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大宇造船は厳格に主人がいる会社です

[ワーカーズ]社会主義探求領域

カンフ(社会運動に関心が多い) 2019.03.08 16:55

#1. 財閥に国家資産を売り飛ばす政府

最近、産業銀行による大宇造船海洋売却が一瀉千里に進行しています。 事前に緻密な計画と脚本がなければ不可能でないかと思うほど速戦即決です。 1月30日、現代重工が買収意向書を提出するやいなや、 一日後に産業銀行、現代重工、大宇造船海洋の3か所とも理事会を開き、 買収合併を推進することにしたと発表しました。 その後、産業銀行は韓国造船業ビッグ3のうち残る1か所のサムスン重工業にも買収の意思を聞いたが、 わずか10日後の2月11日、サムスン重工業は当初提示された回答期限(2月28日)よりはるかに早く買収の意思がないことを通知しました。 それこそ形式的な確認手続きでしかありません。 産業銀行と現代重工は3月8日の本契約締結を控えています。 これまでの構造調整で犠牲だけを強要された労働者たちは、 売却がさらに深刻な生存権危機を呼ぶのでストライキなどの抵抗に出ています。

大宇造船海洋は国策金融機関の産業銀行が過半の株式を保有する(約56%) 事実上の国有企業です。 IMF危機で大宇グループが崩壊し、国家は大規模に公的資金を投入して主要系列社を買収しました。 大企業がつぶれると、その大企業に投資したり金を借りた金融資本はもちろん、 そこに納入する部品メーカーなどの中小下請企業までが続々と倒産危機を迎えることになるので、 国家としてはそれこそ耐えられなかったのです。 しかし国家(政府と産業銀行)はこれらの企業を公的に運営するのではなく、 徹底的に債権者として行動します。 何とか利益を出してまた私企業で売ろうとしたのです。

損害は税金で埋めて、利益はまた民間資本に譲り渡す態度、 いわゆる「損失の社会化、利益の私有化」は、 IMFから20年間繰り返されました。 代表的な事例がまさに大宇自動車です。 大株主で債権団の代表格だった産業銀行は、 2002年に米国の自動車会社GMに大宇自動車を安値で売り払います。 大宇自動車は現在、韓国GMと名前を変えましたが、 まさに昨年だけでも産業銀行はGMの撤収脅迫に非公開で交渉を行い、 8千億ウォンの税金を追加でGMに与えました。 国家の支援を食いものにしたGMは、 群山工場閉鎖に続いて今でも研究開発部門分割、整備事業所外注化、工場稼動率縮小などの構造調整を続けているのにです。

産業銀行は早くから大宇造船海洋も同じように売ろうとしました。 大宇グループが崩壊した1999年からです。 しかしいつも買収交渉に失敗して、 さらには2013年からは年間数千億ウォンから1〜2兆ウォンの営業赤字を記録し、 これはさらに難しくなりました(後で見ますが、この天文学的な赤字は決して労働者のためでなく、 大宇造船海洋を私企業のように運営した経営の失敗のためです)。 資本主義で、どの私企業がばく大な借金に陥った会社を抱え込もうとするでしょうか? そのため政府は苛酷な構造調整で大宇造船海洋を黒字に転換して、 なんとか売却しようとしたのでしょう。 たとえば朴槿恵(パク・クネ)政権は、 造船業の構造調整の真っ最中だった去る2016年、 「造船産業競争力強化方案」を発表して人員と資産の大幅な削減、売却と共に 「大宇造船民営化、M&Aなど産業再編」を推進すると明らかにしました。 文在寅(ムン・ジェイン)政府も全く同じです。 昨年4月、政府は「造船産業発展戦略」を出して 「大宇造船主人さがし」を検討すると明示しました。 そして2017〜18年に大宇造船が黒字を記録すると、 いちはやく現代重工に売り払おうとしたのでしょう。

その間、大宇造船海洋に入った公的資金は約13兆ウォンにのぼるといいます。 ところで今、現代重工が大宇造船買収に入れる現金は4千億ウォンに過ぎません(参考までに大宇造船海洋の資産規模は 2018年3分期末基準、11兆5千億ウォンです)。 産業銀行が保有する大宇造船の株式を現金で売るのではなく、 現代重工の株式とバーターするからです。 現代重工の鄭夢準(チョン・モンジュン)、チョン・ギソンなど総帥一家は 黒字に転換した11兆ウォン規模の最も重要な国有企業を たった4千億ウォンで買い、 同時に産業銀行という国策金融機関を後援者にしたわけです。

主要言論は言うまでもなく、文在寅政府をはじめとする歴代政府は今まで 「大宇造船海洋には主人がおらず、 会社がきちんと運営できなかった。 主人を探してやらなければならない」と主張しました。 しかし大宇造船海洋が本当に「持ち主のいない」企業でしょうか? 今まで大宇造船に投入された公的資金は「持ち主のない」お金でしたか? むしろ、本当の主人を徹底的に排除して私企業に転落させ、 経営陣と権力者が勝手に運営したことが問題ではないでしょうか? 国家の資産で基幹産業を財閥特典に渡そうとする今、 労働者数万人の生存権が契約書一枚で奈落に転落する危機に処している今、 社会主義が提示する大宇造船の本当の主人を探してみましょう。

[出処:https://commons.wikimedia.org/]

#2. 誰が大宇造船をつぶしたのか

2013年「グローバル コンサルティング業者」というマッケンジーが、 大宇造船にコンサルティング報告書を送ります。 「2020年まで海洋プラント産業が成長するので、 ここに力を入れて事業の比重を上げろ」というのが骨子でした。 当時、国際原油価格はかなり高かったので、 海底ボーリングで天然ガスと石油を取る海洋プラントが利益をもたらすと予想したのです。 大宇造船の経営陣はこの助言を忠実に履行して、 核心技術もない海洋プラントにむやみに飛び込みます。 天文学的な費用がかかりました。

わずか1年後に国際石油価格が暴落します。 2014年6月から下がり始めた石油価格は、半年で半分以下に墜落しました。 海洋プラント事業にオールインした前提が虚しく崩れたのです。 海洋プラントに飛び込んだ韓国の大型造船3社がすべて危機に陥ります。 大宇造船の大規模不良もこの時に発生します。 2011年末までに年間1兆ウォン水準の営業利益黒字をあげた大宇造船は、 2013年に1兆ウォン規模赤字を記録します。 続いて2014年に5千億ウォン、2015年に2兆ウォン、2016年に1兆5千億ウォンの営業損失を続けて出します。 報道機関と分析機関は先を争って海洋プラントが問題の根源だと声を高めました。

ここにまたマッケンジーが登場します。 2013年に海洋プラント事業を勧めて莫大な不良を引き起こしたこのコンサルティング業者は、 3年後の2016年、韓国造船業に対する構造調整報告書を提出します。 そして厚かましくも自分がコンサルティングした大宇造船が 「独自に生存することはできず、 韓国造船業を現代重工・サムスン重工業のビッグ2体制に再編しなければならない」と主張します。 韓国政府はこの「極端な」対策を受け入れないといいつつ、 先に指摘したように 「大宇造船民営化、M&Aなど産業再編」を推進すると発表します。 そしてそのために2015年から高強度の構造調整を押し通します。

この途方もない経営の失敗に対して大宇造船の最大株主である産業銀行と国家はどんな責任も負いませんでした。 1年で本心が現われた海洋プラント事業は、むしろ政府が促していました。 構造調整の被害はそのまま労働者たちが抱え込みました。 構造調整以後、大宇造船の資本対応負債の割合は2015年末基準で何と3000%に達しましたが、 2018年3分期末には216%水準に下がり、「正常企業」と特に違わない状態を回復します。 営業利益は2017年に7千億ウォンの黒字を記録し、 2018年にも3分期までに累積黒字額が7千億ウォンを越えました。 2021年までに船舶の引き渡しで2兆7千億ウォンもの現金も入ってくる予定です。

これまで労働者たちはどうなったでしょうか。 大宇造船の事業報告書によれば、 2013年末基準で1万3千人以上いた労働者数は2018年には9900人程度に減りました。 3千人以上が追い出されたのです。 1人平均の給与も年間3千万ウォン程削減しました。 その上、これはあくまでも直接雇用した労働者の数値です。 造船業は直接雇用正規職よりも多段階下請非正規職労働者のほうが はるかに多くの数を占有します。 この造船所の非正規職労働者たちは数万人が静かに切られていきました。

[出処:https://en.wikipedia.org/wiki/DaewooShipbuilding_&_Marine_Engineering]

#3. 資本主義造船を越えて

国有企業の大宇造船は、このように徹底的に私企業として運営されました。 莫大な公的資金が入り、政府の株式が過半を占めるているのに 民主的、公共的な統制はありませんでした。 政府が送った押し付け人事が大宇造船経営を思うままにして、 自分たちの私益を取るために熱中するだけでした。 一方、2015年に本格化した造船業種の危機は、 市場と資本主義的経営失敗を端的に表わしました。 前に言及したマッケンジーのコンサルティングはその赤裸々な事例です。 また慢性的な問題だと指摘されてきた造船会社の いわゆる「低価格受注競争」も同じです。 何とかして受注を取って利益をあげるために 造船会社資本が競争で入札価格を下げ、不良経営をあおったということです。

不透明な市場変動、何の責任も取らない資本のコンサルティング、 利益を得るための出血競争。 いつまでここに数十兆ウォンの公共資金と数万人労働者の生存権が担保に取られなければならないのでしょうか? 大宇造船の主人は厳格にこの社会全体です。 この社会的資産をなぜ財閥という私的資本に、 それも安値で売り払わなければならないのでしょうか? いくらでも公的所有を維持しながら公共的統制を強化することができるのに。

社会主義者は基幹産業の所有構造を国家所有や社会的所有形態に変え、 公共の目的によって共同体構成員が民主的に統制し、運営しろと主張します。 大宇造船はすでにこの20年間、ずっと国有企業でした。 では今までの資本主義的で市場に従属していた一方、官僚的だった企業運営を転換すれば良いのです。 政府と産業銀行が送る落下傘経営陣ではなく、 労働者が選出した作業場の代表と該当地域の共同体から選ばれた住民代表が 一次的に経営の主体になることができるでしょう。 また職場-地域-産業-全国にわたり、 評議会のように労働者たちの民主的な意志決定機構が存在する社会主義社会なら、 必要な時に産業別評議会や全国評議会からも代表者を派遣できるでしょう。 造船業のような基幹産業は、多様な前後方の産業と関連しているのですから。

これ以上、マッケンジーのような資本コンサルティング業者と不透明な市場に未来を任せることはできません。 社会主義は生産手段の公的所有と民主的統制だけでなく、 私的資本の利益ではなく社会構成員の必要に立脚した生産を核心的な目的にします。 労働者たちと住民たちが各級の評議会という民主的な網で集まっていて、 共同体単位ごとに必要な財貨とサービスを確認し、 国家全体次元では経済計画委員会のような補助機構をおき、 消費財や生活用品・サービスだけでなく、 国家経済と産業水準で何が必要なのかを調査するでしょう。 社会主義でも当然、船舶と大型船は必要です。 本当に自由な世界貿易(資本の利益と収奪の道具としてではなく)のためにもです。 また、たとえば国家が親環境船舶を商用化して増やそうと思えば、 計画的にこれを国営造船所に任せて建設することもできるでしょう。 利益を上げると予想して、しゃにむに大規模な費用をかけて船を作り、 収益性がないと判明すると危機を迎える今のように繰り返される混沌をなくせるでしょう。

もう一歩踏み出せば、 社会主義ではこれ以上、それぞれの造船所が個別の利益のために競争することはありません。 大宇造船だけでなく現存する巨大造船所から中小造船会社、機資材業者などに至るまで、 産業生態系を構成する各企業の主人はこれ以上、個別の資本家ではありません。 社会的に合意して算出した必要に合わせて船舶の建設計画を樹立して、 これを産業評議会で労働者が議論して、 どの船舶をどの造船所でどう作るのかを自分たちで決めるようになるでしょう。 出血競争の浪費も、資本の損失を労働者たちに押し付けることもなくなるでしょう。

しかし想像は、現実の力がなければ空想に過ぎません。 造船業という基幹産業を共同体が公的に統制できるかどうか、 大宇造船の売却事態に正面から闘い始める労働者たちは、この質問にぶつかっています。 生存の岐路に立った大宇造船労働者たちの切迫した闘争が、 そしてその闘争で生存のためにも公的統制を要求として確立することが何よりも重要な理由です。(ワーカーズ52号)

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2019-03-14 20:38:12 / Last modified on 2019-03-19 02:16:43 Copyright: Default

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