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「2年残った定年、復職してぜひ看護師ガウンを着たい」

[ワーカーズ ルポ]創造コンサルティングと嶺南大医療院労組破壊に対する嶺南大医療院支部の14年闘争

ヨンジョン(ルポ作家) 2019.06.10 11:00

嶺南大医療院闘争が始まってから14年が流れた。 2006年、労働組合は週5日制の施行による人員補充と非正規職の正規職化など、 既存の団体協約の履行を要求した。 嶺南大医療院使用者側は創造コンサルティングのシム・ジョンドゥ労務士と 団体交渉担当契約をして、労組破壊シナリオを使って組合員が950人だった労組を 70余人の少数労組にした。 その過程で解雇されたクァク・スンボク・パク・ムンジン・ソン・ヨンスク三人の労働者はまだ現場に戻れず、 13年間復職闘争をしている。 解雇者復職と労組脱退源泉無効を要求して闘争している保健医療労組嶺南大医療院支部の話を読者と分けたい。

▲左からパク・ムンジン指導委員、キム・ジンギョン支部長、ソン・ヨンスク副支部長[出処:ヨンジョン作家]

元職復帰、労組原状回復、積弊清算、営利病院反対

5月20日午前、大邱南区嶺南大医療院の本館入口ロビー。 「嶺南大医療院解雇者元職復帰」、 「嶺南大医療院労組脱退源泉無効」と書かれたチョッキを着た三人が 両手をきちんとあわせて立っている。 暫くして彼らは床にひざをついて礼をする。

「労働解放元職復帰、 原状回復、 積弊清算、 営利病院反対」

小さなスピーカーから流れるスローガンが終わると、また立ち上がり、 両手をあわせて108拝を続けていく。 受付窓口の待合室で順番を待っていた患者と保護者たちがこの姿をぼんやりとながめる。 歩みをしばらく止める人々もいる。 三人の切実な身振りから、堂々とした気品が感じられる。

「108拝闘争」をしている パク・ムンジン(嶺南大医療院支部組合員・保健医療労組指導委員)氏とソン・ヨンスク(嶺南大医療院支部副支部長)氏は、 嶺南大医療院の看護師として働き、 2007年2月に解雇された。 解雇されてから今年で13年になるが、 彼らは嶺南大医療院を離れられずに元職復帰と労働組合原状回復を要求して闘争している。

嶺南大医療院労使問題の発端は2004年に遡る。 2004年の週5日制施行で嶺南大医療院労使は 人員補充と非正規職の正規職化などに合意したが、 病院側はこれを守らず団体協約40件に違反した。

2006年6月8日、嶺南大医療院の労使団体交渉が始まると、 労働組合は人員補充と非正規職の正規職化など既存の合意事項の履行を要求した。 当時の労組側要求には「週末患者・保護者無料駐車施行」と 「保護者がいない病棟作り」など、 医療民主化に関する内容も含まれていた。 労働組合は団体交渉で保護者のベッドと患者休憩室の設置、 説明を受ける権利を含む患者の権利確保、 病室TV無料視聴などの医療民主化を粘り強く要求してきた。

労働組合はその年の団体交渉は順調だと予想していた。 だが病院側は既に労働組合と合意した団体協約履行の不可を主張して、 交渉を混乱させた。 事前に全く議論がなかったチーム制を導入すると通知した。

労働組合は嶺南大医療院が創造コンサルティングの労務士、 シム・ジョンドゥ氏に団体交渉全般を担当させ、 労組破壊シナリオにより団体交渉を進めていたという事実を後で知った。 シム・ジョンドゥ氏は2004〜2005年頃、 保健医療労組と金属労組産別交渉で使用者側の代表として出て来て 交渉の混乱と長期化を誘導した人物だ。

交渉懈怠から労組無力化まで、労組破壊シナリオ

2006年に労組の事務局長になったソン・ヨンスク氏は、 当時の一連の状況は創造コンサルティングのシム・ジョンドゥ氏と使用者側が 労組破壊を共謀した結果だと話す。 故意に交渉を混乱させてストライキとその後の状況を誘導したという。 当時、労働組合はチーム制の実施による労働強化と競争強化・構造調整などを憂慮し、 使用者側に合意を要求した。 だが使用者側はチーム制施行を固守して団体交渉は混乱の道をたどる。

▲右からソン・ヨンスク副支部長、パク・ムンジン指導委員、保健医療労組大邱慶北本部カン・ドンミン組織部長[出処:ヨンジョン作家]

「会社が交渉中にチーム制を突然持ち出したので、 労組は交渉を終わらせて職員全体公聴会で共に話そうといいました。 パク・ドンチュン医療院長も面談で分かるといいました。 しかしすぐ翌日、医院長はそんなことを言っていないと言葉を翻しました。 首を縦に振ったことが合意なのかと言って。」 (ソン・ヨンスク副支部長)

その年の7月19日、パク・ドンチュン医療院長は労組との面談で、 チーム制施行を留保して団体交渉後に議論することに合意した。 これで事態はひとまず収拾がついたように見えた。 だが直ちに翌日、キム・オリョン医院長は再び前日の合意をひっくり返した。 結局、使用者側は8月1日に一方的にチーム制を施行し、大規模な人事発令を出した。

「普通はストライキの日が近付けば、 ストライキの前日や明け方まで徹夜で交渉をします。 ところがストライキの前日にも使用者側からは誰も出て来ませんでした。 組合員たちはストライキ前夜祭をしながら待っていたのに。 使用者側に交渉する気持ちがないのでストライキに入るしかなかったんですよ。」 (ソン・ヨンスク副支部長)

7月末から8月24日のストライキ前まで、 使用者側は一度も交渉に出てこなかった。 結局、労組はストライキに突入した。 患者に不便をかけないために、一日200人程度の組合員が参加する部分ストを4日間進めた。

使用者側は慶北地方労働委員会が労組の調整申請に対して行政指導の決定をしたことを口実として、 労組のストライキは不法だと宣伝した。 そして集会と座り込み・壁新聞の作成・団体Tシャツ着用など、 労組のすべての活動を不法と規定した。 また使用者側は、労働組合の座込場を撤去して暴力事態を誘発し、 労組の幹部を告訴・告発・懲戒した。 その後、病院側は社内通信文で労組が暴力を行使したと主張し、 労組の謝罪を要求して労使関係を混乱させ続けた。

「支援の仲間がきてテントを張ると、 病院の医者や救社隊がきて暴力を誘発するのです。 外が暗いので支援の仲間たちの敏感な部分に触り、メガネも奪いました。 そして私たちが暴力を行使したという通信文を病院に上げました。 私たちが直接暴力を行使したことはないのに、 労組の幹部は刑事告訴・告発されて禁固刑を受けました。」 (ソン・ヨンスク副支部長)

使用者側は2006年の4日間の部分ストと労組幹部に対する刑事処罰を理由として 10人を解雇(裁判所判決で7人復職)し、28人を懲戒した。 50億ウォンの損害賠償を請求して、 組合費と労組幹部個人通帳が仮差押さえされた。 十数台のCCTVを追加で設置して労組活動を監視し、 二回にわたり団体協約を解約した。 同じ件で労組幹部に対して3回の懲戒と労組脱退強要など、 数年間の労組弾圧が続いた。

このようにして嶺南大医療院では、 創造コンサルティングのシム・ジョンドゥ労務士の 労組破壊シナリオ(交渉不参加・懈怠→ストライキ誘導→改悪案提示→団体協約一方解約→懲戒・損害賠償・告訴・告発→組合員脱退・労組無力化)が 進められていた。

クァク・スンボク支部長とソン・ヨンスク当時事務局長、 パク・ムンジン指導委員は結局復職できなかった。 パク・ムンジン氏とソン・ヨンスク氏は中労委で不当解雇を認められたが、 大法院で敗訴した。 解雇された労働者たちは、 地労委と中労委で嶺南大医療院使用者側代表として参加したシム・ジョンドゥ氏と会った。

「これを見ましたか?」

ソン・ヨンスク副支部長は、 使用者側が地労委に提出したという130ページが越える分厚い資料を取り出した。 会社のCCTVで組合員の一挙手一投足を拡大撮影し、 カラーで出力した写真資料集だった。 病院はこの資料を利用して1人に同じ件で期間を分けて、何度も懲戒した。

組合員強制脱退、950人が70人に

2007年、病院は創造コンサルティングのシナリオの最後の段階である 組合員脱退と労組無力化プランを施行した。

「部署移動のような人事権を使って揺さぶるんです。 同じ脱退事由が書かれた様式を配り、 出勤前に集団で院内の郵便局に行って送らせます。 脱退書が一日に30〜40枚入ってきました。 夜間勤務が終ると看護師長やチーム長が更衣室にきて、 脱退書にサインするまで帰しません。 それも粘れば教授までがきて、 後輩が就職できないといった形で圧迫するので耐えられる状況ではなかったのです。」 (パク・ムンジン指導委員)

病院は労働組合の無力化のために、 中間管理者と言える主任看護師の脱退作業から始めた。 そして非正規職には雇用を担保として脱退を強要した。 組合員が多い部署の部署長は無能だという評価を受けた。 使用者側が2007年から1年間で脱退させた組合員は850人にのぼる。 950人だった組合員は3年後に70余人に減った。

そして2012年、国政監査と聴聞会を通して嶺南大医療院、 ユソン企業、ヴァレオマンドなど14の労働組合を破壊し、 168の企業に労組破壊コンサルティングをしてきた創造コンサルティングの 蛮行があらわれた。

嶺南大医療院労働組合は、創造コンサルティングの二番目の標的だった。 創造コンサルティングがユソン企業の使用者側に送ったコンサルティング提案書には、 嶺南大医療院労組強制脱退などの労組破壊事例を彼らの実績として広報する内容も記されていた。 不法ストライキにするために地労委の行政指導を誘導し、 これを活用することも創造コンサルティングのシナリオだったことがわかった。

シム・ジョンドゥ氏の労務士登録と創造コンサルティング設立認可は取り消され、 シム氏などは最近「労働組合および労働関係調整法」違反で実刑宣告を受けた。 しかし、解雇された労働者たちは相変らず現場に戻ることができず、 強制脱退させられた組合員たちも、労働組合に戻れずにいる。

輝いて美しかった時期、もう現場に

嶺南大医療院支部は2006年以後、 ロビー座り込みとテント座り込み、鎖座り込み、断髪闘争、 クァク・スンボク当時支部長の37日のハンストと幹部同調ハンストなど、 数えられないほど闘争をしてきた。 2011年には当時、保健医療労組委員長が賃金・非正規職処遇悪化、 生理休暇有給を無給に変更するなどの団体協約に職権調印し、 この問題でも苦しい時間を過ごさなければならなかった。

2011〜2012年、パク・ムンジン、ソン・ヨンスク氏はソウルに上京し、 地下室生活をしながら嶺南学院の実質的運営者である 朴槿恵(パク・クネ)前大統領に解雇者復職などを要求する「影闘争」を展開した。 朴槿恵氏の三成洞の自宅をはじめ、 国会やソウル駅、光州・江陵など、済州道を除く全国をすべて走り回った。 2012年の大統領選挙の前は、 パク・ムンジン指導委員が「石仏も背を向ける」という三千拝を57日間行った。 少しどころか17万回の礼をしたが、 刑事を通して「あれで倒れればどうする」が 朴槿恵氏から聞いた最初で最後の回答だった。

嶺南大医療院解雇者問題と労組脱退源泉無効の要求は、 支部の団体交渉の案件にも上がらないが、 2013年には特別要求案の形式で上がっている。 だが使用者側は「交渉の対象ではない。法的根拠がない」 という理由で議論を拒否している。

病院が大邱地方法院に提起した解雇者10人に対する 「立入禁止および業務妨害禁止仮処分訴訟」と、 労組を相手に提起した5億ウォンの損害賠償は棄却され、 さらに創造コンサルティングの労組破壊の転末が現れたにもかかわらず、 病院は相変らず彼らの法的無欠陥を主張している。

キム・ジンギョン支部長は責任の主体が明確ではないことも問題だと言う。 嶺南大医療院の代表は医療院長だが、 職員の任命状は嶺南学院財団理事長の名義で出されるので、 見たら医療院と財団が互いに責任をなすりつけるピンポンゲームをしているというのだ。

「解雇者復職が最も優先だが、 解雇者の犠牲で現在まで来ました。 使用者側は13年引っ張って来たこの問題を解決するために、決断しなければなりません。 その為には今年は強力な闘争で地域闘争に拡散させ、 社会的な問題として知らせて必ず元職復帰を争奪します。 労組脱退源泉無効闘争も継続します。」

108拝が終わった後、 パク・ムンジン指導委員・ソン・ヨンスク副支部長と昼食をして、 嶺南大医療院を散歩をした。 ベンチに座って開花した赤いバラを見る。 5月のその決意と決心、そして切実さが形成されて、 看護師のガウンを着た彼らとまた嶺南大医療院で会えることを希望する。

「民主労組を守るために自分の身まで燃やした多くの先輩がいるのに、 解雇が自分の人生で一番つらかったと言いたいのではありません。 私の人生で、嶺南大医療院は絶望的ではありましたが、 人生をまっすぐに生きる過程だったと考えています。 労働組合活動をしながら、正義が何か、一緒に暮らすことは何かに気付き、 その過程で仲間たちや組合員たちと一緒にした歳月が、 私には輝いて美しかった時期でした。 戻らなければなりません。 定年まで2年残っています。 今年、必ず復職して、看護師のガウンを着て病院に通いたい。」 (パク・ムンジン指導委員)

「約束を守れといったが、私はあまりにも正当なのに…。 約束はあいつらが守らず、不法はあいつらが行ったのに、 なぜ私たちだけがこんなに苦しむのだろう? 私にはとても納得できませんでした。 元通り、全員が正常に復帰する。 復職して、組合員たちが元の場所に戻る。 その考えでずっときました。 出て行くとしても、自分の足で出て行くとしてもこうして出て行くことはない。 私は元々かなり肯定的な性格です。 うまくいくだろうと思ってここまで来たのです。 嶺南大病院…。 20年ですね。 私の若い日の喜怒哀楽、すべてのことがすべてある所なんです。 ここで労働組合をしながら多くの人生を学びました。 もう本当に終わらせなければならないと思います。 今年は必ず復職をしなければならない。 復職すれば、新入の気持ちでまた1から学びます。 熱心に勉強している後輩から『あの先輩のようになりたい』と言われるような人になりたいです。 現場に労働組合の成果も見せてあげたい。」 (ソン・ヨンスク副支部長) [ワーカーズ55号]

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2019-06-11 17:48:55 / Last modified on 2019-06-18 16:36:57 Copyright: Default

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