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韓国:ドイツの不動産企業没収運動・・・「皆のための社会化を!」
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ドイツの不動産企業没収運動・・・「皆のための社会化を!」

[ワーカーズ・イシュー(1)]賃借人を追い出す超国籍資本の土地商売を防げるだろうか

キム・ハンジュ、ユン・ジヨン、チョン・ウニ記者 2019.06.03 12:31

ワーカーズ・イシュー(1)目次

  1. この家がわが家ではない理由
  2. 3億ウォンで見つけて、ホームズ
  3. 資本の出口戦略、不動産市場は相変らず熱い
  4. ホットな投資アイテム、シェアハウス、青年たちは二回泣く
  5. ドイツの不動産企業没収運動...「皆のための社会化を!」

▲去る5月1日、ネオナチのデモに対抗してDW没収を支持する人々が「静かにして社会化しろ」などのプラカードを持ってデモをした。[出処:@dwenteignen]

「ベルリンの壁崩壊後、最大の政治的激変に向かっている。」

ドイツの日刊シュピーゲルは4月6日、超国籍巨大不動産企業 「ドイッチェ・ボーネン(Deutsche Wohnen AG、DW)」没収のための住民投票請願運動を報じ、このように表現した。 この日、ベルリンだけで4万人がDW没収と社会化のためにデモを行った。 シュピーゲルの表現のように、現在ドイツではDW没収と社会化運動が劇的に展開されている。 東ドイツが資本主義の西ドイツに吸収されてから30年経った今、 ドイツ国民はまた社会主義政策に視線を転じているからだ。 この運動を支持する賃借人たちは、住宅問題を解決する方法は 不動産大企業を社会化する方法しかないと声を高める。

3000軒以上所有する不動産企業没収

「DW没収」という連帯の会が主導するこの運動は、 3000軒以上を所有する不動産企業を没収し、 公共機関が管理しろと主張する。 請願が成功すれば、合計20万軒が没収される。 DWはそのうち最も多くの住宅を所有している。 この企業が全国で所有する不動産は、 住宅16万3千軒と商業用不動産2千600軒で、 このうち11万1500軒以上がベルリンにある。 ベルリンの不動産10軒に1軒だ。

DWはベルリンで最も規模が大きいだけでなく、 最大の憎しみを買う不動産企業でもある。 かびと断電・断水問題など、DWが所有する住宅をめぐり、 いつも雑音が流れ出るからだ。 賃借人たちはDWが住居問題解決に能力がないか関心がないと声を高めている。

これまでDWは不動産という「商品」で多様な投機をした。 代表的な方法は「リモデル」による賃貸料値上げだ。 ベルリンの公共政策は、賃貸料値上げに厳しいが、 リモデルした場合は値上の幅が広がる。 賃借人の回転率もまた上げられる。 そのためDWは大きな費用をかけてリモデルし、 さらに多くの金を賃借人に請求してきた。

不動産を買い占めたり、各種の中小不動産企業を買収するのもDWの投機方法だ。 これ以外にもDWはロビーにも多量の金をかけている。 スター弁護士を雇い、ベルリンの公示地価が自社に有利に策定されるように手を回した。 DWはこうした投機戦略で2018年だけで50億ユーロの順収益をあげた。 2010年と較べると収益は二倍になった。 居住用住宅賃貸収益は2012年の1億9400万ユーロから 2018年には6億5600万ユーロへと、約3倍になった。

住宅は公共財

このような賃貸料の上昇分は、株主への配当金になった。 ほとんどは超国籍金融投機会社で占められた。 DWの最大株主は米国に本社をおく世界最大の資産運用会社ブラックロック(BlackRock)で、10.2%の株式を所有している。 これと共に米国の金融会社MFSが9.94%、国営ファンドで投機をしてきた ノルウェー中央銀行(NB)が6.93%の株式を持っている。 ブラックロックのローレンス・フィンク会長は昨年だけで319億ウォンを得た。

だが数十万人の貧しい市民は住居空間から押し出されている。 賃貸料の上昇で、低所得層居住者のための住宅が消え続けているためだ。 DWベルリン住宅の平均家賃はこの10年間で2倍以上に高騰した。 その結果、ベルリンの平均住宅費負担率も35%まで上がった。 賃金が停滞し続けてきたことも、住宅費負担を押し上げる要因になった。 経済学者たちは一般的に賃貸料が所得の30%を越えれば、賃貸料の負担が不可能だと見ている。

DWがこれほど多くの住宅を所有することになったのは、ベルリン政府の責任が大きい。 初めは東ドイツの後にキリスト民主党-社民党大連立政府が、 そしてその後は社民党-左翼党政府が民営化を推進しながら DWに公共住宅会社を安値で売却したためだ。 賃借人にとって左右派とも人気がないことが他の理由ではない。

結局、これ以上行き場ががなくなった賃借人は、DW没収運動を始めた。 それ以前にも賃借人はベルリンのクロイツベルクモアビットなどでDWに対抗して闘争してきた。 クロイツベルクでは 「これからリモデルをする場合、賃借人の意見を聞かなければならない」 という法条項を引き出した。 2014年に賃借人が地域開発政策をひっくり返した事例もある。 当時、ベルリン地域政府は閉鎖されたテンペルホーフ空港の周辺地域を開発する予定だったが、 住民投票でこれを座礁させた。 2015年には住民投票でベルリン市から住宅5000軒を建設するという計画を引き出した。

だが多数の市民は住宅が民間資本の手にある限り、 賃貸料や不動産問題の解決は遠いと見ている。 昨年末にもベルリンの法廷がDWの不動産買い占めを制限したが、 これ見よがしに他の地域でまた買い占めをして公共政策を無力化させた。 そのため賃借人たちは、住宅問題を根本的に解決するためには 不動産大資本の没収と社会化が避けられないという点を強調している。

こうしたDW没収運動の戦略は三つだ。 まず税金と規制により私営住宅市場を抑制し、住宅を公共所有に移転した後、 公共住宅会社を通じて民主性を保障する方式だ。 だがこうした過程は一部の政治家や政府ではなく、 下からの力で貫徹しなければならないというのが彼らが強調するポイントだ。

▲「支払い可能な住居空間は基本権」という横断幕がかかっている。[出処:www.dwenteignen.de]

皆のための下からの社会化

DW没収運動戦略は、これを主導してきたドイツ極左派の連合団体、 インターベンチオニスティッシェリンケ(Interventionistische linke)グループが 2017年からベルリンなどの都市で多様な社会運動と 「社会主義都市のための戦略」について討論してきた結果でもある。 住宅市場の社会化、つまり民営住宅を公共所有に移転するだけで価格上昇を中断できるという。 そしてこうした提案に多くの人々が共感している。 実際にベルリンで4万人規模の不動産企業没収デモが開かれてから一か月で ハンブルグでも6千人規模の類似のデモが起きた。 5月4日、このデモを主催した「ミッテンモブ(Mietenmove)」という連帯団体には ローテフローラというアナーキーセンターからドイツ統合サービス労働組合ベルディ、 そして「賃借人たちの都市権(Recht auf Stadt)」という会まで、 多様な団体が参加している。

DW没収運動は憲法を根拠として、公益が優先する場合は財産権を制限できるという点を強調している。 だがDWや右翼勢力は私有財産権を優先し、 「没収することも、没収されることもない」と言う。 今やDW没収運動はこれを住民投票で決着をつけようと、 6月を目標に住民投票請願運動を繰り広げている。 現在この運動を積極的に支持する政党は左翼党が唯一だ。 緑の党は最後の手段として検討する必要があると明らかにした。 だが右翼キリスト民主党や自民党は頑強に反対している。

DW没収運動は請願開始から3週間で10万の署名を集めた。 運動を主導している活動家のロウツベ・タヘリ(Rouzbeh Taheri)は 「私たちの目標は本来6万人だったが、はるかに凌駕した」とし 「如何に多くの賃借人たちが不動産大企業の社会化を望んでいるのかがわかる。 そしてこの試みは事実上、すでにベルリンを越えて広がっている」と明らかにした。 果たしてこの試みがここ、朝鮮半島の不動産王国にも到着するだろうか?

  • ドイッチェ・ボーネン(Deutsche Wohnen AG、DW)

    DWは1998年にドイツ銀行が開設した。 初期資金は1998年に年金基金ヘキスト(Hoechst)とラインラント・プファルツ州が 購入した不動産株式資産で構成された。 ドイツ銀行はDWを1999年11月上場した後、 2006年に民営化して私企業に転換した。 続いて2007年7月、DWは2008年に公営住宅会社GEHAGを米国投資会社から買収した。 GEHAGは1924年に設立された公営住宅会社で、 主に東ドイツにある住宅を管理していたが、 1998年に西ドイツに吸収された後、 部分民営化され、その後2005年に米国の投資会社が85%の株式を買い入れて DWに売却された。 2012年、DWは英国のバークレイズ投資会社とドイツの住宅管理会社Baubeconに 不動産2万3500軒を売却した。 2013年にはベルリンの民営化政策により、 西ドイツにある公営住宅会社GSWの株式も買収し、 ベルリン最大の不動産企業になった。もちろん、最大の株主は超国籍資本だ。

米国からアイルランドまで、「狂った賃貸料」デモ

「Oh the rent、Oh the rent、Oh、the rent is too damn high…」
「おお賃貸料、おお賃貸料、おお賃貸料がとても高い」

5月14日、ニューヨークのオールバニー州議会の前で開かれた 「賃借人集会(Tenant Action)」で、 2千人もの市民がこのようなシュプレヒコールをあげた。 米国の左派メディア、「ピープルズワールド」によれば 彼らは州議会の階段とホールを占拠するデモをした。 同時に議会の公務員たちに30日間の「退去」を命じた。 賃借人がよく受ける「退去圧力」をかえそうという次元の運動だった。

最近、米国のニューヨークでは、賃借人運動が活発に行われている。 賃借人たちは「皆のための正しい住居(Housing Justice for All)」という連帯体へと行動を拡張している。 連帯体には賃借人だけでなく、 労働組合、社会団体、左派政治団体など多様な主導者が集まった。 市民権運動をする韓国人も一部参加した。

ニューヨークに居住する賃借人は約500万人にのぼる。 彼らのRIR(月所得対応賃貸料割合)は30%を上回る。 その上、賃借人の約30%は月の所得の半分を賃貸料に注ぐ。 韓国の一般世帯のRIRが15%であるのと較べると、 ニューヨークの賃貸料は賃借人を「枯死」させる水準だ。

彼らが州議会を掌握したのは法制度の用意を要求しているためだ。 特に6月15日は賃借人保護法の満期日だ。 これまで賃借人はこの保護法の下で正当な理由なく強制退去されることだけは避けられた。 賃借人たちはこの集会で保護法の拡大だけでなく、 州政府次元の「賃貸料統制法(Rent Control Law)」の制定もするように主張した。 左派メディア「ザ・ニューパブリック」は、 賃借人権利運動がニューヨーク全域に広がる可能性があると報道した。

一方、アイルランドのダブリン地域では、昨年から空き家占拠運動が起きている。 「Take Back the City(都市を奪還しろ)」というキャンペーンが作られ、 住居活動家だけでなく、労組、学生などが参加している。 彼らは昨年8月から空き家を占拠して政府に住宅不足問題を指摘して 「資産ではなく家(Build Homes not Profits)」を作れと要求した。 彼らは占拠声明で 「すべての空地と住宅は、公共の所有下になければならない」とし、 不動産の公共財を主張した。 したがって、公共が所有する空の住居用建物を6か月以内に使えるようにする法を制定しろと要求した。

キャンペーンによれば、アイルランドには約1万人が臨時の住居に住んでいて、 18年間に公共賃貸住宅を待っている人だけで14万4000人に達する。 青年住宅難も深刻だ。 アイルランドのある国立大学では、 寄宿舎賃貸料を1学期で18%上げ、学生会が訴訟を提起したこともあった。[ワーカーズ55号]

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2019-06-04 17:27:49 / Last modified on 2019-06-06 10:51:44 Copyright: Default

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