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4次産業革命だろうが何だろうが「家事労働」は相変らず地獄だ

[ワーカーズ・イシュー(1)]世界女性の日特集(2)「ワーカーズ」記者、『家事労働専門家』挑戦記

ユン・ジヨン記者 2019.03.07 11:45

[順序]

(1) 4次産業革命だろうが何だろうが『家事労働』は相変らず地獄だ

(2) プラットホーム労働は『家事労働者』を解放させたのだろうか

昨年政府が発表した家事労働価値は時間当り1万569ウォン。 おお、今年の最低賃金より2219ウォンも高いじゃないか? 家事労働はいくら頑張っても無給。 だが有給家事労働を職業にすれば、かなり悪くない雇用になるようだ。 以前にはしばしば家政婦、派出婦、おばさんと呼ばれた人々。 それよりずっと前には下女、あるいは食母として暮らした彼女たち。 だが最近ではマネジャーやクリーナーという、かなり華やかな呼称もできたという。 これがすべて言葉だけで聞いた4次産業革命のためなんだという。 いわゆる共有経済、プラットホーム産業が家事労働市場を抱き込みながらなされた変化だ。 それで一度挑戦してみた。 4次産業革命が生んだもうひとつのプラットホーム労働。 家事労働専門家になってみること。

#1. 教育

ホームクリーニングサービスを仲介するO2O(Online to Offline)企業、 A社のアプリをダウンロードした。 マネジャーと呼ばれる家事労働者になるための資格要件を見た。 「30歳以上、65歳以下」で、「大韓民国国籍」を持つ「女性」でなければならない。 3つの要件すべて通過。 では会社が行う教育プログラムを履修しなければならない。 周期的に開かれる教育日程を確認して申請ボタンを押した。 準備物は住民登録証とスマートフォンで良い。

朝9時に教室に到着すると、もう20人ほどの女性で埋まっている。 教育の時間は午前9時から4時間40分だ。 1時間目の講義の主題は「顧客応対方法」だ。 「こんにちは。A社のマネジャーです」。 初めて顧客と対面した時の挨拶から始めた。 それでこそ専門家らしい印象を与えられるという。 不必要な質問は遠慮することも重要なサービスの礼節だ。 私的な質問はもちろん、家を訪問する方法、清掃の方法のような質問もしてはならない。 つまり、挨拶した後は、すぐに業務で直進しろということだ。 顧客の要請に「だめです」、「できません」という返事をしてもいけない。 その代わりに「時間追加でお手伝いしましょうか?」という回答で自然に追加決済を誘導する。

何よりも講師が二回、三回と強調して熱弁をふるった注意事項の三種類。 まず、決められたサービス時間が過ぎるまでは絶対に退出してはいけないということ。 顧客が早く帰れと薦めても「時間通りに退出する」と粘らなければならない。 後で顧客が返済を要求するかもしれないということだ。 次は直取引不可。 とにかく会社をはさんで仲介を受けるという原則だ。 もし顧客とマネジャーの1対1の直取引が発覚すれば、 直ちに利用制裁と再加入不可などの措置が取られる。 その上、講師は顧客とマネジャー間の通話の内訳を会社が知っているので、 すぐに直取引を見つけられると脅した。 最後は業務をする時は会社が支給するエプロンを着用すること。 エプロンの前面には会社のロゴが大きく書かれている。

[出処:ミンジ]

2〜3時間目は清掃サービスの動線とアプリの使用法教育だ。 業務の選択から出退勤まで、すべてアプリを使って選択して記録する。 家に向かう瞬間アプリで出勤印鑑を押し、顧客の家に到着すると、また業務開始ボタンを押さなければならない。 仕事が終わった後にも業務終了ボタンを押さなければ賃金を受け取れない。 報酬は時間当り11000ウォン〜13000ウォン水準。 だが時給13000ウォンは交通が不便な京畿道郊外の周辺地域に定期サービスに行く場合だ。 定期サービスでない場合は時給11000ウォン、 定期サービスでも大衆交通が発達している地域は時給12000ウォン程度を受ける。 サービス価格は坪数と時間によって変わる。

二回の休み時間のたびに教育生たちが「出席チェック」のために列をつくった。 「出席チェック」とはいうが、簡単な面接だ。 住民登録証を提出し、簡単な質問を受け、マネジャーとして登録する手続きだ。 「どこで知りましたか?」、「インターネットを見てきました」、 「働いたことがありますか?」、「いいえ」。 返事と同時に光速合格。 午後1時を遥かに過ぎて、とてもお腹が空いてきた。 だが会社はご飯ではなく清掃カバン一つずつを支給した。 エプロンと一緒に必ず持っていなければならないカバンらしい。 その中にはエプロン布巾、洗剤、スクイズ(水気を除去する清掃道具)が入っている。 「私たちの会社は皆さんから金も取らずにこうした専門教育をしています」。 講師が教育時間の時に言った言葉が耳元をぐるぐる回る。 なぜお前たちの会社サービス教育を受けても食事も出さず、教育費も払わないのか。 不満を飲み込みながら、飢えた腹を抱えて教室から抜け出した。

#2. 練習

「そこまでしなければいけないのか?」 夫は派出をするという記者を口を極めて止めた。 口では「心配だから」だが、記者は夫の本当の内心が分かる。 出て行って、迷惑をかけないかということだ。 「私がその気にならなかったからで、腹をくくれば本当にいたずらではない」。 記者を「クソ手」扱いする夫を一喝した後、ゴム手袋をはめた。 教育で講師は実戦に行く前に自分の家で練習をしてみろと薦めた。 清掃の動線と時間の分配をまず習得しろということだ。 それで週末を利用して練習してみることにした。 記者が暮らしている家は13坪。 3時間半で終わらせるのは楽勝だ。 問題はクォリティーだ。 私が暮らしている家をホテルのようにしてみるぞと約束した。

午後3時。 不安そうな夫を居間に押込んで、マニュアルのとおりにトイレに行った。 先ずはトイレと厨房に染み付いた汚れを浮かせる。 トイレと厨房を行き来しながら洗剤をすみずみまで撒いた。 べたべたと油汚れがついたガスレンジにも。 その間に洗濯をしなければならない。 洗濯物を分類し、洗濯網に入れ、洗濯機を回した。 時計を見るとすでに30分程度。

次の業務はキッチンの清掃だ。 まず洗剤をつけておいたガスレンジを手でごしごしこすってみた。 だが油汚れは落ちそうもない。 洗剤が少なすぎたのだろうか? どうやら湯で浮かせなければならないようだ。 洗いものを積んでおいたシンクに湯を満たして、 ガスレンジの火口とバーナーを漬けた。 しかしちょっとまてよ。 かび除去剤を付けたのと食器を混ぜてもいいのだろうか? 急いで洗剤の成分に目を通した。 よく分からないが、何か途方もなく有害でき強い物質でできた洗剤だ。 皮膚についた場合は直ちに水で洗って、使用する時は窓を開けて換気をしろという。 突然、途方に暮れる。 だが迷っている時間はない。 あたふたと重曹を撒いた後、ガスレンジの台と壁を磨き始めた。 だが白く澄んだ重曹は、頑固な油汚れを簡単にはね除けることはできなかった。 腕が折れるほどタワシでこすった。 天然洗剤は人体に無害な代わりに、筋骨格系疾患にはとても有害だった。

[出処:ミンジ]

食器を整理して皿洗いとシンクの洗浄、生ゴミの整理、シンク台と食卓の汚れ除去を終えた後、 食器をツヤが出るまで磨いた。 時計を見るとキッチンだけですでに1時間20分使ってしまった。 残る時間は1時間30分。 あわてて布巾を投げ捨ててトイレに走っていった。 ブラシとタワシと歯ブラシを使って洗面台と便器、トイレの床と壁を拭き始めた。 明らかにさっき洗剤をまいておいたのに、タイルの間のカビは簡単には消えない。 人体に有害かどうか、かび除去剤をさらに力強く撒いた。 2時間近く腕をふり回していていたら、肩と首が重たくなった。 それでも止められない。 教育の時に講師は「ディテール」が重要だといった。 鏡と水道の蛇口、ペーパーホルダーも、ぴかぴかに磨かなければならないのだ。 トイレットペーパーをホテル式に折っておくことも忘れてはいけない。 最後に清掃後にはスクイズを利用して床と壁、ガラスの水分まで取らなければならない。 全てをクリアした後に時間を確認した。 瞬間私の目を疑った。 休まずに働いたのに、何と1時間も過ぎていた。

残った時間は30分。 居間と居間、小さな部屋はまだ手も付けていなかった。 ゴミははやく分離回収してくれと家の中で喚く。 洗濯機の中に洗濯ものを放置して2時間が過ぎた。 血糖が下がり、フラフラする手で小さな部屋に乱雑に散らかった服と物を整理し始めた。 服は教育時間に実習した「ホテル式」でたたみ、元通りに整理した。 そしてぞうきんで本箱と机、テーブルを磨こうとした瞬間、アラームが鳴った。 退勤を知らせる音で、存亡を知らせる音だった。

結局、夫と共に残りの清掃を終えたのは夜10時。 サービス時間よりちょうど二倍必要だった。 要領を得なかったことが大きかった。 そうだ。 家事労働で必要なことは「女性」という性別などではなかった。 これもまた「技術」と「専門性」を必要とする業務だ。 その上、実戦はよく知っている空間ではなく、本当に知らない現場だ。 果たしてこのすべてのペナルティを乗り越えて成功的に仕事を終えられるだろうか。 暗鬱なシャドウ・ワークの重さが私にのしかかってきた。

#3. 実戦

手をぶるぶる震えながら、携帯電話の画面で「受諾」ボタンを押した。 何日か悩んだ後、選択した初めての業務だった。 ソウル郊外周辺の17坪のアパート。 午前10時から午後1時30分まで。 幼児とペットはいない。 洗濯は必要ない。 キッチンと小部屋のホコリ除去を丁寧に。 顧客が作成したカードを見ながら、やめればいい選択だと自らを慰労した。 だが不安感を取り払うのは難しかった。 それでも心配ばかりしていることはできない。 会社が配ってくれた教育資料とアプリに示された清掃方法をしっかり覚え始めた。 清掃を本で学ぶというのは情けないことこの上なかったが、 今はわらでもつかむしかない。

いよいよ出勤当日。 時間を短縮するための物品を一つ一つカバンに入れた。 布巾2枚、ブラシとタワシと歯ブラシ、大型ビニール袋2枚。 家を出る時、マネジャー用アプリを起動して「出発」ボタンを押した。 マネジャーの出勤記録の入力は会社を通じて顧客にも伝えられる。 顧客の家には10〜15分前に到着しなければならない。 バスを待ちながら、とても久しぶりに祈った。 男性一人で暮らしている家ではないことを、 もし男性一人で暮らしている家なら主人が家にいないことを。 とにかくその家に男性と自分しかいないことがないように。

15分前、顧客の家の前でベルを押した。 扉を開けてくれる顧客の性別は女性。 ああ、神様、ありがとうございます。 「こんにちは。A社のマネジャーです」。 気持ち良く挨拶をすると、突然顧客の家の中から毛むくじゃらの塊が飛んでくる。 ワオン ワンワン。 荒っぽい子犬が記者に向かってほえ始めた。 明らかに業務カードには「愛玩犬なし」と表示されていたのに。 業務カードの内容と現場の状況が違う時は? もちろん教育時間に聞いたことはない。 つまり、そのまま仕事をするということだ。

靴を脱ぐ瞬間、空気からして尋常でないと思った。 玄関からゴミが転がる。 一目で入ってくる厨房と居間。 「6.25時の大騒ぎは大騒ぎでもない」という言葉は、こんな時に使うためにある。 ためらう時間はなかった。 マニュアルのとおりならトイレで服を着替えなければならないが、 トイレまで行く時間もなかった。 あたふたと服を着替えてエプロンをかけた。 しまった、業務「開始」ボタンを押さなければ。 急いで携帯電話アプリをつけて「開始」ボタンを押したが、 「業務時間前です」という案内画面が表示されるだけだ。 しかたなくゴム手袋をはめて厨房に直行した。 広いキッチンには想像以上の皿と生ゴミが積まれている。 長い間溜め込んでいた食物は並大抵では消えない。 流し台に頭を突っ込んで皿洗いを始めた。 二回、霊魂が抜ける程、激しくおう吐した。

その間にアラームが鳴った。 マニュアルによる時間分配のために合わせたアラームだ。 もう50分経ったということだ。 計画のとおりなら、トイレ清掃に行かなければいけないが、 まだガスレンジとシンク台は手が付いていない。 その中で山のように積もったゴミを処理するゴミ袋が見つからない。 しかたなく居間の扉をノックした。 「お客様、生ゴミの袋はどこにありますか?」、「ありませんが」。 「ではそのまま集めておきましょうか?」、「一般ゴミ袋に入れれば良いでしょう」。 うーむ? 少しの間、良心という奴がノックをしたが、すぐ姿を隠した。 私は急いで食物を集めた秘密をゴミ袋に深々と押込んだ。

清掃用品をいちいち探す時間もなかった。 家から持ってきたタワシとブラシ、洗剤でトイレ清掃を始めた。 浴槽と洗面台、便器を清掃し、床と排水口、壁を磨いた。 鏡と水栓、ペーパーホルダーにつやを出してスクイズで水気をぬぐい取った。 最後にホテル式にトイレットペーパーをたたむと、気が狂ったような笑いが流れ出た。 時計を見ると、残りの時間は1時間50分程度。 マニュアルのとおりなら居間の清掃をしなければならないが、 現場の状況を考慮して順序を変えた。 まずゴミ清掃と分離回収を先にしなければ、何も手が付けられない状態であった。

100リットルの大型ビニール袋2枚を持ってきたのは、記者が生まれてから一番の出来だった。 台所と居間、ボイラー室に積もるゴミを整理し始めた。 その過程でゴキブリ二匹を打ち殺した。 食物とペットボトル、ビニール、カン、あき缶、宅配箱などを整理すると大型ビニール袋がすぐ一杯になった。 残った時間は1時間10分。 居間を整理してホコリを除去すると、なんとか1時間残った。 だがまだ「魔の区間」が残っている。 顧客が「丁寧に」と頼んだ小部屋だ。 長い間人が入らなかったかのように惨めな姿だった。 床と机にごろごろしている各種のがらくたを整理しながら 「丁寧に? これで丁寧にできるか?」という悪口が出てきた。 小部屋の机と本たてを濡れ雑巾で拭いた後、また居間の扉を叩いた。 「お客様、居間の清掃をします。」

居間に入り、乱雑に散らかった服類を「ホテル式のたたみ方」で着々と整理し始めた。 その間、子犬がワンワンと鳴きながら再び記者に突進してきた。 その前日、私は会社に労災に対して問い合わせをしていた。 回答はシンプルだった。 「勤労関係ではないので労災保険は適用されません」。 私は「よしよし」を連発しながら努めて毅然とした振りをしたが、 あるいは子犬に噛まれないかと心労焦燥しなければならなかった。 「時間が残れば乾燥台の洗濯ものも整理してください」。 顧客はこの言葉を残したまま、子犬を抱いて外出した。 「何? 時間が残る? あなたに良心は残っていますか?」 怒りをぎゅっと押しこめて掃除機を回して水ふき掃除をした。 時計を見ると業務終了時間を10分超過していた。 すぐに乾燥台から乾いた洗濯を取り込み、 「ホテル式のたたみ方」を始めた。 衣類整理は「基本サービス」に含まれているので、 顧客が要求すれば必ず履行しなければならない。

洗濯ものをすべてたたみ終えると午後2時。 45分の超過労働の末に、私は自分の体ほどもあるゴミ袋5つをずるずる引きずり、顧客の家を出た。 水一杯飲むこともできず、一分も休めないまま4時間15分間、極強の家事労働をした。 腕と足がぷるぷる震えて口がからからに乾いた。 業務終了ボタンを押してどうどうとアパート団地から抜け出した。 はやくからだを横にできる所が必要だった。 この仕事を一日に二つやるのは死ねということだった。 翌日、私は会社から3万8500ウォンの報酬の精算を受けた。 そして激しい筋肉痛に苦しみ、何日間か笑いを失った。[ワーカーズ52号]

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2019-03-11 22:07:19 / Last modified on 2019-03-12 12:22:37 Copyright: Default

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