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News Item 201904003
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経社労委、野合かナンセンスか

[ワーカーズ・イシュー(2)]弾力勤労制合意...その日の未明、Fホテルで起きたこと

キム・ハンジュ、ユン・ジヨン記者 2019.04.03 13:35

[順序]

(1) 経社労委、野合かナンセンスか

(2) 「民主政府」が作った社会的対話の被害者

ある明け方、人々の目を避けてホテルでひそかに進められた協議は「社会的対話」なのだろうか。 2月19日、大統領直属機構の経済社会労働委員会(経社労委)は、 弾力的勤労時間制単位期間拡大を「初の社会的合意」だと発表した。 使用者が労働時間を自由に増減できる制度だ。 労働界では労組がない未組織・非正規職労働者を中心として弾力勤労制が広がるとし、 ずっと反対の立場を明らかにしてきた。 だが混乱を繰り返した対話はホテルの密室で再開され、結局再び「野合」というレッテルを貼られることになった。 これと共に「社会主体の民主的対話」により「労働尊重社会」を実現するという経社労委の目標も、なかったことになってしまった。 「ワーカーズ」がこれまでの経社労委漂流の過程を探ってみた。

[出処:キム・ハンジュ記者]

弾力勤労制「密室合意」、公益委員「私も知らない間に結果が反対に」

「初の社会的対話」である弾力勤労制合意は、なぜ「密室野合」と批判されるようになったのだろうか。 いったいどんな「社会的人物」が、どんな過程を経て合意に至ったのだろうか。 「ワーカーズ」は公益委員のA氏から弾力勤労制の密室合意の過程を聞くことができた。

弾力勤労制議題を扱った会議体制は、 経社労委傘下の「労働時間制度改善委員会(労働時間改善委)」だ。 経社労委は2月19日午後5時、弾力勤労制労使政合意を発表するにあたり、 労働時間改善委が終盤の高位級協議枠組みを稼動させ、 労使政の「大乗的決断」により合意に至ったと明らかにした。 経社労委がマスコミに発表した合意の過程はこうだ。 2月18日午後4時30分、労働時間改善委が8次全体交渉を開いて 「徹夜のマラソン集中交渉(幹事団会議)を展開」したが合意できなかった。 そして翌日未明の2時30分に会議が終了した。 だが同日午後5時、突然、労働時間改善委は 9次全体会議で出席委員の全員一致拍手で弾力勤労制拡大合意文を採択した。 9次会議を開いた時間はたった30分だった。

そのため8次と9次会議の間に労使政が密室野合したのではないかという疑惑が広がった。 実際に労使政の合意内容は、公式的な全体会議で議論されたものではなかった。 経社労委の8次全体会議時間も30〜40分でしかなかったという。 全体会議の後、明け方まで進められた徹夜会議は幹事団会議だ。 これに関して内部的に問題提起もあった。 ある公益委員は非文書化を前提とする幹事団会議の進行に問題を提起した。 この幹事団会議の結果をめぐり、全体会議が追認するだけというのも望ましくないといった。 事実上、全体会議が形式的な脇役に転落するという憂慮だ。 実際に幹事団の会議内容は「非活字化」を前提としていたため、 経社労委委員さえ該当内容を口頭で報告された。

公益委員のA氏によれば、8次〜9次全体会議の間、 経社労委前のFホテルで「幹事団会議」という名の密室会議が開かれた。 A氏は「委員でも、幹事でもない人が(議論の席に)たくさんいた。 幹事団会議だと言うが、幹事はみんないなくなった」とし 「幹事団会議を名分として会議ではなく別途の議論をしたのだ。 (弾力勤労制合意に決断が必要な)主役は経済人総連と韓国労総だったため、 核心の関係者どうしが調整したと見られる」と話した。 「幹事団会議」は事実上、非公開の議論の名分だった。 A氏は過去にも労働時間改善委が同じような名分の 「幹事団会議(非公開)」を3回程度開いたと明らかにした。 19日午前3時頃に交渉が最終的に決裂した後、 A氏は経社労委関係者からまた連絡を受けた時刻は同日午後3時頃だ。 驚いたことに労使政が弾力勤労制に合意し、これを発表するという知らせだった。 A氏は「(公益委員の)私が知らない間に行われた」とし 「委員ではない人が集まって、結果をこのようにひっくり返した。 尻尾が胴体を振ったようなもの」と当時の状況を伝えた。

実際に合意文に名前を連ねた人物は、 イ・チョルス(労働時間制度改善委員会委員長)、 イ・ソンギョン(韓国労総事務総長)、 キム・ヨングン(韓国庚子総協会常勤副会長)、 イム・ソジョン(雇用労働部次官)、 パク・テジュ(経社労委常任委員)の5人だ。 彼らのあち、労働時間改善委の委員はイ・チョルスとキム・ヨングンただ2人だけだ。 委員ではない人物が合意の主体になった形だった。

A氏は「合意決裂」が「電撃合意」でひっくり返った情況を一足遅れて確認した。 19日明け方の会議決裂の後、彼らが朝にまた会って議論を続けたという。 A氏は「弾勤制『2週間前通知』条項一つをめぐって(結果が)ひっくり返った」と明らかにした。 韓国労総のさまざまな「防御カード」のうち、該当条項が受け入れられて合意に至ったという説明だ。 A氏は「合意文によれば、弾力勤労制とは無関係に、 天災地変や気象悪化などに対応する特別延長勤労制度が含まれた。 これは協議だけで週単位労働時間を変更できる毒素条項だ。 あまりにも多くを開いてやった形だ」と説明した。

労使関係改善委は「団結権・団体行動権」を毀損

その上、経社労委傘下の「労使関係制度慣行改善委員会(労使関係改善委)」は、 財界の要求によって「団結権・団体行動権」を傷つける合意を押し通している。 当初、労使関係改善委はILO(国際労働機構)の核心協約批准を目的に組まれた。 韓国政府は1991年にILOに加入して以来、 8本の中核的協約のうち、結社の自由および団結権保護に関する協約(87号)、 団結権および団体交渉権に関する協約(98号)など、 4本の協約を批准していない。 そのためILOをはじめとする国際社会は韓国政府に該当の協約の批准を持続的に要求してきた。 だが労使関係改善委公益委員さえ、 ILO協約をはじめとする国際社会の勧告に逆行する発言を吐き出して、 会議を混乱に追い立てている。 「韓国がILO基本協約を批准して結社の自由委員会の勧告を受け入れる理由が不明確だ」という意見から、 「争議行為の処罰条項も至急な改善対象」だという要求まで続いた。

[出処:キム・ハンジュ記者]

公益委員たちは昨年10月に提出した「労使政合意書(案)」で、 団体交渉と争議行為に関する立法事項として「争議行為の対等性を確保」すべきだとし、 ストライキに対する「使用者対抗権」の議論の余地を開いた。 11月20日の3次合意案には、労働三権を傷つける具体的な内容が含まれ始めた。 「在職中の者」ではない組合員は、企業別労組の役員・代議員になれないようにして、 勤労時間免除(タイムオフ)の限度を超過する内容の労使合意は無効にした。 現行の公務員労組法で労組への加入を禁じる条項と、 教師公務員の争議行為、政治活動を禁止する現行の条項はそのまま維持された。

雇用労働部もまた協約批准を遮るのに力を貸した。 雇用労働部のリュ某局長は労使関係改善委3次全体会議で 「名誉退職者、退職者を労組の加入範囲に拡張すると、 勤労条件の交渉窓口として(職場協議会の)の役割に限界が指摘される」と明らかにした。 ILOが勧告した退職、解職者の労組加入権利を労働部が防いでいるわけだ。 リュ局長は過去に労組破壊労務法人といわれる「創造コンサルティング」の 「労組破壊協力メーリングリスト」に含まれていた人物だ。

その後、経営界の「労働改悪」要求があふれ始めた。 経営界は昨年12月18日、 △事業場占拠禁止、 △団体協約有効期間拡大、 △代替労働全面許容、 △不当労働行為処罰制度廃止を骨子とする議題を公式に提起した。 同月21日からはこれに対する本格的な討論が続いた。 これに歩調をあわせて韓貞愛(ハン・ジョンエ)共に民主党議員は12月28日、 労組法改正案を発表した。 改正案は公益委員合意案よりはるかに後退し、 非従業員だけでなく産業別、地域別労組活動や社内下請労組の活動まで制限する内容が含まれている。 これと共に、勤労時間免除(タイムオフ)限度を超過して労組専従者に給与を支払うことを「不当労働行為」として規律するという条項までが入った。

何一つ得るものがない経社労委委員会、「社会的弱者」排除だけ

経社労委傘下に設置された各種の委員会でも、 社会的議題に関する議論を進めてきた。 だが社会的弱者に対する声を入れるという当初の目標が面目を失うほど、 法の死角地帯にある労働者たちの保護対策が排除されたり、 議論も進まない事例が続いている。

経社労委傘下の議題別委員会である「産業安全保健委員会」は、 現在まで主に長時間労働関連議題を取り扱った。 △勤労時間特例業種に対する最大許容勤労時間制限、 △過労死防止法制定などに対する議論だ。 その過程で、委員会は最大許容勤労時間に関して 「5人未満の事業場、特殊雇用形態勤労従事者など 勤労時間規制の死角地帯にある人々」に対する保護方案はこれ以上議論しないことにした。 経営界が該当議論に反対したからだ。

実際に委員会に参加する財界の人物は、 会議で「5人未満の事業場で心血管系疾患死亡者が多いのは、 勤労者が望んで長時間勤労をする場合などの複合的な要因があり、 議論の主題として適切ではない」と主張した。 「社会安全網改善委員会」も、 特殊雇用労働者および芸術家を雇用保険拡大の対象から排除した。 特殊雇用労働者に雇用保険を拡大すると、 労働者性認定の可否が争点になるという財界側の憂慮による。

産業安全保健委員会は、過労死防止法の制定などを勧告する合意の導出でも難航している。 政府と財界すべて過労死防止法制定に難色を示しているからだ。 彼らは法制定の勧告ではなく、政府の総合対策樹立を勧告する線で合意が可能だと粘っている。 財界側の委員は会議で 「政府と経営界が過労死防止法の制定に同意していない状態で合意方向を決めるのは適切ではない」と主張し、 雇用労働部も「過労死防止法の制定が必要なのか、検討が必要だ」と明らかにした。

もうひとつの議題別委員会である「デジタル転換と労働の未来委員会」でも、 財界の過度な要求が続いた。 該当委員会は、 △スマート工場などの新技術導入による雇用安定化、 △プラットホーム労働に対する保護方案用意の議論などを続けている。 その過程で財界側委員は提案発表文で政府側に、 △選択的勤労時間制、裁量勤労時間制などの適用要件緩和および適用対象拡大、 △製造業直接生産工程に派遣勤労者使用許容など派遣勤労許容範囲拡大、 △週52時間労働時間限度調整など労働および勤労時間制度柔軟化を要求した。

プラットホーム労働者保護方案にも、 公益委員も財界も「労働者性・使用者性認定」は難しいという雰囲気が強い。 プラットホーム市場は既存の労使関係から接近するのが難しく、 「労働者性」の有無を分けることになると法制度の改善の進展が困難という理由だ。 委員会のある公益委員は問題提起で 「プラットホーム提供事業者と労働供給業事業体を事業主に拡張する問題から接近すれば、進展した議論が難しい」とし 「専属性中心の雇用保険制度の枠組みを抜け出して、 プラットホーム労働者の失業に共同で対処する方式の雇用保険制度に改編しなければならない」と主張した。

「国民年金改革と老後所得保障特別委員会」も各界の意見の差により合意捻出に難航している。 国民年金の所得代替率と保険料率値上げをめぐる対立のためだ。 現在、経営界を除く大多数が所得代替率適正水準45〜50%、 保険料率適正負担2〜3%の値上げを主張している。

だが財界は、保険料率の値上げは不可で、 所得代替率引き下げは社会的合意の破棄だと言って現行維持を固守している。 これまで委員会は該当の議題をめぐり5か月間、遅々と進まず意見の差を確認するだけで、 「特別委は勉強の場ではないのではないか」という不機嫌な声も聞こえる。[ワーカーズ53号]

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2019-04-16 19:11:55 / Last modified on 2019-04-16 19:15:49 Copyright: Default

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