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文在寅の「運転手」に私たちの席は

[ワーカーズ]世の中の評判

イ・グァンイル(聖公会大) 2018.06.08 15:38

トランプと金正恩(キム・ジョンウン)が会うという。 互いに対話するというのだから嬉しいことだ。 だが意味ある結果になるかはさらに今後を見なければならない。 過去の対話と合意、いわゆる「ペリープロセス」でも、 情勢はいつも膠着状態におちいった。

今、米朝は「気力の戦い」の真っ最中だ。 北朝鮮としては核カードで米国を対話テーブルに引き込んだという点で、ひとまず成功的だ。 周辺国家の核が軍事的な意味より政治的な意味を持つのでなおさらだ。 核兵器そのものは人類の生存そのものを奈落に突き落とす破壊力を持つ。 だが周辺国の核保有は、ヘゲモニー国家との物理的な対峙に目的があるわけではない。 北の核は、冷戦期に数千の核兵器を保有していたソビエト連邦とは比較もできない。 米国や北朝鮮もこれを知らないはずがない。

だから米国が主導する制裁と封鎖に対抗して北朝鮮が出した「核保有国」の地位とは、 グローバリゼーションの中で避けられない「地球-政治的市民権」の要求であった。 米国に対する「体制保障要求」はその象徴で、現実の非対称的で不均等な権力関係を認め、客観化することでもある。 それでその基底には政治的カードを作るために苦難の行軍を拒まない人民-大衆の何かの願い、 彼らの現在-未来の生をもう無視することができない政治的な決断が記入されている。

この重大な局面で文在寅(ムン・ジェイン)政権は「運転手の役割」を自任している。 政治は自任することから出発するので、その行為自体は感心だ。 ではこれにふさわしいシナリオとカードらも伴わなければならない。 そうでなければ結局外部の力に収斂されて、むしろ敵対と緊張をさらに高めたり、 韓国のような「守旧-保守独占の政党体制」の中では急激な政治的反動の流れを促進させかねない。 守旧の李明博(イ・ミョンバク)、朴槿恵(パク・クネ)政権がオバマ政権の 「戦略的忍耐」に刺激された軍備競争に呼応して、 グローバル軍産複合体の利益を実現しながら朝鮮半島と東北アジアの緊張を高める役割を忠実にしたこと、 そして政治自体を否定したように。

結局、朝鮮半島の非核化と平和は米国などの主観的意志とは無関係に 「包括的な一括妥結方式」に、その実現は相互主義に立脚した段階的過程に帰結するほかはない。 これは米国の関心対象である中国などの周辺国の利害を考慮すると、 困難な過程が必要だからだ。 対内外的の利害により、あちこちよじれるかもしれず、 狂いが生じてひびが入るかもしれない。 文在寅の『運転手論』がこの状況に対応するシナリオとカードを準備しているのかを尋ねる理由だ。

ところでこれとは無関係に一つ憂慮すべき部分がある。 それは文在寅政権が「朝鮮半島非核化と平和」の問題を「国内政治」に外在するもの、 つまり外交の問題としか考えていないのではないかという点だ。 これは「民主政府3期」を自任する文在寅政権が金大中(キム・デジュン)政権以後に進めた太陽政策の失敗の理由を深く省察していないことを意味する。 太陽政策が『むやみに与える政策』というイメージで塗布されて失敗したということだ。

過去を呼び起こしてみよう。 1971年の大統領選挙でDJが「4大国保証による平和統一論」を提示した後、 それはアップグレードされ続けたが、まさに重要なことはそれ自らの進化ではなく、 それが大衆経済論、大衆民主主義で形成された民衆主義的戦略と対をなしていたという事実だ。 これは彼が統一大統領を越えて経済大統領としてイメージ化されて大衆にアピールし、 その後自由主義政治勢力が進歩を専有して政治的ヘゲモニーを持てた理由だ。

ではDJ政権の発足以後、太陽政策が失敗した原因も明確になる。 その政策が新自由主義、それもうたた寝のようなイデオロギーで機能した秩序自由主義的発想を経て、 米国式の新自由主義と対をなした点がまさにそれだ。 大衆経済論と大衆民主主義に基づいた太陽政策と治安に頼り、 大衆の人生を「死ぬか悪くなるか」の状況に陥れる新自由主義の基調の上の太陽政策が 大衆にどう受け入れられるかは想像する必要さえない。 「太陽政策=むやみに与える政策」、 「民主主義が飯を食わせてくれるのか」という言及がかみ合わさり、 大衆をひきつけた近因だ。 ところでそれを単に非合理的な守旧社会政治勢力の扇動、謀略によると批判すれば、 そこにどんな政治的解決方法を探すことができようか。 当初、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権の対北特検が成功しなかった理由だ。

「内部問題」を無視する文在寅、「運転手の役割」

ところで文在寅政権は「運転手の役割」を自任しつつも、こうした歴史に対する省察がない。 以前の南北首脳会談の内容を保守野党との合意で文書化すれば、 朝鮮半島の非核化と平和の流れが元に戻せなくなると思う人はどれほどいるだろうか? 政治は不可逆性を担保すると評価されるような法制度的な合意を愚弄し、それを越える。 そしてその核心にはその社会を構成する多数の大衆の人生に対する、 自己統治に対する要求が位置している。 結局「外的な関係」に見える問題は、その結果がいずれにせよ「内的な関係」を媒介として、自らを表わすほかはない。 特に米国のヘゲモニー半径におけるそのライバル、中国に囲まれた韓国のような半周辺国、 そして「運転手論」を裏付けるシナリオとカードが貧しい場合にはなおさらだ。

非正規職労働者たちが要求する「自由に労組活動をする権利」、 これまで搾取、収奪、差別、排除されてきた彼らが要求する「差別禁止法」、 特に移住労働者の人間としての権利の要求、 さらに自由に政治活動ができる権利などが重要な理由だ。 反対にその運動の主導者が決して組合主義の中で、もがいてはいけない理由でもある。 この目録こそ、グローバル時代に朝鮮半島の非核化と平和が担保すべき基本的な内容だからだ。

ところで「運転手論」を打ち出す文在寅政権の座席には、そうした要求が位置する空間が見えない。 「内部の問題」に目をふさぎ、それに対する意味ある発想と政策を出せず、すでに政治的に薬効がない、前民主労総委員長の仮釈放などでその無能を隠すのに汲々とするだけだ。 まだ「運転手論」の最大の障害になりそうなこと、 言い換えれば、その免許を裏付ける根源的な力がどこにあるのかが認識できないからだ。 「朝鮮半島の非核化と平和、繁栄」という言及が大衆の具体的な生活の問題として近付いてこないのなら、 それ以外に文在寅政権が使えるカードとはいったい何なのか。[ワーカーズ43号]

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2018-07-16 22:11:43 / Last modified on 2018-07-16 22:11:46 Copyright: Default

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