本文の先頭へ
LNJ Logo 韓国:「シカト」が残念な文在寅政府の公共医療発展対策
Home 検索
 




User Guest
ログイン
情報提供
News Item 201811005
Status: published
View


「シカト」が残念な文在寅政府の公共医療発展対策

[ワーカーズ]世の中の評判

カン・ドンジン(ワーカーズ諮問委員) 2018.11.07 09:38

「誹謗中傷よりシカトの方が恐ろしい」という言葉がある。 批判と非難よりも無関心の方が問題だという話だ。 去る10月1日に発表された文在寅(ムン・ジェイン)政府の『公共医療発展総合対策』に対する報道機関と社会の反応がそうだ。 朴槿恵(パク・クネ)政権の時、公共医療は2016年のMERSにより瞬間的に関心と集中を受けた。 晋州医療院の閉鎖も最悪の政策という非難を受けながら、社会的、政治的争点に台頭した。 だが文在寅(ムン・ジェイン)政府の今回の公共医療対策をめぐる反応は残念なほど静かだ。

ある人は「政府が公共医療をまったく忘れてはいなかった」とし、 「責任逃れ」程度の意味を付与する。 だが「シカト」としてやり過ごすには今回の対策が人々の健康と安全に重大な影響を及ぼすので、論じないわけにはいかない。 政府が今回の対策で明らかにしたように、韓国の公共医療は「生命・健康」に直結する必須医療サービス [1] だ。 それでも相変らず、その供給は絶対的に不十分だ。 OECD国家で病床数が日本の次に多く、病院の訪問回数が一番多い国で、 これがいったいどういうことかと言うこともできる。

[出処:キム・ヨンウク]

隠された問題を一つ一つ調べてみよう。 心筋梗塞、脳卒中、重症外傷患者などの急病患者をゴールデンタイム以内に観られる病院からして地域別の偏差が激しい。 その結果、心臓疾患で死亡する患者は人口10万人当たりソウルは28.3人だが、 慶南は45.3人で、二倍近い差がある。 全国市郡区の地方自治体232か所のうち55か所は産婦が子供を分娩できる病院がない。 そして母性死亡の割合はOECD国家ではメキシコ、トルコの次に高く、 新生児の死亡率も地域の偏差が大きい。 児童・障害者など健康脆弱階層の医療接近権も、非児童・非障害者と較べるととても低い。 子供のための専門病院とリハビリ治療機関は首都圏に集中していて、 病院・医院に行きたい時に行けない障害者の医療未充足率は、非障害者の二倍も高い。 MERS事態でわかったように、新種の感染病や、今夏の猛暑のような気候変動など、 新しく台頭する健康危険要因に対する対策も脆弱だ。

こうした問題は民間中心の市場システムと「公共医療」の比重がとても低い保健医療の供給構造に起因する。 それでも文在寅政府が提示する4大分野12課題の対策は 「必須医療の地域格差ない包容国家実現」というビジョンが面目を失うほど貧弱だ。 圏域責任医療機関の選定がほとんど全てだと言っても過言ではない。 そのため政府が対策を発表するたびに出てきたあれこれの反応は全く見られない。 公共医療人材養成のため国立公共医療大学院設立に医療界が実効性を問題として憂慮を表明したのが唯一の反応だった。

医療民営化政策、もういい加減にしろ

政府が「すべての国民を対象として 地域・階層・分野とは無関係に普遍的な医療利用を保障する」方向に公共医療の機能と役割を拡大しろと方向と目標を定めたのは、ひとまず望ましい。 これまで「脆弱地、脆弱階層、市場の失敗など、残余的な接近形態で運営されたり未充足の分野を補完する水準」に留まっていたことから進んだ。 問題は、その方向と目標を実現する具体的方案で、「公共病院の拡充」なしに民間医療機関に「公共医療」の役割を委託するという内容だ。 これは朴槿恵政権の公共医療基本計画と変わらない。 公共病院の不足により生まれる問題を、民間医療機関にその役割と機能を委託して解決するということだ。 結局、民間医療機関は市場論理に従うほかはなく、持続的でもなく、実効性を確保することもできない。

では公共医療が発展するために必要な方案には何があるか? まず必須医療サービスを中心に、「認知症国家責任制」のような国家責任制へと公共病院を拡充しなければならない。 そして必須医療サービスの提供に関しては、地域的な不均衡と空白をなくさなければならない。 市郡区の保健所と地方医療院がこうした役割を遂行できるような財政支援もまた必要だ。

主治医制度の導入と実施も並行しなければならない。 国民が主治医を決めて利用するように奨励することは、 不要な医療費支出を抑制し、合理的な医療利用を誘導して、良質の医療サービス提供を可能にする。 そして主治医制度の実施は健康保険の保障性を2022年までに70%に上げ、 医療費本人負担を減らすという文在寅ケアの成敗を分ける。 現在の首都圏大型病院中心の医療構造をそのままにして保障性だけ上げる政策は失敗するほかはない。 本人負担医療費の減少は、大型病院に患者が押し寄せる現象を加速し、 健康保険財政の危機を招く可能性が高い。 このような問題を解消するためには1次医療強化が必須であり、 その手段として主治医制度を導入しなければならない。 まず老人と障害者を対象に導入し、 現在はほとんどが医師1人の医院級の医療機関へと順次拡大できるだろう。

上のような2種類の方案を施行して遠隔医療などの最新技術を活用したサービスも作動できるようにすることで社会的議論を減らすことができる。 必須医療に必要な医師などの人材養成も公共医療大学(院)を設立して引き受けることもできるが、 既存国立医大でこうした役割を遂行できるように強制しなければならない。

公共医療の発展のためには量的にその比重を増やすだけでなく、 医療システム全体の公共性を強化する方案が並行しなければならない。 健康と生命、安全の不平等の解消は、その出発から必ず胸に刻むべき価値だ。 医療を産業として見るのはこの20年間の大勢で、 文在寅政府でも相変わらずだ。 医療民営化政策は済州道民により、営利病院設立が挫折したように、 もうそろそろやめる時だ。 公共医療対策がその脇役を果たしてもならない。[ワーカーズ48号]

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2018-11-05 16:19:23 / Last modified on 2018-11-11 21:09:04 Copyright: Default

関連記事キーワード



世界のニュース | 韓国のニュース | 上の階層へ
このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について