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韓国社会の転換期-「17体制」

[ワーカーズ]連載

イ・ジョンフェ 2019.06.11 11:13

[出処:ホン・ジノン]

祭りは終わった

自由韓国党の羅卿ウォン(ナ・ギョンウォン)院内代表と議員の拳は悲壮だった。 彼らは連動型比例代表制と公捜処(高位公職者不正捜査処)法阻止のために 広場まで掌握して独裁打倒憲法守護を叫び、 まるで30年ほど前の6月のようだった。 それでも彼らを87年に独裁打倒・護憲撤廃を叫んだ労働者民衆と比べるのではない。 軍部独裁で死んだ子供の代わりに、 あるいは手配された子どもが見つかるかと思って路上に出てきた お母さん、お父さんに喩えるのでもない。 しかし彼らの苦闘は、彼らが独占してきた70年の分断体制と 生活の基盤を握るためのすさまじい闘争であることは認めなければならない。

また6月だ。 「87体制」は、闘争で民主化の出口を開いたという点で歴史の進展だった。 しかし、同時に分断体制を基盤としていたために未完だった。 そして97年の外国為替危機を契機に新自由主義資本蓄積体制が全面化されて 韓国社会は不安定労働体制に再編された。 生存権に基づく暮らしが崩壊し、民主主義も崩壊した。 続いて女性が労働市場に編入されて家父長的国家と家族中心体制が揺らぎ、 女性と青年が声をあげ始めた。 分断体制の硬直性は柔軟な新自由主義体制とは合わず、 危機の資本には鉄条網の北も引き立って見え始めた。 これでまた労働者民衆が街頭に出てきたが、政権は自由主義者のものになった。 そして16年の広場闘争以後に盛んだった改憲議論はなかったことになった。 こうした条件で、自由主義政権にも選挙区制改編は気が向かなくなる。 彼らはすでに小選挙区制と分断体制の政治的パートナーであり、 朴正煕(パク・チョンヒ)時期に維新政友会を作り、 比例代表議席1/3を与党に優先配分した厳酷な時期にも与党と共にいた。 しかし少なくとも現在、 これまでの分断体制の亀裂が制度的な形態で現れ始めたという点は明らかだ。

韓国社会の歴史的経路を「87体制」として、 そして新自由主義体制に全面再編され始めた1997年を起点として 「97体制」と分けたりもする。 このような脈絡で、2017年の広場闘争以後、 階級的再編が全面化されたという点で、 その後を韓国社会の転換期とする「17体制」と呼ばれるだろう。

理念のくびきを越えて

文在寅(ムン・ジェイン)政権以後、 南北首脳会談だけでなく北米首脳会談まで開かれたが、 非核化はまだ可視距離に入ってこない。 過去に金大中(キム・デジュン)大統領が北朝鮮を訪問した後、 分断解消のための努力はあったが、 分断の開始がそうだったように韓国は当事者の地位にない。 同じ理由で北朝鮮は米国を見て、 核とこれを発射するICBMのような兵器を生産し、力比べをしてきた。 その後、米国の歴代大統領とは違い、 陣営の論理から自由なトランプが当選すると米朝間の交渉への期待が広がり始めた。 現在まで二回の北米首脳会談は、 相変らず非核化の出口を開けずにいるが、その可能性は開かれている。

分断を基盤として維持された南北の70年政治体制にも終わりが見える。 頭の中で社会全般を締めつけた国家保安法は生きているが、 その役割は終わりそうだ。 前述のように体制を維持してきたあらゆる悪法は相変わらずだが、 保守政治を再生産する選挙法に亀裂が入っている。 積弊と呼ばれた体制、機構は相変わらずだが、全てが維持されることはないだろう。 これはもうひとつの広場闘争の役割でもある。

しかし部分的な連動型比例代表制が採択されて自由韓国党、民主党の独占体制が崩れたとしても、 広場で提起された問題と要求を受け止める器がない。 色あいが明らかな緑色党を除けば、社民主義を打ち出した 正義党の政治的ポジショニングはまだ流動的だ。 一部は広場闘争の時に提起された問題を政治的に組織する スペインのポデモスの経験を実験したりもしたが、 分断イデオロギーの理念地形を越える政治的な旗じるしを確立しようとする流れは見られない。

またトリクルダウン効果論か

文在寅政権は、 国家が所得に財政を投入し景気を浮揚させるという所得主導成長論を出した。 いわゆる「97体制」を経て資本所得が増えただけ、 労働所得が減るという所得の不均衡が拡大してきた。 これで資本の社内留保金1500兆に個人負債1500兆という極端な所得不均衡の時代に入り、 それだけ所得主導成長論は拍手を受けた。 政府は公務員などの雇用機会拡大、非正規職の正規職化、最低賃金引き上げ、 労働時間短縮などと共に福祉予算を大幅に拡充した予算案を出した。 こうした政策基調は70年代末〜80年代初めに長い間のケインズ主義政策の余波で インフレと景気低迷が共に来るデフレーションでも 英国やフランスが銀行と企業を国有化するなど、 所得中心の財政拡張政策を取った事例以来ほとんど初めてではないかと思う。 世界恐慌の性格が違うので政策の特性も違い、 そもそも比較対象にならないかもしれない。 しかし朴正煕(パク・チョンヒ)政権以来、今までの政策は常に資本中心であり、 「97体制」後も変わらなかった韓国では、ほとんど最初の試みであった。 2008年の世界恐慌期に4大河川事業のような拡張的財政政策を実施しつつ、 いつも聞かされた「トリクルダウン効果論」以外の代案はなかった。 当時、米国のオバマ大統領は、連邦最低賃金を時間当り7.25ドルから10.1ドルに上げるため、 年頭教書で最低賃金引き上げに反対する共和党議員に 「1年に1万5000ドルにならない金で家族を養えると心より信じているのなら、 一度そのようにして暮らしてみろ」と一喝したことがある。 そして日本の安部政権が企業に最低賃金引き上げを促し、強制した時さえ、 私たちには遠いことだった。 落ちる水滴を期待するので大地はとてもかわいていた。 結局その熱気は広場のキャンドルになり、所得主導成長はそれだけ大きな期待を受けた。

しかしそもそも資本に対する強制、統制ない所得主導成長論は空しい絵だった。 健康な資本主義を望む財閥改革さえ水泡になり、 労働費用を拡大する所得主導成長論に対する資本の反発はすでに予想されていた。 しかも、もうひとつの世界的な景気低迷が始まり、財政拡張政策は方向を変えている。 政府は2019年経済政策方向で24兆ウォン規模の予備妥当性を免除しつつ、 GTX着工、南部内陸高速鉄道事業、現代本社新築といった大規模土建事業を出した。 これだけでなく、公共部門と共に所得主導成長のテコとして活用できる 大宇造船、ウリ銀行などの国有企業の民営化も推進している。 労働者には最低賃金引き上げと労働時間短縮効果を削減する弾力勤労制度、 労働三権を無力化する法案を経社労委を通じて強制している。

では、また落ちる水滴に頼るのか。 事実、民主党だけでなく、 正義党まで所得主導成長論に声を高めてきたのだから他に代案は見あたらない。 緑色党と労働党が基本所得を出しているが、 ヨーロッパでは右派の代案として実行されたりもする所得の再分配政策でしかなく、 代案とするのは難しい。 新自由主義体制は寿命がつき、 生活が奈落に落ちている不安定労働体制を越える抜本的水準の代案が提示されるべき時期だという診断は、 すでに世界的な共感を得ている。

私の人生を変える政治

2016年末に始まった広場闘争に6か月で1700万人が道路に出てきた。 概して不安定労働者や、差別と排除の標的になった学生、青少年、 そして女性だった。 広場のキャンドルは全面化された差別と排除に対する闘争だった。 こうした差別と排除は整理解雇と派遣制を始め、 新自由主義資本蓄積戦略が全面化された97年の不安定労働体制に起因する。 正規職と非正規職、男と女、正常と非正常などに分れた差別と排除だ。 動員の秩序は既存の労働組合などの秩序とは違い、 あるいはささいなものに見える生活の多様な問題を中心として旗が翻った。 特に、多様性と差を掲げて女性嫌悪と年齢主義などを提起し、 内面の政治革命に進もうとした。 多様な旗の下で多様なパフォーマンスが形成され、それが広場の力になった。 そして87体制の受恵者であり自由主義政権の民主党が新自由主義蓄積戦略を採択し、 崩壊した民主主義を大衆の闘争で下からの復旧した [1] 。 それでもその政治的帰結は自由主義政権に行った。

2007年末以後、全世界を揺るがした金融危機に続く世界恐慌は、 百年ぶりの恐慌だという比喩が面目を失わないほど沈滞が深かった。 最近、米国だけが回復の兆しを見せたが、 すぐ新しい沈滞に入るという予想が支配的だ。 恐慌以後に量的緩和で需要を支える、大規模財政赤字を根幹で維持される、 いわゆるニュー・ノーマル時代に入ったが、 代案的資本運動の展望は見られない。 一方、こうした景気の低迷は資本の危機であると同時に 労働者民衆の危機として近付いてきた。 米国、EUなど中心部の危機は、量的緩和などで労働者民衆に転嫁された。 地球的水準の労働者民衆の生活の危機は、 アラブの春、ウォールストリート占拠闘争(OWS)、南欧を中心にするヨーロッパの 労働者民衆の闘争のように革命的に表出され、政治的に異なる様相に帰結した。 ヨーロッパと米国の闘争と選挙では組織された労働の階級代表性が弱まり、 これに基盤する既存の政党体制が崩れたり揺れた場合を見てきた。 同時に闘争による階級形成と政治的組織化の事例は多様に表出され、 相変らず競争している。 闘争の組織化によるスペインのポデモス、 日常的な街頭の組織化を政治的にまとめたイタリアの五つ星運動、 既存の政党秩序を否定して「アン・マルシュ(共和国前進)」という 独自の組織化により執権したフランスのマクロン、 金融危機以後、街頭に追い出された不安定労働者の組織化により、 既存秩序への編入を試みた米国のサンダース、 ラストベルトを基盤として既存の秩序に乗って執権に成功したトランプなどの場合がそうだ。 [2]

特に米国では社会主義者と民主社会主義者などの州議会や連邦議会での躍進は、 右翼の跋扈と対比される。 韓国より強固な両党体制を越えられないとはいえ、 韓国に劣らない理念地形に現れた現象として トランプの極端な民族主義的性格に比肩すれば目立っている。 [3]

しかし韓国では大統領選挙を経て広場の熱気が静まり、 制度に引入れられて広場の問題と闘争が政治的自由主義者の定規で裁断されている。 積弊勢力は相変らず温存され、拳を突き上げて体制維持にもがいている。 キャンドルの熱気、広場の闘争が自分の人生を変える政治の主体として立っていないという点で、 韓国社会は岐路に立っている。 分断体制の理念的くびきを破り、適者生存の崖っぷちに追い出された人生を変える労働の価値が全て実現される社会に進む政治主体としての宣言こそ、 16年の広場闘争を決着させるのだろう。 そしてこの決着もまた広場での闘争によってのみ可能だろう。[ワーカーズ55号]

[1] [2] 2007年社会変革労働者党政治キャンプ開幕講演提案発表文『広場闘争以後、革命後の革命を見通しながら』を引用|承認、援用する。

[3] 〈米国社会主義者らの跳躍をどのように見るだろうか〉、キム・ソンチョル、「ワーカーズ」46号、2018.9.

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2019-06-11 17:48:55 / Last modified on 2019-06-18 16:39:02 Copyright: Default

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