれくらい稼いだのだろうか。 GSグループの許昌秀(ホ・チャンス)会長は昨年、配当金158億ウォンを得た。 2017年の配当金102億ウォンより55%増加した金額だ。 年俸77億まで足せば、総収益は235億ウォンにのぼる。 許会長が昨年稼いだ金を時給に換算すれば1161万ウォン(235億ウォン÷2017年基準年間労働時間2024時間)だ。 最低賃金の労働者が一日9時間、154日(1390時間)働き続けて稼ぐ金だ。 GSグループの営業利益は5126億ウォン、利益余剰金(社内留保金)は9兆8971億ウォンにのぼる。 GSリテイルの営業利益も214億ウォンにのぼる。 GSリテイルの営業利益は前年度1分期の営業利益に対してせいぜい1%下落した

イーマート、イーマート24を通じて多くの最低賃金労働者を吸収している新世界の李明姫(イ・ミョンヒ)会長の昨年の配当金も137億ウォンになる。 李会長は配当金の他にも新世界から10億6700万ウォン、 イーマートから30億6900万ウォンの給与を受け取った。 これらをすべて足せば178億ウォン、時給にすれば879万ウォンだ。 最低賃金1053倍に達する金額だ。 今年の1分期の新世界の営業利益は1096億4756万ウォン。 利益余剰金は何と3兆462億ウォンだ。

自営業の代表走者であるチキン店。 チキン店の業界1位は1659の店舗を持つBBQだ。 ジェネシスBBQの昨年の営業利益は182億3189万ウォン(連結包括損益計算書)だ。 ジェネシスBBQの最大株主は84.44%の株式を保有する(株)ジェネシスだ。 (株)ジェネシスの株式は尹洪根(ユン・ホングン)会長一家が100%保有している。 尹会長一家のジェネシスの株式評価額は212億ウォンに達する。

最低賃金の引き上げで国がほろびると揺れた昨年、 10大グループの財閥総師配当金は歴代最大を記録した。 財閥ドットコムによれば、サムスン電子の李健煕(イ・ゴニ)会長は4630億ウォン(サムスン物産の配当含む)、 LGグループの具光謨(ク・グァンモ)会長は518億ウォン、 ロッテグループの辛東彬(シン・ドンビン)会長は258億ウォン、 現代自動車グループの鄭夢九(チョン・モング)会長は887億ウォン、 SKグループの崔泰源(チェ・テウォン)会長は684億ウォンを配当された。 10大財閥の配当総額は7572億ウォンだ。 昨年よりも42.4%増えた。 財閥の年間配当金を時給に換算すれば数千万ウォンにのぼる。[ワーカーズ56号]

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2019-07-04 06:00:19 / Last modified on 2019-07-04 19:46:45 Copyright: Default

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