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Invossaには効能がありませんが、社会主義は違います

[ワーカーズ社会主義探求領域]Invossaを育てたのは政府

カンフ(社会運動に関心が多い) 2019.05.28 15:25

#1. 関節炎治療剤と言っていたのに、なぜ腎臓細胞を入れたのか?

親しい友人が株式をしています。 小さな金でも「わけもなく無駄遣いするな」と何度か話しましたが、 一度はまると抜け出すのが難しいらしいです。 そうするうちに結局この前、元金も取り返せずに元手をなくしました。 主にバイオ企業の株式を持っていたのですが、それが暴落したためです (「大暴落」というべきでしょうか)。 そのまん中に「コオロン生命科学」がありました。 関節炎治療剤のラドン、インボサケイジュ(通称「インボサ」)を開発した会社です。 実際に8万ウォンの値をつけたコオロン生命科学の株価は2か月ほど前に インボサ『事態』が起きて半分以下に暴落、 最近は2〜3万ウォン台を行き来しています。

医薬品や生命科学に関する専門用語が飛び出してきて、 筋道を理解するのに時間が多少かかりました。 常識的に理解できないことです。 関節炎治療剤を作ったとして、本来主張していた軟骨細胞ではなく、 なぜとんでもない腎臓の細胞が入っていたのか? とにかくそれが実際に起きました。 当初、軟骨を再生する細胞物質は存在することもなく、 ただ細胞培養のために生命工学の実験室でよく使う遺伝子操作細胞(腎臓に由来)があっただけです。 さらにはこの腎臓細胞は腫瘍を誘発するので、人体に投与することが厳格に規制されていたそうです。 関節炎を治療できるといって注射を打ったところ、 むしろガンにかかるのではないだろうかと心配しなければならない状況。 注射1本打つのに何と700万ウォンもしたこの新薬は、 こうしてもうひとつの希代の「詐欺」で終わりそうです。

コオロンはすでに2年前の2017年にこの状況を認知していたといいます。 軟骨再生物質はなく、とんでもない危険物質が入っていることを知りつつも、 患者に投薬したのです。 彼らの厚顔無恥ははてしがありません。 事態が起きたこの期に及んで 「最初から軟骨再生物質はなく、 市販前の臨床試験もすべて腎臓細胞でやっていたので、 特に問題はない」という詭弁をならべます。

しかしそれと同じぐらいひどいのは、韓国食薬処(食品医薬品安全処)の態度です。 新薬を開発すると、この薬品を使ってもいいのかを審査して許可を出す担当機関が食薬処です。 本来、2017年4月までは食薬処中央薬剤師審議委員会(中央薬審)は、 インボサの許可に反対していたといいます。 軟骨再生効果がないこともすでに知っていました。 しかしわずか二か月後、何も変わっていないのに、ただ審議委員だけが変わった中央薬は、 インボサに許可を出します。 いったい誰のための、何のための審議だったのでしょうか。

#2. 隣保社を育てたのは政府だった

「コオロン生命科学は国内で開発された初の遺伝子治療剤(インボサケイジュ)を保有、 グローバル競争力を持つ後続パイプライン(新薬候補物質)を確保するなどの成果を保有」。

わずか半年前の去る2018年12月末、 保健福祉部が直接発表した内容です。 コオロン生命科学をはじめとする6つの企業を「革新型製薬企業」として新規に認証するということでした。 朴槿恵(パク・クネ)政権が「創造」に熱を上げたように、 文在寅(ムン・ジェイン)政府はあらゆる分野に「革新」を話しましたが、 その典型的なケースです。 「革新型製薬企業」とは、 「一定規模以上の新薬開発投資をしている製薬企業」で保健福祉部長官が認証しますが、 こうして指定されれば国家研究開発の優先参加権を得て、 規制緩和、税金減免、政策資金融資の特典も受けます。

インボサを育てたのは政府でした。 ニュース打破の調査によれば、2002年から2018年までにインボサの開発に対する政府の支援金は何と139億ウォン。 インボサだけではありません。 範囲を広げてみます。 さる2月、政府は「バイオ経済成果創出」のために2019年に3兆ウォンにのぼるR&D投資予算を造成すると発表しました。 しかし政府が昨年「実績」だと誇って拠論した部分を見ると、 「革新新薬の開発支援を通して」 コオロンをはじめとする主要製薬企業が2.9兆ウォン規模の技術輸出の成果をあげたという内容です。 「革新型製薬企業」の売上額は2018年12兆ウォンから2019年には13兆ウォンに増加するというバラ色の展望も出しました。

政府の支援は財政に終わりません。 さる2月13日、保健福祉部は 「2019年度革新型製薬企業最高経営者(CEO)懇談会」を開きました。 政府の報道資料に出てきた言及に基づいて、 この懇談会でやりとりされた対話を再構成してみます。

製薬企業CEO: 国家次元で研究開発を支援して、税金の恩恵を増やしてくれ。 臨床試験と新薬許可を迅速にできるように規制を緩和してくれ。

保健福祉部担当者: 研究開発を支援して税額控除を拡大する。 新薬の臨床試験と許可を迅速に審査するよう積極的に推進する。

企業が要求した内容を政府の関係者はそのまま承認して「みんなやる」と約束しました。 金銭的にも支援して、新薬を開発すれば試験と許可手続きも簡素化して、 はやく利益を得られるようにしてやるということでしょう。 問題は、インボサのように、この過程で患者の被害が発生するということです。 昨年12月、「健康な世の中ネットワーク」が発表した調査結果 (医薬品臨床試験薬品以上反応統計)によれば、 臨床試験の死亡者数は2013年の10人から2017年には29人と3倍近く増加しました。 5年間の死亡者数は毎年増え、都合85人に達します。 入院をはじめとするその他の被害も2013年の147人から2017年には289人に増えました。

このような状況でも、製薬企業は臨床試験と許可の規制を緩和しろと要求し、 政府は「バイオ産業が未来の食い扶持」だとしてこの要求をそのまま受け入れました。 人が死のうが生きようが、販売実現という「実績」の前で 政府は業界の忠実な報道担当者になってやりました。

#3. 社会主義の新薬開発

整理すれば、政府は国の金をかけて、民間製薬企業の新薬開発を推進します。 そして規制を緩和して、一日でもさらにはやくその新薬が市場に出られるように手伝います。 民間製薬企業はそうして開発した技術を売ったり新薬を販売して高い収益を上げます。

技術開発のために政府予算を使うことが間違っているのではありません (もちろん「どんな技術か」も重要な問題ですが)。 しかし問題は、これほど莫大な国の金を入れて、 技術輸出であれ売り上げであれ、結局、利益はまさにその政府の支援を受けた 民間の製薬企業に行くことです。 その上、規制緩和で間違った有害薬品が「新薬」という名前を付けて出ても、 その被害はそのまま消費者と患者がかぶります。 理由はたった一つです。 企業は実際に患者に効能があるかどうかとは無関係にこの商品を売り、 収益を上げなければならず、 政府にはそうして産業の図体を膨らませ、企業の利益を増やすことが 「成果」だったからです。

社会主義でも関節炎はなくなりません。 新薬をはじめ、疾病を治療する研究開発と保健医療部門に対する投資も (あるいは今よりはるかに)たくさん行われなければなりません。 だが社会主義で新薬開発の目的は、収益を上げることではありません。 ただ社会の構成員がより良い人生を享受できるように、 疾病の苦痛を除くために実際に効能を発揮できるかどうかが基準になります。 収益をあげる必要がないので失敗した物を無理に計画して出すことも、 政府当局が新しい物を許可するために汲々とすることもありません。

先に見たように、政府はすでに莫大な予算をバイオ部門の研究開発に注ぎ込んでいます。 しかし構成員が何を必要としているのかにより、 体系的な計画をたてて資源を投入するのではなく、 それぞれの利益追求のために事業を展開する企業に金を支援します。 その上、最近保健医療の産業化を推進し、 実際の医療的効能や科学性を立証できなかったにもかかわらず、 商品として開発して市場を創出できれば バイオヘルスやウェルネスといったレッテルを付けて積極的に支援します。 まさに政府が責任を持って遂行する研究部門はみすぼらしいです。 博士の学位を取った研究員でも国策研究院や大学に職を得ることも難しく、 かろうじて就職しても非正規職になるのが常なので、 企業に行くしかない局面です。

保健医療をはじめ、社会主義社会の最も重要な原理は「構成員の必要と統制」です。 たとえば、新薬や新医療技術次元で見れば、 最も早く「何を開発するのか」を決めなければなりません。 医療関係者と患者団体、研究者と保健医療部門団体を包括する当事者・専門家集団の意見と助けを受け、 消費者評議会のような社会構成員の代表体がこれを決めることになるでしょう。 患者と消費者をげん惑して金を稼ぐ「商品」の開発は、初めから排除します。 疾病で苦しむ患者の立場で、研究開発を担当する専門家の立場で、 そして構成員の必要により、社会の資源を配分すべき選出された代表者らの立場で、 「韓国社会に必要な研究開発は何か」の大計を用意するのです。

この計画により実際の研究開発を進める過程は、徹底的に政府が責任を持ちます。 社会的な必要に基づいて行った決定ですから、 当然、社会的資源を十分に投入し、研究開発の成果を公共の資産にするのです。 今まで個別の民間企業に与えていた資源を本当に必要なところに活用するので、 社会的浪費もなく、国家の責任で安定した研究人員を養成する効果も上げられます。 もちろん、研究開発を行う機関は多様になります。 研究院や大学かもしれず、企業体が担当するかもしれません。 資本主義と決定的な差異があるとすれば、 社会主義ではこれらの機関が各自の収益や利益を追求するのではないという点です。 資源を社会全体が責任を持って投入し、 安定した研究開発を保障し、 それにふさわしい公的な統制で個別的な利益の詐取を防ぎ、 目的に忠実にすることになるのです。

このように結果が出てくれば、その審査も公開的で民主的に進めます。 現在、薬品審査と許可を受け持っている食薬処諮問機構中央薬審は、 先日まで構成員もきちんと公開されていませんでした。 審議委員の選任も、選出ではなく食薬処長が任命する形態です。 もちろん、すべての公職一つ一つを全て選出しようというのではありません。 しかし彼らの決定が社会の構成員全体に影響を及ぼすのであれば、 彼らもそれに適切な責任を持ち、統制を受けなければなりません。

#4. 資本主義はあなたの健康に有害です

最終的に、この結果が審査を通過して薬品として活用できるようになれば、 治療が必要な社会構成員は高い代価を支払わずにこの薬品を利用できます。 新薬を開発する過程そのものが社会的費用で行われているので、 特定の集団が今の特許のようにこの結果に対する排他的権利を享受するのではなく、 社会全体の資産として活用することでしょう。

新薬開発に特許と特典を与えなければ、誰が研究開発をするのかと言われるかもしれませんが、 それでも社会的資源をどんな原理で配分するかによっていくらでも変わる問題です。 資本主義では開発に成功した特定の企業が所有権を握り、 社会の構成員から(あるいは「健康保険」の間接的な方式で)莫大な金を稼ぎます。 患者は高い代価を払う一方、多くの研究者は企業に所属しなければ安定した生計も立てられません。

しかしこうして個別企業の利益のために使われる金、 そして現在、国家が民間企業に支援する金を社会的責任で公的研究開発と研究者再生産に投入すれば、 今よりもはるかに多くの研究者が安定して研究作業にまい進できます。 さらには重複投資による浪費も防ぎ、 患者の危険も招きかねない不道徳な犯罪行為も防げます。

インボサ事態は個別企業の「不道徳」でも「ミス」の問題でもありません。 特にこの数年間、保健医療部門が利益創出の新しい手段に浮上し、 政府が率先して規制を解除して、 今後もいくらでもこうした問題が発生するでしょう。 資本主義はあなたの健康に有害です。 同じ社会的費用をかけても誰の利益のために、 どのように使って、誰が統制するのかの別れ目で、 自信を持って社会主義を推薦する理由です。[ワーカーズ55号]

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2019-06-04 17:27:49 / Last modified on 2019-06-04 17:30:26 Copyright: Default

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