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韓国:最低賃金、国家職業保障、独占利益の社会化 | ||||||
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最低賃金、国家職業保障、独占利益の社会化[ワーカーズ99%の経済]最低賃金をめぐる政治経済的闘争
ホン・ソンマン(チャムセサン研究所) 2019.05.27 12:56
![]() 最低賃金引き上げの経済的効果?最低賃金の経済的影響に対する論争がまだ続いている。 2018年の最低賃金実証分析に対しても甲論乙駁だ。 最低賃金引き上げが経済にどんな影響を与えるかに対しては、 俗流経済学者の間でも整理されていない。 米国最高の経済学者51人を対象とするIGMフォーラム調査(2015年)でも 「2020年までに15ドルで最低賃金を上げると低賃金労働者の雇用率が低下するか」という質問に、 賛成や反対よりも「よくわからない(uncertain)」という回答が最も多かった。 51人のパネルはノーベル賞受賞者をはじめとする有名な経済学者だ。 その上、20年前ならこの回答は確かに「そうだ」が多かっただろう。 しかし経済危機を経て、多くの国家で最低賃金制度を施行している現在、 俗流経済学の大家でさえ最低賃金の引き上げで 低賃金労働者の雇用率が低下するかどうかは「よくわからない」と告白している。 ![]() 最近の多数の実証研究によれば、 最低賃金引き上げが経済に与える影響は大きくない [1] 。 まず、最低賃金が上がると事業主は雇用の縮小や廃業ではなく、 これを回避する手段を探す。 廃業は言うまでもなく、雇用縮小も事業の根本的な変化、 つまり規模の縮小を意味するので利益がさらに低くなるほかはない。 だから事業主は雇用縮小の前に他の方法を探す (もちろん、一部の限界企業では雇用縮小が起きるが、 一般的には雇用縮小をする前に他の手段を探す)。 代表的には手当ての削減などの賃金構造変更により、 最低賃金は上げても実質的な賃金の支払い規模を同一に維持したり、 有給労働時間を減らして無給家族労働を拡大したりもする。 または労働強度を強めて実質的な労働費用と利益水準を維持する。 それも難しければ、価格を上げて賃金上昇分を価格に反映させる。 これが可能な理由は、最低賃金は法定賃金なので個別の企業間の競争条件が 同じに維持されるためだ。 もちろん、個別企業や業種によって価額上昇幅と水準が違うかもしれないが、 競争条件には差がない(最低賃金引き上げ前にもこの企業はそれだけの競争力があった)。 だから最低賃金が上げられると価格の構造が変わる可能性が高くなり、 労働強度と労働条件が悪化するが、雇用の量そのものには大きな影響を与えない。 ほとんどの海外の事例でもこの点は確認できる。 ただし、値上げ幅と事業主の利益減少幅の関係に対しては多様な立場が存在する。 米国では最低賃金が徐々に上げられる場合、 労働費用の削減や利益の減少などで事業主によりほとんど吸収されたが、 最低賃金が大幅に上げられた場合は80%が値上げにつながったと分析された [2] 。 つまり、最低賃金を徐々に上げれば労働者の労働強度を強めたり 事業主が適切な利益減少を受け入れることでこれを分担した。 また急速に上げられる場合には、引上げ幅は主に価格に反映されて物価に影響しない限り経済には特別な影響を与えなかった。 その上、昨年から政府は毎年3兆ウォン近い雇用安定資金を供給している。 最低賃金の超過分を政府が代わりに支払うのだ [3] 。 構造調整事業場に政府が補助金を支払うように、 最低賃金事業場に補助金を支給してきたため、 特に雇用に対する影響は大きくなかったというのが一般的な評価だ。 しかしなぜ最低賃金がずっと問題になっているのか? まず事業主の場合、賃上げが価格に反映されるまで、 自分に一定の負担が与えられるため、他の見方をすれば反発は当然のことでもある。 だがこの問題は時間が経てば解消される。 それでも自由韓国党はもちろん、財閥所有の経済紙と日刊紙などが この問題をいつまでも握りしめるのは、 最低賃金の引き上げによって賃金全体が同伴上昇することがあるからだ。 最近の最低賃金引き上げでも、大工場の常用職労働者の賃上げ水準の方が高く現れている [4] 。 資本の全般的な利益率が低下しており、 さらに労働費用が増えると利益率はさらに下がらざるを得ないので、 企業は賃金を増やすよりも減らそうとする。 もうひとつの理由としては、 政府の所得主導成長政策を粉砕するための政治的な目的だ。 これは、所得主導成長の代りに規制緩和と資本運動の自由化を目的とする 革新成長政策にさらに親和力を持たせることが目的だ。 いずれにしても、文在寅(ムン・ジェイン)政府は2020年までに 最低賃金1万ウォンという公約を履行できないと宣言したし、 最低賃金の速度調節と決定構造変更を公然と話している。 せいぜい16.4%、10.9%上げても [5] 翌年またこうした数値なら経済がほろびるかもしれないという脅迫に屈服してしまった。 結論から言えば、最低賃金は上がり続けなければならないが、 現在文在寅政府がしている方式のとおりなら失敗するほかはない。 最低賃金引き上げが生産性と成長率に緊迫され、 その負担を労働者や個別事業主に転嫁すれば、 さらに物価に負担を与える方式で進められれば、 それはそのまま労働者に新しい(差別的な)負担を抱かせることになるためだ。 それでなければ最低賃金引き上げ幅は恩着せ程度で終わるだけだ。 最低賃金をどう上げるべきか?最低賃金引き上げは所得主導成長のための政策的方便ではないという点をまた確認しなければならない。 最低賃金は人間として基本的な人生を維持するための最低限の賃金であるだけで、 それに達しない賃金はその水準に合わせて上げるべきだというのが基本精神だ。 これは、個別企業の利益や生産性を考慮すべき問題でもなく、 まして成長のための戦略でもないということだ。 最低賃金は生産性とも関係なく、 企業にできなければ国家と社会が動いて解決すべき基本権の問題だ。 ![]() では最低賃金を上げるための、 特に2020年までに最低賃金1万ウォンを実現するための方案は何か? 答はとても簡明だ。 ただ上げ続ければ良い。 まだ物価にも大きな影響がなく、事業主も政府補助金などの影響のためなのか、 現在の水準の負担に耐えられることが明らかになった。 ただし、現在のような方式が長期的に物価に影響を与え、 政府の補助金がいつまで続くべきかも疑問で、 最低賃金労働者の労働強度をさらに強化する方式で行われているのなら、 その影響を遮断することが望ましいだろう。 単独でなされる最低賃金引き上げは経済的、政策的に不完全なので、 これを循環的に正しく立て直す方案を考えなければならないだろう。 まず国家が職業を保障する方案を考えることができる。 いわゆる国家雇用保障(job guaranteeing)により国家が提供する雇用の賃金を 常に最低賃金より高く規律すれば、 民間の雇用も最低賃金以上の雇用で維持される。 最低賃金以下の雇用があれば、 いつでも政府が提供する国家雇用に移れるからだ。 特に国家雇用保障政策を共に導入すれば、 最低賃金引き上げが生産性に左右される今のような現実を克服できるだろう。 [1] 二つ目、独占利益を社会化する方案だ。 最低賃金を上げると韓国系企業、 または零細自営業、アパート警備など派遣業のように、 最低賃金の事業場は収益性が下がり、 結局廃業するか、あるいは労働費用を減らすために雇用を縮小することがある。 場合によっては法に違反しても、最低賃金未満の賃金を強制したりもする。 したがって、最低賃金引き上げによる費用は、 財閥独占大企業が稼ぐ独占利益に基づいて用意されなければならない。 (独占大企業が国家の全面的な支援を受け、 特に製造業輸出大企業が下請と非正規職労働者はもちろん、 サービス部門の労働者の犠牲 ―サービス業の低賃金、低物価、低い労働力価値― に基づいて利益をあげた点で、独占利益の社会化は非常に妥当だ)。 ある者は大企業の正規職労働者と最低賃金労働者の間の賃金格差を理由として 大企業労働者の賃上げをやめ、最低賃金を上げようと主張したりもする。 しかしこの主張は正規職労働者の賃金上昇を抑制すれば、 どんな経路で最低賃金、非正規職労働者の賃金を上げられるのかを明らかにしない。 サムスンと現代車グループ労働者の賃金を凍結することと、 最低賃金が上がることには事実関係がない。 大企業正規職労働者と最低賃金労働者の賃金支払いの主体は互いに無関係だ。 財閥大企業が彼らと無関係な最低賃金労働者の賃金を代わりに支払うことはないからだ。 社内下請労働者などの関連する非正規職労働者の正規職化により賃金を上げる方法があるが、 これは最低賃金労働者のごく少数に過ぎず、普遍的でも確実な方案でもない。 ![]() 唯一の経路は財閥大企業が自社労働者の賃金上昇分をそのまま国家に献納 (税金であれ、基金であれ、献金であれ)し、 国家が最低賃金の労働者たちを支援する方法だ。 だがそれでは大企業の利益の中からなぜ労働者の分だけを出さなければならないのだろうか? 財閥大企業は株式価値を上げるために数十兆ウォンをかけて自社株を買収した後、 買収した株式を燃やしてなくしている。 年末には配当祭りをして、 株主配当金も増やして総帥一家の年俸も幾何級数的に増やしている。 それなのに投資する所がなく、 社内留保金として1000兆ウォン近く(30大財閥社内留保金950兆ウォン) [7] 溜め込んでいるのに、 その金はなぜすべて労働者の賃金だけを出さなければならないというのか? 財閥独占大企業の独占利益はすべて社会が還収しなければならない。 同一労働・同一賃金を貫徹できないのなら、 少なくとも財閥の独占利益を還収し、 最低賃金労働者の賃金保全などのために使わなければならない。 一方、資本は(正規職)賃金で(最低または非正規職労働者)賃金を埋めようという、 こうした主張を隠密に実現している。 最低賃金引き上げで(主に)サービス業の物価を上げるのは、 一方では製造業大の工場正規職労働者の賃金から最低賃金引き上げ分を持ってくるような効果を発揮する。 サービス部門の最低賃金が上がり、 その影響でサービス料金がその水準ほどに上がれば、 製造業労働者の実質購買力が相対的に最大幅で下落する。 これがまさに物価が持つ差別的効果の一つだ。 1960年代のような高成長時期に労働者の名目賃金を100万ウォンから150万ウォンに引き上げても、 物価が50%上がれば実質賃金が上がらないのと同じだ。 この場合、製造業とサービス業などの部門間の賃金上昇と物価水準の格差が発生すれば、 賃金が製造業からサービス業に移る効果が発生する。 (現在までは製造業輸出大企業を育成するために 相対的にサービス部門の労働者を犠牲にしてきた。 世界で韓国のサービス人件費が最も低い水準に属しており、 そのために労働力価値も世界で最も低い水準を維持し、 サービス部門の労働者は低賃金に苦しむようになった)。 このように、資本は一方の部門の賃金を押さえ込みながら、 物価という「見えない手(invisible hand)」を通じて 同一の賃金量で与えて奪うことを繰り返しながら、 賃金の朝三暮四を具現してきた。 したがって、大企業労働者の賃上げを抑制しなければならないという主張は、 賃金格差の解消ではなく、全労働者の賃金上昇を抑制するための論理に使われて、 株主と資本家が専有する独占利益を出さないために防壁の盾にする論理でしかない。 実際、独占利益の社会的還収とも無関係で、 労働者の階級的団結のためにも何の役にも立たない。 最低賃金を上げて労働者の基本生活圏を保障するための要求は、 国家の雇用保障と独占利益の社会化に集められなければならない。〈ワーカーズ55号〉 (脚注) [1] ホン・ミンギ、「2018年最低賃金引き上げの雇用効果」、 月刊労働レビュー2018年5月号、韓国労働研究院、2018.ファン・ソヌン、 「最低賃金値上げの経済的効果分析」、最低賃金引き上げ効果実証分析、民主労総、2018.参照 [2] チェ・ギョンス、「最低賃金引き上げが雇用に及ぼす影響」 KDI FOCUS(通巻第90号)、2018.6 [3] 2019年5月基準で雇用安定資金受給者は217万人。 [4] 「2018年賃金動向および2019年賃金展望」、雇用労働ブリーフ第89号、 韓国労働研究院2019.4.5の分析によれば、2018年16.4%引上げにもかかわらず、 所得の1〜2分位は賃金水準がとても低いので時間当りの賃上げ額は 648〜829ウォンで、全労働者平均(1004ウォン)にもはるかに至らない。 詳しくはキム・ユソン、 「2018年最低賃金引き上げが賃金不平等縮小におよぼした影響」、韓労社研2019.2参照 [6] ホン・ソンマン、「文在寅政府の雇用政策、そして国家雇用保障の意味」、 ≪ワーカーズ≫ 45号、2018.7.参照 [7] 30大財閥社内留保金950兆、チャムセサン2019.5.7付 翻訳/文責:安田(ゆ)
Created byStaff. Created on 2019-06-04 17:24:21 / Last modified on 2019-06-04 17:25:39 Copyright: Default 世界のニュース | 韓国のニュース | 上の階層へ | ||||||