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ファクトと偽物ニュースの間でーメディア ポピュリズム

[ワーカーズ]技術文化批評

キム・サンミン(文化研究者) 2019.03.20 10:18

ある人たちは、自分の主張がファクトに基づいているから、 あるいは自分がファクトそのものをいっているのだから 論駁の対象にならないかのように話したりする。 主に、何かを曲解したり他の人たちと不和な若い保守主義者たちだったと記憶する。 人々は時間が経つとファクト自体が変わったり、 話す人によってそれが変わることはないと考える。 これにより、ファクトを所有してファクトを自己主張の根拠に使えば、 無条件に正しいか、論争で勝利すると思う傾向が生じた。

ところが問題は、そのファクトというものが、あるがままの真実を示するのではないという点だ。 ファクトに対する観点や位置により、 そして社会的合意や歴史的な通念によってファクトは異なって解釈される。 またどんな事態が、どのようにして発生したのかを描写することは、 それ自体が不変の真理ではないこともある。 「私はファクトを言っている」という陳述は、全く真理を持っていないということは当然だ。 そして「昨日雪が降った」という陳述が、私にとって、あるいは私の周辺にいた何人かの人にとっては真実でも、その陳述を聞くすべての人にとっては真実にならない。 こうした単純な陳述ではなく、歴史的な事件に対する陳述なら、事情はさらに複雑になる。 「1980年5月に光州で軍隊が投入されて、 民主化を熱望する多数の市民が怪我をしたり命を失った」という誰かの陳述は、 歴史的事実、すなわちファクトと認定される。 それは80年代以後、今まで韓国社会の民主化を引っ張ってきた動力であったし、 今後も変わらない歴史的事実だ。

ところで特定の部類の人々はそのファクトを認めない。 そういうファクトを疑ったり否定することに終わらず、 時には他のファクト、他の目的を持ったファクトを作り出す。 「1980年5月、光州に北朝鮮の特殊部隊が降りてきて、 暴徒と共に韓国の軍人を攻撃した」のような陳述は、 5・18光州民主化運動あるいは光州民衆抗争というファクト自体を否定することはできないが、 それが違う方式で発生したり歪曲されたと主張する。 つまり社会全体が認めるそのファクトは本当のファクトではなく、 自分たちはそうした主張に反論することができるオルタナティブ・ファクト(代案事実)を持っていると話す。 ファクトを代替する他の代案的なファクトが存在するだろうか?

一部の保守政治家がまるで代案的なファクトであるかのように虚偽の事実を操作しながら、 当初のファクトを無化しようとするのは韓国だけの政治・文化的現象ではない。 トランプが米国あるいは国際政治の核として登場して大統領に当選するまで、 そして大統領当選以後、今までずっと自分の政治方法論にしているのと似ている。 米国は移住民の多様な文化的背景と遺産を包容し尊重することによって国家体制が構築されたと言われるが、 彼の登場と共にアメリカ的な価値観は、いつそんなことを言ったのかというかのように闘争して争奪しなければならないものに変わっている。 その代りにこれまで隠れていた白人優越主義や外国人・移住民排斥主義、人種主義と 女性嫌悪が地面の上に頭を出して、町を闊歩している。 重要なことはこうした旧時代的、非民主的、反歴史的価値観を共有して広めることが、 他でもないフェイクニュースとオルタナティブ・ファクト(代案事実)だという点だ。

世界の多くの個人は何の境界もなく、SNSやソーシャル メディアで緊密に、 そして日常的に連結している。 このような時代的な条件において、特定の主張や意見はいつよりもさらに広範囲で効果的に広がる。 過去に国家やマスコミ、あるいは少数エリートの手中に置かれていた情報は、 いまや誰もが生産して共有し、アクセスできるものとして新たに生まれた。 しかも数え切れない使用者が世界を見る窓として、 自分を展示するディスプレーとして、 その中で暮らす共同体が活用する各種メディアのプラットホームは 特定の意図を持つ人たちが生産した歪曲された情報に接することを容易にしている。 前の米国大統領選挙で特定の勢力は、 FaceBookのようなSNSに広告か情報かが分かり難い書き込みを掲示し、 これは個人の投票に影響した。 だがその巧妙な操作方式はまだよく知らされていない。 韓国でもコメント工作にいかに熱情的だっただろうか。

密なSNSを通して接するフェイクニュースは、さらにフェイクメディアとフェイクジャーナリズムを通じて生産され伝播する。 使用者の心理的な弱点に食い込んで、何がファクトなのか、フェイクなのか区別できなくする。 こうした事情なので、いわゆるレガシーメディア、すなわち正統ジャーナリズムの本来の技能者ファクトチェックが報道機関で流行し、 これがまるでフェイク・ニュース時代に生じたジャーナリズムの新しい機能であるかのように見られたりもする。 しかしどんな個人でも、自分だけのメディアを通じて自分の考えを表出することが可能な時代に、 何を真実、あるいは偽りだというのか、どのようにして判断するというのだろうか。

こうしたポスト-ファクトの時代が公論の場に呼び出す多くの自分自身のラッパ手たちは 他の何でもない照会数のために、つまり人気があって影響力がある有名人になるために (すでに有名ならさらに多くの有名税と金と権力に導いてくれるさらに大きな数字のために) 偽りの扇動や楽しみのための刺激的な行為をはばからない。 メディアプラットホームの形式は、感覚に反応して欲望により動く大衆を担保として、 広告という資本主義的な媒介と公論の場という民主主義の政治的な効能に最大限の自由度をプレゼントする。 メディアはポピュリズムを極大化することにより、資本と政治権力のペアを組む。

ポスト-ファクトの時代に、もはや事実は存在しない。 ある時ニーチェが予想したように、解釈が存在するだけだ。 しかし、どうすればこの解釈と観点しか存在しないエコチャンバー(echo chamber)内の世界を壊し、進むことができるだろうか? われわれは見えない領域で見えるものを設計して統制するアルゴリズム支配体制から抜け出し、 またファクトに向き合うことができるのだろうか? メディア ポピュリズムの雪崩れの中でも「楽しい知識」を捨てずに ヘイトを再生産しない妙案をみつけなければならない。(ワーカーズ52号)

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2019-03-22 22:10:57 / Last modified on 2019-03-22 22:10:58 Copyright: Default

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