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ミュージシャンが労働組合と出会う時

[ワーカーズ インタビュー]イッシンジョンソク ミュージシャンユニオン委員長

ユン・ジヨン記者 2019.06.07 09:56

ミュージシャンも労働をしている。 音楽を作り、歌詞を付け、編曲をして、市場に音源を出す。 コンサートの日程が決まれば楽器を磨いて管理して、 息があうまで練習に練習を重ねる。 ミュージシャンという職業上、日常的に繰り返す労働だが、 人々はいつもその労働の価値を極小化する。 無料コンサートを当然視して、才能寄付を強要したりもする。 舞台に立つまでの時間は「労働ではない」と扱われる。 だからミュージシャンたちはいつも貧しく、 生計の心配をしなければならなかった。

ミュージシャンたちの劣悪な現実を改善するために、 2013年「ミュージシャンユニオン」が設立された。 彼らは「私たちの仕事は音楽だ(Music is work)」というスローガンで ミュージシャンの権利探しキャンペーンを行い、 インディシーンのミュージシャンを組織し始めた。 2017年には法内労組になった。 創立から6年、法内労組2年。 これまで、ミュージシャンたちの処遇と音楽市場の条件はどう変ったのだろうか。 「ワーカーズ」がミュージシャンユニオンのイッシンジョンソク委員長と会って 話を交わした。

[出処:キム・ハンジュ記者]

ミュージシャン ユニオンの加入条件は何か。どんな人々が組合員に加入しているのか

まず、自らミュージシャンとしてのアイデンティティを持っていなければならない。 表面に現れる事により、公演をしたり、創作活動をしたり、音楽労働をしている人たちだ。 何よりも自分を音楽家、あるいはミュージシャンだと内在化している人々が加入するといえばありがたい。 ひとまず私たちの労組は弘大のインディシーンから始まった。 クラブで活動しているインディ、フォーク、ロックバンドが基本的で、 労働運動や社会運動などの現場に連帯する民衆歌手もかなりいる。 その他にも知り合いのOST作業をしている人や、 セッション、レコーディングエンジニアなどの音楽産業側で活動している人もいる。

ミュージシャンの作業特性上、組織は容易ではないようだ

2012年に創立を準備して翌年9月に創立総会を開いた。 その過程でインディー・ミュージシャンを中心に実態調査を行い、 労働組合が必要だという声があがってきた。 周辺の知人を集める方式で活動を始めた。 創立初期は70人ほどで出発したが、 初代のキム・ムンシク委員長がイシューファイティングなどのさまざまな試みをしながら 160〜170人まで組合員数を増やした。 最近では停滞傾向だ。 個別に活動をするミュージシャンをまとめ上げるのは容易でなかった。 そしてミュージシャンが活動を続けるのが容易ではない環境もある。 創立当時にはミュージシャンだったのに、 生計問題などで音楽を休んでいることも多い。 そのような場合は組合からの脱退を問い合わせてくる人もいる。 こうした複合的な要因で組織化に困難を味わっている。 ミュージシャンが安定して労働組合活動を続け、 彼らをまとめる戦略モデルを作ることが現在の課題だ。 イシューファイティングが重要だと見る。

若いミュージシャンの参加度はどうか

ミュージシャンユニオン発足当時に活動していた組合員は、 普通は90年代後半から2000年代初期に活動していたミュージシャンらだ。 2012〜2013年に労組活動をしていた時点から 弘大のクラブが萎縮する傾向だった。 そのためにネットワーク網がとても壊れ、若い人たちが参加できない面もあった。 20代の場合は職業選択の機会が開かれている時期で、 粘り強く参加できない部分もあった。 さまざまな複合的な状況によって、 ミュージシャンユニオンの平均年齢帯は20代後半程度だ。 30代から50代までの多様な世代が参加している。

社会運動にはどんな方式で結合しているのか

創立の翌年にセウォル号惨事が起きた。 惨事以後、参加できる小さな活動をずっと続けてきた。 2015年の惨事1周期に合わせて組合員たちと共にレコードを製作し、 活動を続けていったので文化芸術家ブラックリストにも上がった。 2016年の下半期にはブラックリスト問題解決のための活動をした。 南山国楽堂でセウォル号記憶2周期追慕公演も開いた。 昨年は民主労総の最低賃金改悪阻止闘争にバスキングで結合した。 地域団体とも連係して活動している。 城東勤労者福祉センター、九老勤労者福祉センターなどで 労働者と一緒にするマダン公演、広場公演などもしている。

芸術家3人に1人が収入がないという調査結果がある。他の労働と比べて芸術分野で特に収入が少ない理由をどう見るか

基本的に芸術という職業群は、誰にでも開かれている。 供給は無制限で、金を払うに値するような需要は制約的という特徴がある。 芸術は、労働者の暮らしの問題からは多少距離があるので、 金を払おうとする意志も弱い。 韓国だけでなく世界的な共通の傾向だ。 芸術家福祉制度が良いといわれるフランスの例を見てもそうだ。 フランスの芸術家雇用保険のアンテルミタンの場合も、 これを適用される芸術家になると周辺から祝福を受ける。 フランスもすべての芸術家に雇用保険を適用しているのではないということだ。

国内芸術家雇用保険議論はどうなろうとしているのか

現在推進中の芸術家雇用保険は世界的にもかなり進んだ面がある。 前の朴槿恵(パク・クネ)政権の時期には、 芸術家の雇用保険を「任意加入」というtoolにしようとした。 芸術家がフリーランサー、自営業者などの雇用保険枠組みの中に入る形だ。 自分が望むのなら入り、入りたくなければしなくてもいいという調子だった。 当然、実効性はなくなる。 文在寅(ムン・ジェイン)政府も、 初めは朴槿恵政権の方式で推進しようとした。 だがいろいろな団体がこのような設計は実効性がないと問題を提起し続け、 現在、文化体育観光部と雇用労働部が当然加入の形態で設計する方案を議論している。

音楽活動では収入がないので兼業をしなければならない。組合員や周辺のミュージシャンはどんな仕事で生計を立てるか

色々な兼業をしている。 インテリアをしている組合員もいて、 コンビニ アルバイトや映像アルバイトをしながら音楽をする友人もいる。 何かのつながりで、イベント業者で音響装備アルバイトをする場合もよくある。 学院の出講は、俗に言う「運(ツキ)」がなければならない。 固定収入ができるということはとても重要で難しいことなのではないか。 音楽的な自分の悩みを続ける事もできるし。 しかし講習が長くなるほど音楽活動が難しくなる場合があり、 ある時点になると整理することもある。 公演や音源収入で生計を立てる組合員もいるが、とてもめずらしい。 安定していないばかりか、容易ではない。 最低賃金水準にも至らない金で頑張る。

ミュージシャンユニオンは無料公演や才能寄付を当然視する慣行に対しても批判的な声をあげてきた。業界でこうした慣行は相変わらずなのか

一二度ではない。 いまだにミュージシャンらが舞台に立つ機会が多くないからだ。 ある楽器取り引きサイトで交通費程度を支払って 「バスキングに出演する人」を募集すると、 雨後の筍のように人々が集まる。 自分の公演をしたい人がそれだけ多いのだ。 しかしそのような状況と経験が繰り返されて積み重なると、 間違った構造だということを認識するようになる。 数年前から才能寄付公演に対する問題意識が問題化され、 企画者も変わる傾向でもある。 最低限の実費を保障しようと努めているが、まだはるかに足りない。 例えば地方公演の交通費として15万ウォンを受け取るとしよう。 もし楽器を演奏するセッションがあれば移動だけで30〜60万ウォンかかる。 チームで公演に行けない状況になる。 良質の公演ができないということだ。 そしてその一回の公演のためにどれほど多くの練習をするか。 しかし、そうしたことに対する考慮や悩みがない。

芸術家の無料労働に対して団体はどう対応しているか

昨年下半期にいくつかの事例を捉えて問題を作ってみようとした。 漢江事業本部で汝矣島水色舞台を委託運営する会社を公募し、 ある民間企画会社がこれを引き受けた。 会社はミュージシャンを舞台にあげ、適正賃金を払わず無料公演で運営した。 その部分についてソウル市に抗議をした。 だがまさにミュージシャン当事者たちは舞台を提供されたこと以外には関心がなかった。 事実、芸術というもの自体が誰にでもできて、 生活と趣味の境界が曖昧だ。 趣味でする人たちにはそうした舞台を提供されることは、ただ有難いことだ。 だが公演費で生活する専業芸術家は、立つ場所を失い続けるというジレンマがある。 悩むべき問題だと思う。

大型企画会社とミュージシャンの間の紛争や奴隷契約問題がたびたびマスコミで報道される。インディレーベルの場合も似た問題があるか

異なる形の紛争だ。 大型企画会社は精算問題や契約自体での不公正紛争が多い。 しかしインディレーベルは会社がつぶれたり、 その過程で著作者とは無関係に版権が売れる場合が多い。 事実、インディレーベルは多くもなく、あまり資金力なく、 ミュージシャンと契約を結ぶケースも多くない。

メロンなどの大型音源サイトの搾取構造に対しても声をあげてきた。 しかし一般的に「不法ダウンロード」するよりはメロンを通じて音源を購入するほうが ミュージシャンにとって良いことではないのか、という気がする。 音楽産業での搾取構造が外部によく伝えられないという点が大きいようだ。

不法ダウンロードの問題は盗みで、メロンの問題は市場を一人占めするということだ。 まずメロンのような音源プラットホームの料金精算方式は定額制だ。 事実、一日に音楽を聞ける時間は限られている。 ストリーミング利用者の利用時間限界を計算して、 メロンは収益に合わせて金額を策定している。 無限ストリーミングが可能な定額制は事実、錯覚現象だ。 何年か前にKTミュージックで音楽を聞いただけ金を払う従量制を導入しようとしたが、失敗した。 すでに定額制が安いという意識に馴染んだからだ。

定額制というシステムで音源単価は1曲あたり7.4ウォンに策定された。 メロンは7.4ウォンが最善だという。 サーバーを運用し、プラットホームを運営しなければならないという理由だ。7.4ウォンを分けると製作者には銭単位になる。

メロンはプラットホームを過剰一人占めしている。 音源を供給する提供者がいつも新しい商品を無限供給し、 メロンはサーバー管理だけで金を稼ぐ。 金を貯めて、また新しい事業に投資して。 ホームプラスやイーマートのような大型スーパーが路地商圏を崩壊させるという。 同じ文脈で、インディレーベルでの音源配布でも小さい流通企業等はすべてなくなる。 従量制の導入、さらに音源価格をミュージシャンが決定できる構造など、 発想の転換が必要だ。 不法ダウンロード市場から抜け出したのに、 今ではメロンのような大型音源サイトに全権をすべて差し出している状況だ。 文体部や著作権信託機関のアイデアの貧困が問題だ。

文化芸術だけでも暮らせる社会になるために最も必要なことは何か

一番必要なことは、皆が暮らせる社会にならなければならないということだ。 誰でも生存に対する恐れを体験しない社会がまず作られるべきだと思う。 そうなれば芸術家も普遍的福祉の中で他の社会構成員のように明日を暮らせるのではないだろうか。 そのような日がくれば、芸術家も絶望を体験せずに生存して行けるだろう。

最後にミュージシャンユニオンの今後の計画について話してほしい

任期がいくらも残っていない。 来年の春には変わるかもしれない。 委員長に就任した時につぶれそうな組織を生き返らせることが目標だった。 今でもずっと役割を果たしていると考える。 ミュージシャンユニオンという名前を聞いて、 ミュージシャンが「本当に素晴らしい組織だ」と考える段階まで行きたい。 労働者たちにとって「生存権」とは、 労働をして、補償を受けて、未来を夢見らることができる環境を持つことではないのか。 芸術家にも生存権的な要求が明確にある。 このような活動を色々な方式とモデルで作っていきたい。 芸術家の労働組合はこうした姿なんだな、と共感して意気投合できる運動をしたい。[ワーカーズ55号]

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2019-06-11 17:48:55 / Last modified on 2019-06-11 17:52:01 Copyright: Default

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